【書評】「逆境を打ち破るイチローの名言」桑原晃弥
2025/11/12公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
イチローの業績
イチローは2025年1月、MLB殿堂入りを果たしました。2万人以上のメジャーリーガーがいた中で、殿堂入りした選手は278人、わずか1.3%です。10年連続シーズン200安打とシーズン最多安記録(262本)、10年連続ゴールデングラブ賞などの実績が評価されたのでしょう。
残念ながら野茂英雄と松井秀樹は、既に殿堂入りの資格を失っています。それだけハードルは高いのです。
イチローは過去に日本政府から国民栄誉賞を2度打診されていますが、いずれも辞退しています。辞退の理由を聞かれて、イチローは、「僕はやりたい人。なりたい人ではない」と答えています。かっこいいですね。
(殿堂入り投票で)1票足りなかったのは、すごくよかった。不完全な中で自分なりの完璧を追い求めて進んでいくのが人生だと思う(イチロー)(p44)
イチローの目標設定
ではイチローの目標設定の考え方を見てみましょう。
まず、イチローは打率ではなく、安打数を目標にしていました。打率だと上ったり下がったりしますが、安打数だと減ることがないので、安打を目標にしていたのです。
MLBで7年連続200安打を打ったとき、あと7年でピート・ローズを超えますがと言われて、「7年先のことなんて考えたら、ろくなことはないですよ」と答えています。つまり、その時、その打席で安打を打つために集中していくというのがイチローなのです。
また、MLB史上初の9年連続200安打を達成した日にも、記録が途切れたときについて聞かれ、「途切れた後は、もう一回、狙います」と答えています。イチローは、常に目標をモチベーションに変えているのです。
発言することで、自分にプレッシャーをかけてきたんです(イチロー)(p124)
イチローの日々の努力
イチローは日々の取り組みついては、どのように考えていたのでしょうか。
まず、イチローは道具を大切にしていますが、グラブを磨きながら一日の反省をしていたという。昨日試合後に何を食べたか、よく眠れたのか、どういう練習をしたのか、試合に向かい、試合が終わるまで起こったことすべてを振り返って考えていたというのです。
そして、MLB1年目首位打者、2年目で4位となったとき、イチローは次のように、結果はともかくやってきたことには満足していると答えています。
やれることはすべてやってきましたし、手を抜いたことは一度もありません。常にやれることをやろうとした自分がいた。それに対して準備ができた自分がいたことを誇りに思います(p77)
その言葉を証明するように、イチローは 報酬が多いときも、引退近くなって報酬が低いときも同じように練習し、準備しています。イチローのMLBでの最高年俸は1800万ドル(27億円)ですが、引退前は75万ドル(1億円)でした。
イチローは常にやるべきことを習慣化し、そのプロセスをやり切っているのです。そこで結果が出なければ、プロセスを変えればいいだけなのです。
仕事だと思ってプレーしていれば、ある程度の報酬を手にした時に「もういいか」となるかもしれない。でも、これが自分の好きなことだと思えばもっともっと何かがあるんじゃないか、という気持ちになれる(イチロー)(p115)
イチローは人望がない
私のイチローの印象は、我が道を行く野武士です。
イチローはプロ入り後、打ち方を変えさせられ調子を落とし、二軍でに落とされます。結局、元の打ち方に戻すのですが、「この打ち方を絶対に変えません」と決意し、プロ入り3年目、仰木彬監督になるまで1軍に上れませんでした。
人間関係を良くして上げてもらおうとは一つも思わないところが、イチローなのです。
また、引退会見で、将来の監督就任について聞かれて、「監督は無理。人望がない」と答えたところも印象的でした。監督を経営者とすれば、イチローは正論で成果を出していく経営コンサルタントのようなものでしょうか。
桑原さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・(殿堂入りは)今やっていることへの賞賛ではなく、過去への賞賛で、あくまで今をどう生きるかということを僕は考えていきたい(イチロー)(p102)
・自分は幸せな人間だと思う。不幸な人間って、何事も何の苦労もなくできてしまう人でしょ。でも、それでは克服の喜びがなくなってしまう(イチロー)(p34)
・「選手の年齢は、精神的脂肪に出るものです。脳みその硬さですよね。ここ一番、年齢があらわれちゃいますから、それだけは避けたいと思っています」(イチロー)(p88)
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桑原晃弥 (著)、ぱる出版
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
第1章 失敗や挫折を乗り越えてこそ成長できる
第2章 大きな夢の描き方と叶え方
第3章 努力にはやり方がある
第4章 モチベーションの高め方・プレッシャーとの付き合い方
第5章 プロとしての矜持、野球人としてのあり方
第6章 常に万全の準備を心がけてこそ
著者経歴
桑原晃弥(くわばら てるや)・・・1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとしている。
イチロー関連書籍
「逆境を打ち破るイチローの名言」桑原晃弥
「イチローの功と罪」野村 克也
「イチロー勝利への10カ条」山本 益博
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