「ニュースの大問題! ―スクープ、飛ばし、誤報の構造」池上 彰
2018/05/03公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
分かりやすい解説でおなじみの池上さんによる分かりやすい報道の裏側です。
新聞記事には、事実に基づかない『飛ばし』という意図的な誤報があることから話がはじまります。なんと、池上さんが若い頃、先輩記者から、「A紙やB紙が特ダネとして大きく書いた記事には『飛ばし』が多いから、あわてて追いかけるのは気をつけたほうがいい」と注意されたというのです。
『飛ばし』とは、事実に基づかないおおげさな記事のことです。実際、池上さんの経験でも、ある殺人事件で「有力容疑者浮かぶ」というD紙の記事を裏とりしたところ、いくら調べても同じような事実は出てこなかったおいう。なんとその記事は事実がないのに書いたというのですから、池上さんもショックを受けたという。
そして、最後には、『角度をつける』という意図的に歪曲している新聞社があることも明記しています。また、売れさえすばいいと考える週刊誌などの雑誌は、記事の大筋を決めて取材にくる場合があるという。つまり、最初からストーリーとオチが決まっているのです。極端な例では、目次を最初に作って、タイトルまで決めて、そのストーリーのなかにはめこむ「材料」を取材するのだという。ひどい話です。犯罪に近いと思います。
・新聞社のなかには、事実を伝えるのではなく、自分に都合がいいように書くところがあります。「朝日の慰安婦報道が、海外で日本の国際的評価をおとしめた」・・「角度をつけて書いている」と指摘されています・・産経は産経で、角度をつけて記事を書いているのです(p178)
その一方で、「記事は裏取りしなければ記事ではない」、「原稿は事前に見せません。なぜなら、事実を伝えるためです」、「国益を考えて書きはじめたら記者はおしまいだ」 といった、理想論も書かれてあります。
また、「情報源の秘匿」は、報道記者にとって大切なことと書いてあります。なぜなら「情報源は××です」と口にしたら、それ以後、取材活動ができなくなるからです。そういう意味では、先日、総理大臣秘書のオフレコを毎日新聞が記事にして秘書が更迭されましたが、これは報道記者にとっては自殺行為ということなのでしょう。毎日新聞は、そうした悪影響よりも、政権へ打撃を与えることを優先したということなのでしょう。理想論も大切ですが、他国の国益を考えてマスコミが書きはじめたら、それこそおしまいだと私は思いました。
・朝日新聞の「慰安婦記事の誤報」がなぜ起こったか・・朝日新聞の人たちも「朝日には過剰な使命感みたいなものがあったんじゃないか」と、自己批判しています・・私が思うのは、逆に「国益を考えて書きはじめたら記者はおしまいだ」ということです(p137)
マスコミも見方によれば、一種の情報機関、諜報機関なのだ、と思いました。情報を扱うことで金を稼いでいるし、金の稼ぎ方にもいろいろなスタンスがあるのです。
そもそも新聞記者という職業は、明治のころ「書かれたくなかったらカネをよこせ、誠意を示せ」という「ゆすり・たかり」からはじまったというエピソードに衝撃を受けました。だから、昔は、取材に行くと「お車代でございます」とお金を渡していたのです。韓国や中国ではいまもおこなわれているとの記載にまた、びっくりしました。
池上さんは事実に基づく報道を目指していることはわかりました。池上さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・どんなに困っても、確認が取れないことは報道しません。この一点はゆるがない。記者にとっては、裏取りという確認作業をしたものだけがニュースなのです(p36)
・報道は、インタビューした原稿を事前に見せろなどと言われても見せません・・それは事実をありのままに伝えようとするからです(p60)
・朝日が書くと日経が「特落ち」になる。そうしたら、あとで日経にどんなふうに書かれるかわからない・・そこで、朝日の記者が来たらすぐに日経にも知らせるのです・・最終的な確認で「当て」に行くときに、ギリギリに行かないとせっかくの特ダネが日経に漏れてしまうことがある(p39)
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【私の評価】★★★★☆(86点)
目次
第1章 そもそもニュースって何ですか?
第2章 ニュースに公平中立はあるのか?
第3章 ニュースはこうしてできていく
第4章 ニュースは権力から独立している使命がある
第5章 ニュースの賢い受け取り方
著者経歴
池上 彰(いけがみ あきら)・・・1950年、長野県生まれ。慶応義塾大学卒業後、NHKに記者として入局。事件、事故、災害、消費者問題、教育問題等を取材。2005年に独立。名城大学教授、東京工業大学特命教授。
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