【書評】「天国と地獄をみた男~炎」五十嵐由人
2017/10/18公開 更新

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【私の評価】★★★★★(91点)
要約と感想レビュー
誰よりも早く起きて仕事
著者は、ディスカウントストアのダイクマで最年少営業部長。サラリーマン生活10年間は、誰よりも早く起き、誰よりも早く出社し、誰よりも早飯で仕事をしていたという。
その後、相模原でアイワールドを創業し、直営店で300億円もの売上を記録します。燃えるディスカウンターは、若手を役員に抜擢し、その勢いはまさに飛ぶ鳥を落とすものでした。
著者は売り場の在庫をノートに書いて、朝はどの歯ブラシが何本あって、日中に何本補充したかを毎日書いて、どの商品が何本売れるか明確にし、在庫量を単品管理していたという。
・1.誰よりも早く起きる。
2.誰よりも早く会社へ行く
3.誰よりも早く早飯で仕事をする。
4.誰よりも速く歩く。・・
サラリーマン時代の十年間でやり抜いた事と言えばこの誓いである(p73)
社員は社長の顔色を見て仕事をしているだけ
ところがバブル崩壊に合わせて売上が減少してくると、借入金の負担が大きくなってきます。
社員も著者の顔色を見て仕事をしているだけで、それをコンサルに忠告されると、「それも今に見ていろ、この若い力で乗り切ってやる」と逆ギレしていたという。
売上が下がるなかで、子会社分離や外国資本によるリストラ再建を図るものの、店舗はぼろぼろになっていきます。それまで自分の号令のもとに忠誠を誓っていた部下が、どんどん辞めていく状況。
最後は、民事再生法の適用による再建カットで、アイワールドは著者の手を離れていきました。
社員とは「忠誠を誓います」などと口で言っていた人間ほど、情勢がまずくなれば我先に逃げ出す準備をしているものであり、命を張った責任など期待できるものではない(p217)
成功も失敗もすべて自分の責任
燃えるディスカウンターの人生に涙しました。奢れるものは久しからず。創業者は、その成功も失敗もすべて自分の責任であり、神様は結果を下すのです。
優秀な社員にはチャンスを与えて、大事にして村長しましたが、会社のリスクを自分の事としてその責任を果たそうとする者などほとんどいないと後で解ったという。
家具の革命者「ニトリ」の似鳥昭雄社長も・・弊社にも来られ、私の講演も聞いてくださったが、学ぶ姿勢が違って印象に残った方であった・・学んだほうが栄え、得意になって教えたほうが潰れる。これが法則なのだ(p145)
カリスマは危うい
著者は自分のカリスマ性が強いがゆえに、業績が落ちていくと、その反動も大きかったという。社員にしてみれも神様だと思い、何でも神通力があると思って信じていたのに、業績が下降してしまえば、「何だ、神様じゃないじゃないか」と思うわけです。
相模原のアイワールドでは、アンティークミュージアムも併設していました。アンティークの買い付けでは口約束から事業を進めたため、パートナーのおもちゃコレクターには巧妙に不利な契約締結となり信頼したことを後悔しているとのこと。
おもちゃコレクターについては、もう少し調査していきたいと思います。五十嵐さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・当時の日記や手記を見ると、毎日の日記に「ただ夢中でやっている。一生懸命やっている」「今日もよくやった」という熱い気持ちが書いてある。いま、読んでさえも私は幸せな人間だな、としみじみ思える(p92)
・「これ以上儲けてどうするの。私はヨーロッパの人に喜ばれて、ファミリーが豊かに暮らせればされだけでいいの」。ヨーロッパでの商談ではこんな会話も何度あったことか(p172)
・有る宗教の山門に3カ月の長期修業に入った・・掃除をして何が解るのだろうか?」・・・感動は突然やってきた。向うもの全てが自分だ、という不思議な認識であった。廊下が自分の心であってふき掃除は自分をきれいにする事であった(p105)
天国と地獄をみた男~炎 | |
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【私の評価】★★★★★(91点)
目次
幼少年時代 貧乏はなにを育てるか
青春時代 18歳で事業家に
サラリーマン時代 勤労が人を育てる
創業期 奇跡は起きた
流通業界の風雲児 先客万来の極み
大店舗法緩和の直前に一括売却
商業集積構想 頂点に立つ
不安の予感 100年の計
破滅の序曲 外資の強行再建
社長復帰 それでも最善を尽くして
民事再生 最後の決断
再建へ向けて 史上最短の民事再生認可
個人民事再生 アイワールドとの永遠の決別
最後に
著者経歴
五十嵐由人(いがらし よしと)・・・1942年福島県会津昭和村生まれ。 グループ年商400億の円の金字塔を立てたアイワールドの創業者。 過大投資が原因となり、民事再生を申請。地位と名誉、私財を失う。 天国と地獄をみた経験から、講演講師のほか、歌手として活動する。
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