「サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠」ジリアン テット
2017/10/17公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
■フィナンシャル・タイムズ
アメリカ版の編集長が発見した
タコつぼ組織(サイロ)の失敗例です。
組織で働く人が
なぜ時として愚かな行動を
とってしまうのか。
事例としては、
独自の圧縮技術ATRACに固執した
ソニーを挙げています。
人々がアップルのiPodで
mp3の音楽を楽しんでいるとき
ソニーはATRACに固執し、
そっぽを向かれてしまったのです。
VHSとベータマックスの闘いでは、
VHSソフトの多様さが
決定的だったのと似ていますね。
・現代社会においては専門家と集中が
好ましいと見られている・・
だが本書の重要なメッセージを
一つ挙げるとすれば、われわれの世界は
効率化を追及しすぎると
かえってうまく機能しなくなる(p325)
■サイロを破壊した例としては、
データ分析による犯罪発生マップや、
駐車違反車両を追跡できる
システムの作成を挙げています。
ビッグデータのはしりとも
いえるものでしょう。
また、従来の内科、外科から
「がんセンター」や「消化器疾患センター」
といった機能別組織の例を
挙げています。
組織を変えることで、
組織に刺激を与えるのです。
・マイケル・ブルームバーグが・・
ニューヨーク市長に当選・・
各組織がどのように情報の流れを管理しているのか
(というより管理できていないのか)・・
「測定できないものは管理できない」は
お気に入りのスローガンだった(p18)
■組織の硬直化により
官僚的な考え方が蔓延すると
組織は愚かになってしまうようです。
そのために大企業では
定例的な異動を仕組み化しています。
それ以上の刺激が
組織には必要なのでしょう。
テットさん
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・メモリースティック・ウォークマン・・
VAIOミュージック・クリップ・・
まもまもなくソニーは三つめのデジタル
音楽プレーヤー「ネットワーク・
ウォークマン」を発表した。・・
ソニーが一つではなく二つのまったく異なる
デジタル・ウォークマンを発表した理由は、
社内が完全に分裂していたためである(p78)
・部下は期待されることではなく、
監視されていることをする・・
(ソニーの)ストリンガーには
現場を多少なりとも
監視することは不可能に近かった(p102)
・FBIの友人がよくこう言っていた。
『調査資料はトイレットペーパーに
書いたほうがましなんじゃないか。
そうすれば誰かが使うだろう?』と。
大勢の刑事が犯罪者と覆面捜査官の会話、
あるいは犯罪者と他の情報源との会話を
録音したテープを何百時間分も持っていた。
でもみんながそれを箱に仕舞い込むから、
有効活用されることはなかった(p191)
・「僕らは非ソニー、非マイクロソフト的でありたい。
彼らを見て、自分たちはこうはなりたくない
というのを確認するんだ」
フェイスブック幹部(p214)
・グーグルと共同で開催した「ハッカソン
(夜通し続くプログラマーたちの
ブレーンストーミング・セッション)」を経て
スコット・ロビンという地元のウェブ開発者が、
交通巡査に強制撤去された駐車違反の車の状況を
市民に知らせる双方向のマップを作製した(p208)
・システムが殺人が起こりそうだと予測するのは、
たいていアフリカ系アメリカ人やラテン系の
居住区だった・・人種はかなりデリケートな
問題であり、数字というプリズムを通しても
不信感は払拭できなかった。悲劇としか
言いようがないが、予測プログラムが廃止
されたとたん、殺人率は再び上昇した(p210)
・ハッカー期間・・同じ仕事に12~18カ月
携わっている社員の方をたたき、
『何カ月か別の仕事をやってみたらどうだ』
という仕組みだ。たいていの人間は
本業とかけ離れた仕事を選ぶよ(p232)
・コスグローブはクリーブランド・クリニックを
医者の専門分野に応じた部門に分けるのをやめ、
患者の病気を中心とした組織にしようとしていた・・
「皮膚科・形成外科センター」
「消化器疾患センター」「泌尿器・腎臓センター」
「頭部・頸部センター」「心臓・血管センター」
「癌センター」など27のセンターを新設した(p270)
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
■目次
序章 ブルームバーグ市長の特命事項
第1章 人類学はサイロをあぶり出す
第2章 ソニーのたこつぼ
第3章 UBSはなぜ危機を理解できなかったのか?
第4章 経済学者たちはなぜ間違えたのか?
第5章 殺人予報地図の作成
第6章 フェイスブックがソニーにならなかった理由
第7章 病院の専門を廃止する
第8章 サイロを利用して儲ける
終章 点と点をつなげる