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なぜ家康は慎重なのか?「徳川家康の人間関係学」童門 冬二

2023/02/23公開 更新
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「徳川家康の人間関係学」童門 冬二


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

NHK大河ドラマ「どうする家康」を見ながら、手にした一冊です。この本で説明している徳川家康の特徴は、手堅さと慎重さでしょう。まず、家康は世論を重視しており、「律儀な家康殿」という評判を得ていました。例えば、関ケ原の戦いの敵のリーダーであった石田三成には「勝敗は武運の致すところで、おぬしは、見事に戦った」と褒めつつ、首を切ってます。


また、各種の能力のある人を集めた参謀集団を作り、アドバイスを受けています。腹心の本多正信をはじめ、儒学者の林羅山、僧侶、豪商、外国人、鉱山・治水・農業などに詳しい者たちを集めたのです。こうした家康の手堅さについて、著者は家康が8歳から19歳まで、人質のような生活を送っていたことが原因ではないかと推察しているのです。


・世論が自分を支えてくれるまでは、静かに待つ。慎重に待つ(p41)


また狸おやじと言われるだけあって、表と裏を使いわけていました。表向きではタテマエしかいわず、ホンネは必ず部下にいわせて、やむを得ず、それに同調する形にしていたというのです。組織の設計においても、常に組織内に緊張感が維持されるように配慮していました。例えば、親藩、譜代、旗本大名には"禄高より名誉を"与え、外様大名には"名誉より禄高を"与えたという。


管理職ポストについても必ず複数の人間を任命して、一ヶ月毎に交代で仕事をおこなうようにしていました。老中、若年寄、大目付はじめ諸奉行など交代で仕事をさせることで、比較し切磋琢磨させるための仕組みだったのでしょう。ある意味、人を信じない人間不信的な面にも見えますが、組織を仕組みによって引き締めていくという現代の企業組織にもつながる思想があるように感じました。


・徳川家康はこんなことをいっている・・どんな人間にも必ず欠点がある。驕り高ぶっていると、必ずほろびてしまう(p130)


徳川の江戸時代は確かに太平の世といわれ、平和な時代でしたが、藩ごとに分断され、人の自由な行き来ができない不自由な世でもありました。江戸時代の業績評価は、いかに大過なく毎日を過ごせるか、そういう人間が優遇される大企業のサラリーマンのような環境であったという。ことを起こす人間や、出る杭は打たれたのです。


そういう意味で江戸時代とは、平和でありながら停滞の時代でもあったわけで、異文化の侵入が少ない島国独特の環境が原因であったのかもしれません。徳川家康についてはもう少し調査したいと思います。童門さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・家康は・・人に指をさされまい、絶対に人から悪く思われまい、という生活信条を持っていた(p15)


・「富を持っていなければ、力も振るえない」・・今川義元の人質になり、多くの屈辱を強いられたのも、早くいえば「貧しさ」のためだ(p24)


・黒幕が前に出過ぎて、肝心のトップの影を薄くする・・参謀・軍師が表に出ると、家は滅びる(p71)


▼引用は、この本からです
「徳川家康の人間関係学」童門 冬二
童門 冬二、プレジデント社


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

第1章 家康の人生
第2章 家康の個性と信念
第3章 二人の大いなる「人生の師」
第4章 家康と信長・秀吉の「統率力」はどこが異なるか
第5章 徳川三百年の礎を築いた創業の知恵
第6章 盤石の「守勢」に向けての布石
第7章 浅井三姉妹とねね



著者経歴

童門冬二(どうもん ふゆじ)・・・歴史小説家。1927年、東京に生まれる。第43回芥川賞候補。目黒区役所係員を振り出しに、都立大学事務長、都広報室課長、広報室長、企画調整局長、政策室長を歴任。1979年退職。在職中に累積した人間管理と組織の実学を歴史の中に再確認し、小説、ノンフィクションの分野に新境地を拓く。


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