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「ザ・会社改造: 340人からグローバル1万人企業へ 実話をもとにした企業変革ドラマ」三枝 匡

2024/04/15公開 更新
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「ザ・会社改造: 340人からグローバル1万人企業へ 実話をもとにした企業変革ドラマ」三枝 匡


【私の評価】★★★★★(98点)


要約と感想レビュー

機械部品商社ミスミの強み

著者は2002年に売上高500億円、従業員360人の金型、工業機械部品商社ミスミの社長となりました。著者は、ボストンコンサルティンググループで修行し、コマツなどの業務改革に従事しV字回復を達成(「V字回復の経営」)し、プロ経営者としてミスミに招請されたのです。


まず、著者が行ったのは、ミスミで行われていた新規事業への取り組みの凍結と、本業回帰です。多くの日本企業で見られるように、本業とまったく異なる分野での新規事業は、本業との相乗効果もないし、数十億円単位の利益も期待できない場合が多いのです。当時ミスミではスポーツクラブ、リゾート開発、教育研修、出版、人材派遣、コピーサービス、レストラン、きのこ栽培などの新規事業を行っていましたが、撤退、売却を進めることになりました。


その一方で著者が注目したのは、ミスミの本業での強みです。ミスミは工場向けに金型や部品をたった3日で商品を届けるサービスを提供していました。リソースを新規事業に投入しているにもかかわらず、本業の営業利益率は10%を確保していたのです。このミスミ強みの強化にリソースを集中し、世界的に展開することを著者は目指しました。


社内ベンチャー・・弱点は、「探索」→「実験ステージ」→「選別」→「一気呵成の大勝負」という基本ステップの節目での審査が、外部のプロに比べて甘くなることだ(p57)

良い商品、悪い商品とは?

まず社内の改革を行うにあたっての基本は、改革の対象を絞ることです。一つの改革を成功させ、その手法を水平展開するのです。著者はミスミの主流の金型事業ではなく、成長しているFA(ファクトリー・オートメーション)事業に絞りました。FA事業部では、競合に対してどのような戦略で成長を描くのか、事業部長に問うたのです。「良い商品、悪い商品とは?」「どうしてミスミから買ってくれるの?」「個に迫れ」と問いかけたのです。


実は当時ミスミでは、商品の売上高と粗利益率はわかっていました。しかし、輸送費や営業費はどんぶりで個別の商品にわけて分析したところ、配送料がかかりすぎて赤字の商品や、拡販費用が高くて利益が少ない商品が見えてきたのです。


驚くのはこうした分析方法を著者は頭の中に描いていたのに、事業部長に答えを教えていないことです。著者は社長になって「経営人材の育成」を第一の目標として表明しています。まさに、答えを教えずに問うことで、人を育てようとしたのです。答えを知りながら、意識的に部下に考えさせる姿に体が震えました。


「商品1個1個の損益がわかる」という、考えてみれば当たり前の、ただそれだけのことが、社員たちの行動や全体経営に大きな影響を与えていく(p181)

チマチマ投資病を破壊する

海外展開でも重点戦略市場として中国と米国に絞っています。特に中国については、世界の工場がアメリカ→日本→中国と移っているという歴史観から決定したものです。中国法人の立ち上げは社内で立候補した30代の社員が担当しました。担当役員からは半年で事業を立ち上げるように指示され、2人の部下とともに中国に乗り込んだのです。


半年で日本と同じ規模の事業を立ち上げることは不可能なはずなのですが、上意下達のミスミで30歳の社員は指示された期限を守るために少ない商品サービスで見切り発車しようと考えていたのです。半年後に中国を訪問して現地の状況を知った著者は、日本と同じレベルのサービス提供を厳命し、期限を1年延期しています。また、日本に帰って、すべての事業部に中国法人立ち上げに協力するよう要請しているのです。


著者の頭の中にあったのは、ミスミの海外事業に数億円といった小さい投資を何度も行う「チマチマ病」を破壊することでした。中国で狙う売上高は、日本と同じサービスを一気呵成に提供することで、数百億円を超えるものを目指したのです。


