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モーツァルトは注意欠如多動性障害「天才と発達障害」岩波 明

2025/01/13公開 更新
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「天才と発達障害」岩波 明


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー


天才とバカは紙一重

天才とバカは紙一重と言われますが、実際、知的障害のある人がカレンダーや書籍を丸ごと暗記したり、精密な船の模型を作る事例があるという。専門的には「イディオ・サヴァン」(白痴の天才,Idiot Savant)と呼ばれています。


この本では精神科の先生が、天才といわれている偉人が精神疾患と同じ特徴を持っている事例を紹介してくれます。具体的には、マインド・ワンダリング(思考が拡散する傾向)、うつ病や躁うつ病といった気分障害,強迫性障害(強迫神経症),ADHD(注意欠如多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム障害)といったものです。


「天才とは狂気そのもの」とする学説も精神医学界には根強くあり・・過去の天才的な芸術家や科学者においては,発達障害などが伴っているケースは稀ではない(p6)

モーツァルトは注意欠如多動性障害

まず、「不注意」と「多動・衝動性」が特徴のADHD(注意欠如多動性障害)の事例としてモーツァルトが紹介されています。


モーツァルトは落ち着きがなく,終始足を動かし,言い方は一方的で周囲の意見を聞かない傲慢な人物であったという。 また、モーツァルトはレッスン中、急に飛び上がったり、ギャンブル好きで借金王でした。衝動的で落ち着きがない特徴からADHDと考えられるのです。


その他、ADHDとしては南方熊楠とデカルトが紹介されています。


南方熊楠は学校の授業には興味を持たず、人類学や解剖学の原書を読み込み、何日も野宿して昆虫や植物を採集していました。その一方で、癇癪持ちで,衝動性と過剰集中の傾向は,ADHDと考えられるのです。


デカルトも引っ越しを繰り返し、常に刺激を求めるマインド・ワンダリングで落ち着きのないADHDの傾向を持っていたのです。


ADHDは「静かな」デスクワークは苦手であり,とくにマルチタスク状況になると混乱しやすい。彼らは自分の裁量で仕事を企画し,自分のペースで仕事を行うことが向いている。具体的には,イラストレーター,作家,コピーライター,プログラマーなど(p46)

ダーウィンは自閉症スペクトラム障害

社会性の欠如とこだわりの強さが特徴のASD(自閉症スペクトラム障害)の事例として、ヴィトゲンシュタイン、ダーウィン、島倉伊之助、大村益次郎が紹介されています。


ヴィトゲンシュタインはケンブリッジ大学の哲学教授でしたが、内気で近づきがたく,「頭のおかしい」人とみられていました。他人が話を始めると,ヴィトゲンシュタインは「いや,そういう問題じゃない」「きみは間違っている」などと遮って、相手をしばしば論破していたというのです。


島倉伊之助も大村益次郎も有名ではありませんが、二人とも非常に才能がありましたが、人間関係に無頓着で、無礼で、変人扱いされていたという。


ダーウィンは少年時代から孤独を好み,鉱物や貝殻などの収集癖があった・・彼の日常生活には独自のルールがあり,そのパターンが乱されることを強く嫌悪した・・社会性の欠如とこだわりの強さは,ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性を示している(p7)

ドストエフスキーはギャンブル依存症

作家に多いの精神障害と依存症です。夏目漱石は、幻聴や被害妄想の症状があり、家族や使用人にあたり散らし,暴力を振るうこともあったという。レイモンド・チャンドラーは酒浸りの日々を送っていたし、ドストエフスキーもギャンブル依存で、金がなく食事を抜いても,賭博場には足を運んだという。


このように真の天才とは、普通の人にとっては変人であり、付き合いにくい人達なのです。「こうした才能を活用できる社会こそが、発展する可能性がある」という仮説が成り立つのかもしれません。岩波さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・真の天才とは優等生ではなく,不穏分子である。彼らは一般的な社会生活になじめずに,孤立しやすい。彼らの才能は,周囲になかなか理解されない(p5)


・チャーチルの特徴は積極的,行動的で,豪放さを持っていたとうだけにとどまらず,彼はエキセントリックで大げさで,不作法でもあり不遜な人物だった(p142)


・野口英世は借金魔であった。身近な人からは,常識的な限度額を超える借金をしたが,それを返済することはほとんどなかった・・米国留学をするときにも,当時の婚約者から支度金として受け取った大金を一晩で使い果たしてしまった(p27)


▼引用は、この本からです
「天才と発達障害」岩波 明
岩波 明、文藝春秋


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次


はじめに 天才と狂気
第1章 独創と多動のADHD
第2章 「空気が読めない」ASDの天才たち
第3章 創造の謎と「トリックスター」
第4章 うつに愛された才能
第5章 統合失調症の創造と破壊
第6章 誰が才能を殺すのか?



著者紹介


岩波明(いわなみ あきら)・・・昭和大学医学部精神医学講座主任教授(医学博士)。1959(昭和34)年、神奈川県生まれ。東京大学医学部医学科卒業後、都立松沢病院などで臨床経験を積む。発達障害の臨床、精神疾患の認知機能の研究などに従事。都立松沢病院、東大病院精神科、埼玉医科大学准教授などを経て、2012年より現職。2015年より昭和大学附属烏山病院長を兼務。


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