【書評】「さようなら細木数子」上村 孝男
2026/01/10公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(70点)
要約と感想レビュー
詐欺師に騙されて借金10億円
細木数子といえば、六星占術・宿命大殺界の占い本を累計6,500万部以上売り上げ、テレビ番組で「あんたは地獄に堕ちるわよ」「あんたは大病する」と出演者を脅しつけるような物言いで一世風靡した占い師です。本書はその細木数子の知られざる人生を、芸能ジャーナリストの著者が追ったノンフィクションです。
細木の生い立ちを見ていくと、家族関係からしてすでに怪しい雰囲気です。細木は渋谷でバーを経営する家庭に育ち、自身もホステスとして働いていました。男兄弟の一人は暴力団に入りヒロポン中毒に陥り、姉の夫(故人)は安藤組幹部の堀尾昌志でした。
1958年、20歳の細木は銀座八丁目にクラブ「かずさ」をオープンします。20坪ほどの店にホステスを12〜13人雇い、十数年後には銀座に3軒の店を構えるビッグオーナーへと上り詰めました。
残念ながらその絶頂期に、プロの詐欺師に赤坂での和風ナイトクラブ共同経営という名目で騙されて、高利の金融業者を含む負債が総額10億円にまで膨れ上がります。
島倉千恵子の借金事件
その10億円の借金から細木を救ったのが、歌手・島倉千代子をめぐる借金事件への関与です。
島倉千代子は交際相手の眼科医・守谷義人に実印を持ち出され、4億円もの借金を背負わされてしまいます。途方に暮れた島倉が助けを求めたのは、俳優業のかたわら鳩山一郎の私設秘書を務め、細木や暴力団とも通じていた安倍という人物でした。
そこで現れたのが、細木と二率会幹部・堀尾昌志です。二人は債権者たちと交渉(?)して借金4億円は1億5千万円に圧縮し、「島倉千代子はこちらで預かる」と債権者たちと合意するのです。残った1億5千万円は堀尾が建て替え、暴力団が表に出られない事情から、島倉千代子の芸能事務所を表で仕切る役割を担ったのが細木だったのです。
しかし島倉が2年間働いても借金は一向に減りません。細木は「16億円を6億円にしてやった」と言い張り、さらに2,000万円の北海道講演の出演料未払い問題まで島倉が負わされる事態になります。不信感が頂点に達した島倉と細木は、ここで袂を分かちます。
著者は守谷と安部と堀尾と細木の4人が古くからの顔見知りであり、すべてが仕組まれた事件であると示唆するのです。これが、やくざの手口ということなのでしょうか。
手形裏書きさせた守谷氏とマネジメントの仲介の安倍氏、借金肩代わりした暴力団の堀尾氏と細木さん、彼らが古くからの知り合いであったという点がキーポイントです(p133)
占い師の稼ぎ方
細木数子の「六星占術」は、四柱推命の和泉宗章が広めた「天中殺」を模倣し、名称だけ「大殺界」に変えることで第三次占いブームを引き起こしました。さらに、細木がかつて通っていた新宿の女占い師も「自分の『ゼロ占星術』を盗用された」と証言しており、細木の「六星占術」の「独自性」は怪しいことがわかります。
占いの的中率についても、外れた予言が多いのです。1989年の株大暴落予言、黒川紀章と若尾文子はすぐ別れる説、松井秀喜の2004年シーズン最悪予言、谷亮子のアテネ五輪金メダル否定など、大きく外したケースが説明されています。
芸能人への高価なプレゼントも、実態は怪しいものでした。テレビ番組内で和田アキ子に贈った指輪について、細木と取引していた宝石商の証言によれば「150万円に見えるものを」と頼み、実際には10万円前後で購入していたといいます。羽振りを良く見せるためだけに計算された演出だったのです。
そして最も悪質な手口として著者が詳述するのが、霊感商法です。細木は1983年ごろから個人鑑定に訪れた相談者に「先祖供養が足りない」と告げ、仏壇と墓石の購入を迫るようになります。その構造は、講演会(無料)→勉強会(1人1万円)→個人鑑定(1人10万円・家系図持参)→仏壇「翡翠堂」・墓石販売(数百万円)という段階的な集金システムでした。
東京駅八重洲口前の細木の事務所が入るビルの同フロアには墓石を扱う久保田家石材商店の関連会社、株式会社霊園普及協会の事務所が入居し、個人鑑定を行っていた京都の宗教法人「大国教会」の敷地も久保田家石材商店グループの所有であったという事実が、組織的な連携を物語っていると、著者は説明するのです。
1983年ごろに出会った仏壇屋「翡翠堂」・・・細木は個人鑑定を受けに来た相談社に対して、「先祖供養がたりない」というようになり、仏壇屋と同時に墓石屋を紹介するようになった(p43)
安岡正篤に結婚誓約書を書かせる
本書のなかで最もびっくりするエピソードの一つが、昭和の財界・政界に絶大な影響力を持った陽明学者・安岡正篤との「結婚」をめぐる話です。
細木は安岡を囲む私的親睦団体・師友会協会の副会長から安岡を紹介してもらい、自分の店で酒を飲ませ、酔った安岡を島倉千代子から奪い取ったマンションに連れ込んだといいます。当時、安岡には認知症の症状があり、85歳の安岡に対して45歳の細木が色気で迫ったのではないかと著者は推測しています。
不自然なのは、出会からわずか5カ月で安岡に結婚誓約書を書かせている点です。著者はこの誓約書について、「最初から揉め事を想定し、それを証拠として使う意図がある」とし、やくざの手口そのものだと指摘しています。
細木数子の人生は、華やかなテレビの印象とはまったく異なる、欺瞞と策略に満ちたものでした。この本の内容が本当なら「恐ろしい」という一言に尽きます。上村さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・二率会幹部・堀尾昌志との関係・・出会ってからしばらく男と女の関係が続いた・・二人は裏のやり方で金儲けに奔走していた・・島倉千代子との別れが、二人の別れともなった(p110)
▼引用は、この本からです

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井上直明 (著)、ぱる出版
【私の評価】★★★☆☆(70点)
目次
第1章 細木数子と六星占術の謎
第2章 細木数子の予言
第3章 細木と霊感商法の関係
第4章 細木がテレビから消えた理由
第5章 細木数子の贔屓した人たちの衰退・末路
第6章 細木数子の生い立ち・家族
第7章 細木数子の恋愛
第8章 細木数子・その成り上がり人生
第9章 細木数子の結婚歴・離婚歴
第10章 細木数子と芸能人、有名人のバトル
著者経歴
上村孝男(うえむら たかお)・・・昭和22年生まれ。京都出身。芸能ジャーナリスト。オフィス「ビッグママ」代表
細木数子関係書籍
「さようなら細木数子」上村 孝男
「細木数子 魔女の履歴書」溝口 敦
「細木数子地獄への道 改訂新版」細木数子被害者の会
「細木数子の黒い真実」野崎 輝
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