【書評】「運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」」安田 隆夫
2025/03/11公開 更新

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【私の評価】★★★★★(93点)
要約と感想レビュー
従業員の不正が横行
著者は30歳になって「泥棒市場」を立ち上げ、圧縮陳列やPOP洪水、深夜営業など奇抜なアイデアで繁盛店に育て売却。35歳で現金卸問屋「リーダー」を設立し、40歳でドン・キホーテを開業します。しかし現実には、著者の30代は我欲が強かったせいか、従業員の不正が横行し、ある日突然、営業マンが全員退職してしまったこともあったという。
ドン・キホーテを開業した後、我欲を消し去り、働く人たちのために経営を考えるようになったら、次第に事業も上手く回りはじめたというのです。それまで「自分の利益」だったのが、「私たちの利益」を目指すようにしたらすべてが変わったのです。
発想の転換・・最大のそれは、「相手の立場になって考え、行動する」(p126)
小さい失敗と大きな成功を目指す
20代は定職を持たず、徹夜麻雀を続けていただけあって、著者は「運」をギャンブルに置き換えて、運においても客ではなく胴元になるべきだと主張しています。ギャンブルでは胴元が一定の控除率を確実に手に入れる仕組みになっており、客が何度も掛ければ掛けるほど胴元の儲けは確実になっていきます。
著者は「運」を同じように使います。つまり、儲けるためにリスクを取りながら、たくさんの失敗(不運)したとしても損切りすることで損害を最小限とし、一つの大きな成功(幸運)を目指すのです。そのためには、運が悪いときの早期撤退の判断が重要であり、致命傷になるのを避けて、何度でも挑戦することを重要視しているのです。
早期撤退を断行するからこそ、次の挑戦が可能になる・・・登山においては、頂上を目前にして引き返すという、「勇気ある撤退」が求められることも多い(p69)
パート従業員に権限委譲
そして会社経営においては、経営者の一歩より社員の半歩が大切であるとし、従業員にやる気を出させるために権限移譲を徹底しています。ドン・キホーテでは従業員ごとに担当売り場を決め、仕入れから陳列、値付け、販売まで全て担当の従業員が行います。担当者が自分専用の預金通帳を持っているという。
また、買収した総合スーパー「ユニー」でも売り場担当を二十以上に細分化し、パート従業員に、商品の調達から棚割り、値付け、在庫管理まで全ての業務を任せるようにしました。すると、従業員の凄まじい熱意で、業績が急回復していったという。
ドン・キホーテの成功の秘訣は「圧縮陳列」「POP洪水」「深夜営業」という手法というよりも、それを自分の売り場で実行する従業員の情熱にあったのです。
経営者の一歩より社員の半歩・・「指示と命令:」ではなく「感謝とお願い」(p208)
自分の仮説を試して検証する
著者は挑戦が好きであり、自分の仮説を試して検証するのが好きなのです。リスクをとらなければ、大きなリターンはあり得ないし、好きでもない仕事で苦労するくらいなら、自分のやりたいことに挑戦するほうが楽しいということです。
著者は人生のギャンブラーであり、アドベンチャー経営者なのです。挑戦するために、不運な時は下手に動かずチャンスを待つという著者の言葉が心に残りました。安田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・妬みが強かったからこそ、私は人から妬まれるようなことだけは絶対にするまいと決めていた・・なるべく高級車に乗らない・・妬みの嵐を全身に受けて、潰されるのではないかという恐怖心があった(p115)
・他罰的な人は避けた方がいい・・「世の中が悪い」「会社が悪い」「周囲の人間が悪い」と、他人を攻撃したり罰したりして納得しようとするタイプである(p107)
・真の利益とは、顧客の信用の積み重ねがもたらすものである。逆に目先の利益に走って、信用を失うようなら、そんな利益などない方が良い(p124)
・何度も危ない橋を渡りながらも、必死で頑張ることができたのは、何も持たざる者だったからだ・・・挑戦せざるをえなかったし、頑張らざるをえなかった(p96)
▼引用は、この本からです
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安田 隆夫、文藝春秋
【私の評価】★★★★★(93点)
目次
はじめに ドン・キホーテが起こした奇跡の源泉
第一章 運という未開の大陸に分け入る
第二章 幸運の最大化と不運の最小化
第三章 運の三大条件――「攻め」と「挑戦」と「楽観主義」
第四章 何が運を落とすのか
第五章 最大のキーワードは「主語の転換」
第六章 「集団運」という弾み車
第七章 自燃・自走の「集団運組織」をどう作るか
第八章 圧勝の美学を語ろう
エピローグ 人間讃歌こそが私の生き様
著者経歴
安田隆夫(やすだ たかお)・・・1949年岐阜県大垣市生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、不動産会社に就職するも入社10カ月後に倒産。1978年、東京・杉並区にわずか18坪のディスカウントショップ「泥棒市場」を出店。深夜営業でヒットし成功を収めるが、5年で売却し、卸問屋「リーダー」を設立。これも大きな利益を上げるが、小売業への再参入を決意し、1989年に「ドン・キホーテ」1号店を東京・府中に出店。幾多の失敗や苦難を乗り越えながら急成長を続け、創業以来34期連続増収増益という驚異的な偉業を達成。現在はPPIHグループ(旧ドン・キホーテHD)創業会長兼最高顧問
ドン・キホーテ関連書籍
「運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」」安田 隆夫
「楽しくなければ成果は出ない」田中 マイミ
「安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生」安田 隆夫
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