ミスミが陥っていた海外の「チマチマ病」は完全に粉砕しなければならない(p217)

リードタイムの短縮

ミスミは発注から3日で商品を納品する驚異的なリードタイムのサービスを提供していましたが、弱点は自社工場を持っておらず、生産技術にノウハウを持っていないことでした。さらにリードタイムを短縮するためには、協力工場の改善が必要となりますが、その能力も力もなかったのです。そこで著者の打ち手は、時間を買うという意味で、有力な協力工場の吸収合併でした。


結果して駿河精機との経営統合は成功し、駿河精機の工場でトヨタ生産方式の考え方を導入した「部品1個流し」を協力企業に水平展開することができるのです。最終的にミスミは発注から2日で納品するようになったのです。


もちろん経営統合において、抵抗したり、サボったりする社員がいるのです。そうした修羅場を潜り抜け、戦略を進めたのです。著者は反抗的駿河精機の役員に、役員会で「ここに、ケンカを売りにきたのか?力を合わせて、これから頑張ろうという出発の場だ。建設的にやろうじゃないか」と言わざるをえない場面もあったという。


「改革したら残業が減って、給料が少なくなるんでしょう?そんな改革はやりたくない」彼らはその意識レベルからのスタートだった(p338)

トップでなければ改革は難しい

著者が社長となった時のミスミの500億円の売上高は現在は3700億円と8倍、純利益は30億円から現在300億円以上と10倍以上になっています。


修羅場になることはわかっていても、会社を改善していこうという著者の覚悟に共感しました。日本ではどうしても改革を実行しようとする人は抵抗を受け、場合によっては足を引っ張られて改革失敗者の烙印を押されてしまいます。追い詰められた会社でも、気楽な見物人を決め込む社員はたくさんいるのです。


著者は日本では、トップ自ら現場を指導していくスタイルをとらない限り、会社を改革したり、組織の危機感を高めたりすることはできないと断言しています。確かにその通りだなと納得するしかない自分が寂しく感じました。三枝さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・複雑な業務改革で、すぐシステム化に向かいたがる人は危険人物だ。まずは手で検証せよ(p327)


・日本企業がOJTと言うときは、「何もやっていません」と同じ意味のことが多い(p363)


・商品ごとに実態を反映した経費率を適用しないと、それぞれの商品で本当の利益率は見えてこない(p171)


▼引用は、この本からです
「ザ・会社改造: 340人からグローバル1万人企業へ 実話をもとにした企業変革ドラマ」三枝 匡


【私の評価】★★★★★(98点)


目次

プロローグ 「会社改造」の勝負に挑む
第1章 会社改造1 「謎解き」で会社の強み・弱みを見抜く
第2章 会社改造2 事業部組織に「戦略志向」を吹き込む
第3章 会社改造3 戦略の誤判断を生む「原価システム」を正す
第4章 会社改造4 成長を求めて「国際戦略」の勝負に出る
第5章 会社改造5 「買収」を仕掛けて「業態革新」を図る
第6章 会社改造6 「生産改革」でブレークスルーを起こす
第7章 会社改造7 時間と戦う「オペレーション改革」に挑む
第8章 会社改造8 「元気な組織」をどう設計するか
エピローグ 「戦略」と「熱き心」の経営



著者経歴

三枝 匡(さえぐさ ただし)・・・株式会社ミスミグループ本社取締役会議長。1967年一橋大学経済学部卒業。三井石油化学を経て、ボストン・コンサルティング・グループの国内採用第1号コンサルタントになる。スタンフォード大学でMBAを取得後、プロ経営者を目指し、30代で赤字会社2社の再建とベンチャーキャピタル会社の経営をそれぞれ社長として経験。40代から16年間、不振企業の再建支援を行う「事業再生専門家」として活動。2002年ミスミ(現ミスミグループ本社)社長CEOに、2008年会長CEOに就任し、2014年より現職。同社を社員340人の商社からグローバル1万人の国際企業に変身させた。一橋大学大学院客員教授も務める。


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