【書評】「アナーキー経営学 街中に潜むビジネス感覚」高橋 勅徳
2026/01/12公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
街中ビジネスを観察
アナーキー経営学とは、街中のビジネスを観察し、人々が「生き残る」ために何をしているのか考えることです。
例えば、戦後の在日第一世代の華僑は、日本企業に就職できなかったので、日本で生きていくために起業を選択する人が多かったと分析しています。
ゲイバーも、ゲイとして金を稼ぎ、生きていくことができる場所として、運営されているとしています。
著者の仮説は、人は快適に生活できる「空間」を維持するために、仕事をしているのではないかというものなのです。
社会起業家として注目してきた人々は、彼らの所属する経営体=家族や仲間たちが「生き残るため」に起業し、小さなお店や会社を経営してきたのであって、地域活性化・・は行きがけの駄賃のように「後からついてきたもの」でしかない場合がほとんどです(p7)
シャッター街のお店
シャッター街の商店街で、お客が入っていないのに、続いているお店があります。
こうしたお店は、呉服屋や金物屋だとご贔屓の店や職人との直接取り引きがメインでお店は事務所代わりというケースが多いという。または、バブル時代に自前の店舗を担保に、融資を受けてビルや駐車場の経営で不動産収入を得ている場合もあるでしょう。
著者は京都の街中で、駐車場やビルを、お寺が経営していることがあることを指摘し、お寺も生き残るために変化してきたと説明するのです。
江戸時代はどこかのお寺の檀家にならなければ、戸籍も登録されず、公的書類の入手も訴訟もできず、社会生活を送れない・・・明治維新以後では、檀家になる必要性はなくなりました(p121)
流行店が増える理由
街中に学ぶという視点では、似たようなラーメン店が増える理由を考察しています。起業するためには、覚悟と資金が必要となるので、ある程度の売上が計算できる流行しているラーメン店になってしまうと推定しています。
タピオカミルクティやフルーツサンド、唐揚げのように、その時に流行しているお店が増えるのも同じ理由です。ある程度売上が計算できるので、流行りのお店を作り、確実に投資を回収し、売上が落ちてきたらお店をリニューアルしていくのです。
つまり、模倣で必要な資金と売上を確保して投資を回収しつつ、それを基盤に差別化の道を考えていくというのが確実な戦略ではないかというわけです。
似たようなラーメン店が増殖する理由・・・二郎インスパイア系、家系、魚介系濃厚つけ麺、油そば・・・融資担当者にも客にも味が「計算」できることが重要(p85)
グレーゾーンビジネス
著者が注目するのは、グレーゾーンビジネスです。
例えば、出会い系サイトとマッチング・アプリは、法律上は「インターネット異性紹介事業」で同じ分類です。しかし、出会い系サイトは「いかがわしい」イメージですが、一定の需要があるのは事実です。
また、ネットワークビジネスは、「顧客が顧客を紹介した場合にマージンを支払う」というビジネスモデルですが、「いかがわしい」イメージの一方で、被害者と加害者を増やしつつ、売上を増やしているのです。
著者はニカラグアのギャングが、麻薬や窃盗だけでなく、盗品や横流し品の販売などグレーゾーン事業で儲けていることを説明し、表向きはコンプライアンスを遵守し、会員の暴走を計算に入れているビジネスモデルだと説明しています。
結局、経営学とはビジネスモデルかな?と感じました。もう少し勉強してみます。高橋さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・沖縄県のバーベキュー文化でも山形県の芋煮会文化でも・・・バーベキューサイトを設置するだけで、その地域に自律的な経済圏が発生するのです(p139)
・モンドセレクション・・・出品商品に対して、官能評価と科学的分析の双方で評価し、その合計点で、優秀品質最高金賞、優秀品質金賞、優秀品質銅賞を授与する・・・パッケージに記載されている通りの原材料と品質の商品であるかどうかについて、科学的な分析結果に基づいて評価されます(p65)
・特許大学という名前の株式会社・・論文と当時の金額で10万円を審査料として支払うことで、「特許◯◯博士」を授与するというサービス(p203)
▼引用は、この本からです

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高橋 勅徳 (著)、NHK出版
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
第1部 私達は、不確実な社会で生きている
第2部 野生のイノベーション
第3部 アンダーグラウンドの経営感覚
著者経歴
高橋 勅徳 (たかはし みさのり)・・・1974年生まれ。東京都立大学大学院経営学研究科准教授。専攻は企業家研究、ソーシャル・イノベーション論。神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。博士(経営学)。沖縄大学法経学部専任講師、滋賀大学経済学部准教授、首都大学東京大学院社会科学研究科准教授を経て現職。
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