人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「永守流 経営とお金の原則」永守 重信

2023/12/07公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

「永守流 経営とお金の原則」永守 重信


【私の評価】★★★★★(94点)


要約と感想レビュー

月商の2カ月分以上の現金を持つ

日本の名経営者としてイメージするのは、松下幸之助、稲盛和夫ですが、次に来るのは著者の永守重信氏ではないでしょうか。著者は小型モーターを主力製品とする日本電産を創業し、60社以上の買収を成功させ、グループ従業員も11万人、連結売上高は1兆8000億円となっています。


しかし創業時は取引先の企業が倒産し、資本金を上回る多額の手形が不渡りとなり、一時著者は真剣に自殺を考えたという。そして倒産した企業の債権者集会で、土下座した社長に罵声やモノが飛ぶのを見て、「倒産するとこんな恐ろしい目にあうものなのか」と感じ、恐怖で動けなくなったというのです。この手形の不渡りは、必死に資金繰りに走り、なんとか切り抜けます。この事件から、日本電産では月商の2カ月分以上の現金を持つことを原則にしているという。


また、優良企業にしかモノを売らないと決意し、危なそうな取引先からはすべて手を引いていきました。もちろん、優良企業からの要求は厳しく、一朝一夕に優良企業との取引を拡大できたわけではありませんが、その要求に応じていく過程で、日本電産のレベルが引き上げられていったというのです。注文をとりにくい会社からこそ、注文をとるべきであるというのが著者の成功法則なのです。


私は・・人一倍、肝っ玉が小さく「怖がり」である。家族からも「なんでそんなに怖がりなのか」とあきれられるほどである(p18)

銀行との付き合い方

また、興味深いのは、銀行との付き合い方でしょう。日本電産が創業期に取引があったのは、京都銀行、京都信用金庫、中小企業金融公庫(現在の日本政策金融公庫)です。特に「担保がない」「実績がない」「年齢が若い」と融資を断られ、話すら聞いてもらえない状況で、話を聞いてくれたのが、京都銀行桂支店の支店長だったという。京都銀行は、日本電産の最大の恩人の一人であり、京都信用金庫も苦しい時期に融資をしてくれたという。


著者は銀行マンを5つのタイプに分けています。1金貸しタイプ、2失敗恐怖症タイプ、3サラリーマンタイプ、4ギブ&テイク型、5使命感型です。企業の将来性を評価してくれる使命感型の人は、極めて少なく、千人に一人くらいだという。さらに日本の金融機関では、使命感型は必ずしも出世していないというのです。つまり、一度失敗すると復活できない銀行組織では使命感型は出世できないのです。


そういう意味では、ベンチャー企業にとってはギブ&テイク型でちょっと使命感を持った人と出会ったら、そこから融資を拡大していくのが現実的ではないかとしています。ところで、京都銀行桂支店の支店長は出世したのでしょうか。


金融機関との付き合いにおいて何より大事なことは、あきらめないことである。創業ほどない企業の場合、「融資交渉は断られることから始まる」というぐらいに考えておいた方がよいだろう(p111)

現金(キャッシュ)を多く持つ

日本電産では現金(キャッシュ)を多く持つため、機械を購入する場合には、銀行からは機械の導入という目的で全額分の借り入れを行い、機械の代金返済は36回や48回の分割払いにして手元の現金(キャッシュ)を厚くしているという。


また、事業部門ごとにキャッシュ化の速度を把握するようにして、不正に目を光らせているという。たいてい不正会計は在庫と売掛金であり、現金(キャッシュ)を把握していれば、誤魔化しようがないわけです。


それ以外にも資金調達は借りにくいところから借りるという鉄則もあります。大手の銀行から資金調達しようと思えば、相手を説得する合理性が必要となり、さらに金利が安いのです。さらに、借金をすれば利息を支払うことになり、そのためには利益を上げなければならない。そうした緊張感が経営の規律を高めるという。


経営には緊張感が必要であり、それを引っ張っていくのが社長の役割なのだと感じました。充実した内容で★5とします。永守さん、良い本をありがとうございました。


無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信)
3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。

この本で私が共感した名言

・為替の予約はいっさいしない・・円高への対応が社内に緊張感をもたらす・・グループ全体で取引を均衡させ、円高になろうが円安になろうが、影響が出ない体制を整えることの方が大切だ(p201)


・2020年春、世界的に新型コロナウイルスの感染症が広がり、国境をまたいだ部品のサプライチェーン(供給網)が分断された。グローバル化の限界という声もあったが、むしろ逆だろう。部品の供給体制も含めて、さらなるリスク分散を考えるべきである(p208)


・日本電産はこれまで営業利益率を10%を必達基準にしてきた・・利益率15%の水準が必要にいなる。それが実現できるようになれば、最終的には20%まで高めたい。そうしないと変化の荒波を乗り切れず、グローバルな競争には勝てない(p215)


▼引用は、この本からです
「永守流 経営とお金の原則」永守 重信
永守 重信、日経BP


【私の評価】★★★★★(94点)


目次

序章 お金の戦略が必要だ――会社を絶対つぶさないために
第1章 キャッシュこそ企業価値の源泉――コスト意識を鍛えよう
第2章 会社を成長へ導く財務戦略――創業期に重視すべき指標とは
第3章 創業時の資金の集め方――やっぱりお金から始まる
第4章 金融機関とどう付き合うか――「取引は人なり」で活路
第5章 取引先を見極める方法――その選択が会社の命運を分かつ
第6章 チャレンジと財務バランス――持続的成長へ変化を恐れない
第7章 いざ株式上場 規律の中で鍛える――問われる発信力
第8章 M&Aをどう活用するか――永守流・勝利の方程式
第9章 海外展開は飛躍のチャンス――リスク管理は分散から
第10章 波乱の時代をどう乗り切るか



著者経歴

永守重信(ながもり しげのぶ)・・・1944年京都生まれ。職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒業。73年、28歳で従業員3名の日本電産株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。80年代から国内外で積極的なM&A戦略を展開し、精密小型から超大型までのあらゆるモータとその周辺機器を網羅する「世界No.1のモーターメーカー」に育て上げた。代表取締役会長兼社長(CEO)、代表取締役会長(CEO)を経て、2021年より代表取締役会長。2014年、世界のすぐれたモータ研究者の顕彰と研究助成を目的とした公益財団法人永守財団を設立、理事長に就任。また2018年には京都先端科学大学を運営する学校法人永守学園理事長に就任。


この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ


ブログランキングにほんブログ村



<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本 , ,


コメントする


同じカテゴリーの書籍: