【書評】「Hit Refresh(ヒット リフレッシュ) 」サティア・ナデラ
2026/01/27公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
社内で言い争うマイクロソフト
2014年にマイクロソフトは、インド出身のサティア・ナデラをCEOに指名しました。当時、マイクロソフトはパソコンの売り上げは鈍化し、スマートフォンは壊滅、ネット検索は出遅れ、ゲームでも伸び悩んでいました。(今でもそうですが)
2012年のマイクロソフトのトップ技術者の会議では、ウィンドウズの問題と改善案が提案されたとき、ウィンドウズの開発者がその提案を聞くのではなく、言い争いになり、非難合戦となったという。つまり、マイクロソフト社内では、常に自分が有能で最も優秀な人間だと常に証明しなければならない状況だったのです。
著者はマイクロソフトのCEOに指名されたとき、このマイクロソフトの文化を変えることが自分の最優先事項だと社員に宣言するのです。
私はCEOのCは「culture(文化)」のCだと考えたい(p141)
クラウド・ファーストを推進
著者はCEOになる前、2008年に検索エンジン・ビングの開発責任者となり、2009年6月にビングを公開することを決定しています。
2011年にはサーバー&ツール事業部(STB)の責任者となり、出遅れていたクラウド・サービスへの転換を進めます。当時、アマゾンのクラウドサービスAWSは、数千億円の売り上げがあり、マイクロソフトは数億円だったのです。
著者が直面したのは、「俺達はこれだけの金を稼いでいる。クラウドだろうが、そんなものにわずらわされたくない」と考えるサーバ事業の専門家集団でした。著者は一人ひとりとの対話を通じて、クラウドサービスを含めることの重要性を説明し、意識を変えていったのです。
社外人材も採用し、ウィンドズ、iOS、アンドロイド、リナックスOSをサポートするようにしてクラウド事業を推進していきました。こうした実績が、著者をマイクロソフトのCEOとする原動力となったのでしょう。
マイクロソフトのクラウド事業は200億ドル規模に達しようとしている・・クラウド・プラットフォームのアジュールや、オフィス365など(p92)
ライバルとの協力
著者の特徴は、ライバル会社との協業です。ライバルと対抗するのではなく、協力し合うのです。例えば、オフィス365はiPhone、アンドロイドを含め、あらゆるデバイスで使えるようになっています。
著者が講演会でiPhoneでマイクロソフトのオフィス365が使えることを実演すると聴衆は驚いたという。かつてのマイクロソフトはアップルをライバル企業として対抗してきたからです。
著者はアドビとの協業も進め、アドビのマーケティング・クラウドは、マイクロソフトのアジュール・プラットフォームをベースに構築されているのです。
著者はこうした協力の思想を「成長マインドセット」と表現しています。つまり、社外、社内で対立するのではなく、顧客のために何でもやるということです。
成長マインドセット・・・できる限り顧客のことを考えた・・・積極的にダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包括性)を追求・・・最後に、マイクロソフトは一つの会社であって、派閥の集合体ではないということだ(p144)
マイクロソフトの文化は変わるのか
著者はマイクロソフト社内では、iPadよりも先にタブレットを発売し、キンドルより先に電子書籍リーダーの開発を進めていたと告白しています。それらがうまくいかなかったのは、成功を収めた自社のソフトウェア中心の考え方を変えることに抵抗を感じたのだろうと推察しています。
これはまた、顧客のことを考えず、部署同士のいがみ合いを繰り返していたマイクロソフトの実態を示すものだったのです。現在でもWindows11にOneDriveが勝手に設定されている点など、マイクロソフトの傲慢さは残っているように感じます。
著者の「成長マインドセット」がマイクロソフト全体に広がるのはいつなのでしょうか。ナデラさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・成長マインドセット・・・もう愚痴は終わりだ・・肥だめの中にバラの花びらを見つけることだ・・つらいことばかりに目を向けるのではなく、意味のあることに目を向け、ほかの人にもそうするよう教えてほしいと思った(p168)
・息子のザインが生まれた・・子宮内窒息の後遺症に悩む息子・・集中治療室を訪れ、医療機器から聞こえる小さな作動音やアラーム音に満ちたザインの部屋を見渡した・・これらの機器の多くがウィンドウズ上で稼働していること、それらがクラウド接続される機会がますます増えていることに気づいた(p63)
・インド政府の高官を務めた父も言っていたように、一丸となった組織をつくることほど難しい仕事はない・・チームを率いる際に、意見の一致を求めるべきか専横的に命令すべきかという選択は間違っている。どんな組織をつくるにしても、まずは、トップダウンでもボトムアップでも進歩や発展を推進していける明確なビジョンや文化を持つべきだ(p84)
・CEOスティーブ・バルマー・・は、私に、本来の自分になれと励ましてくれた。つまり、ビル・ゲイツら上層部の人間を喜ばせよとするな、ということだ。そして「勇敢であれ、正しくあれ」と言った(p94)
▼引用は、この本からです

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サティア・ナデラ (著)、日経BP
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
1 ハイデラバードからレドモンドへ
2 率いる方法を学ぶ―窓(ウィンドウズ)から雲(クラウド)を見る
3 新たなミッション、新たな機運―マイクロソフトの魂を再発見する
4 企業文化のルネサンス―「知ったかぶり」から「学びたがり」に変わろう
5 フレンドか、フレネミーか?―必要になる前にパートナーシップを築く
6 クラウドの先―複合現実、人工知能、量子コンピューター―三つの技術シフト
7 信頼の方程式―デジタル時代の不朽の価値―プライバシー、安全、言論の自由
8 人間とマシンの未来―AIデザインの倫理的フレームワークに向けて
9 万人のための経済成長を取り戻す―グローバル社会における企業の役割
著者経歴
サティア・ナデラ(Satya Nadella)・・・マイクロソフトの最高経営責任者(CEO)。40年あまりの歴史を持つ同社の第3代CEO。情報科学の修士号取得のため、21歳の誕生日にインドのハイデラバードから渡米。アメリカ中世部やシリコンバレーでの経験を経て、1992年にマイクロソフトに入社。マイクロソフト以外の活動として、フレッド・ハッチンソンがん研究センターの評議員、スターバックスの取締役も務めている。また、妻のアヌとともに、シアトル小児病院や、シアトルにある障害者施設を個人的に支援している
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