【書評】「結果が出る仕事のムダ取り 確実に生産性が上がる実践法リーンオペレーション」庄司 啓太郎
2025/07/25公開 更新

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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
継続的改善で生産性が向上
リーンオペレーションを勉強してみよう!と手にした一冊です。リーンオペレーションとは、トヨタ生産方式のように継続的改善によって生産性が良くなっていく仕事のやり方です。
リーンオペレーションは生産現場だけでなく、スーパーや旅館といった人が動く職場であれば、すべての職場に適応可能であり、目指すべき理想なのです。しかし、実際の会社では、業務のルールが定まっておらず、毎回混乱しながらもその場しのぎになっていたり、自発的な改善アイデアが出てこないなどといった職場が多いのではないでしょうか。
この本では理想の職場を目指し、リーンオペレーションを導入する場合の一般的な流れと、具体例2件が説明されています。
企業のあるべき姿・・・業務プロセスや手順が定められ、継続的に改善されている(p19)
変革推進チームを置く
「オペレーション改革」の標準的な体制は、経営層の直下に「変革推進チーム」を置きます。必ず一人は専任者を置きましょう。
標準的スケジュールは、1ヶ月目にゴール設定、2か月目に可視化、3カ月目に小さく絞った業務について標準化、4か月目に単純化、5か月目に徹底化を行い、半年で総括を行います。最初の半年、小さく絞るのは、範囲を絞ることで、小さくてもいいので着実に成果を出すためです。
その後の半年では、前半の成果をもとに、会社全体に活動を広げていきます。これも順番は同じで、7‐8か月目が標準化、9-10カ月目が単純化、11‐12か月目で徹底化を行い、年次総括を行います。
目標達成の進捗を測るために、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定して、測定しましょう。サービス業での一般的なKPIとして「人時生産性=粗利÷人時」が紹介されています。
いったん冷静に優先度を見極め「スモールスタート」で範囲を絞って・・小さくてもいいので着実に成果を確認・実感することが重要です(p165)
可視化・標準化・単純化
ゴール設定後の「可視化」では、「業務一覧表」を作成します。その職場の仕事を、業務内容・業務工数・業務難度・必要スキル・必要ツールで整理するのです。具体的にはメンバーで集まり、「付箋紙」などを使って抽出するとよいでしょう。 「業務一覧表」を作ると、各部門の最も負担の大きい業務が見えてくるというのです。
次の標準化は、その仕事の基準・マニュアルを作成します。著者の会社では、マニュアル作成ツールを販売しており、タブレットで簡単に従業員が学ぶことができるよう支援しているのです。
標準化した後は、単純化です。これはムダ取りに近いもので、なくす、減らす、寄せる、任せるといった視点で仕事を見直すのです。
単純化では、スタッフの負担感が増えると、逆に作業効率が低下したり、退職者が増えてしまうリスクもあります。スタッフが無理せずに、自然に新しい方式になじんでしまうような 工夫が必要だという。例えば、職場の床に交通標識のようにラインを引いて、位置決めするなどは、誰が見ても一目でわかるので受け入れやすいのです。
単純化の視点・・なくす・・減らす・・寄せる・・任せる(p120)
オペレーション改革事例
具体例としてショッピングセンターを運営する「ベイシア」や旅館の「オペレーション改革」が説明されていました。ベイシアでは、「品出し業務」が青果部門で約26%、鮮魚部門で約13%と最も負担の大きい業務でした。この「品出し業務」を重点的に改善していったのです。
1店舗で1日2万個の商品の品出しを行うので、仮に1個あたり1秒短くなると、1店舗2万秒、つまり5.6時間。お金に換算すると、5.6時間×1200円×130店舗×365日=年間3億円の効率化の可能性があるという。
改善による効果の大きさに驚きました。あとは実際に小人化して運用できるかどうかですね。わかりやすい一冊でした。庄司さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・ベイシア・・店内調理の総菜の場合、材料などの原価だけでなく1パックあたりの人件費や作業時間を数値化しています(p193)
・宿泊業を営む株式会社一の湯・・・1泊2食付き1万円台・・部屋食を廃止・・下足番を廃止・・部屋での布団の上げ下ろしも廃止・・厨房も「セントラルキッチン」として1か所に集約(p220)
・(業務一覧表に記載する)業務に必要な道具・・台数の制限があるもの・・操作に特定のスキルが求められるもの・・利用に際して大きなコストのかかるもの・・更新や修理により大きなメリットが期待できるもの(p101)
▼引用は、この本からです
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庄司 啓太郎 (著)、日経BP
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第1章 生産性が上がらない企業の実態
第2章 企業のあるべき姿 リーンオペレーションとは?
第3章 リーンな状態になるために
第4章 実践編 企業・事業のゴールを定める
第5章 実践編 オペレーションの「5つの構成要素」を理解する
第6章 実践編 リーンオペレーション実現に向けた「5つのステップ」
第7章 実践編 リーンオペレーションの推進力を高める
第8章 実践編 プロジェクトの進め方
第9章 事例編 ベイシア(スーパーマーケット)
第10章 事例編 一の湯(宿泊施設)
著者経歴
庄司 啓太郎(しょうじ けいたろう)・・・株式会社スタディスト 取締役副社長。東京工業大学卒。国内シンクタンクにて、都市計画等の調査業務に従事。その後、製造業向けの業務改善コンサルティング会社にて、設計支援システム導入や製品開発プロセス改革、業務分析のプロジェクトリーダーを歴任。同社マネジャー職を経て、2010年に株式会社スタディストの創業に参画。営業部門、カスタマーサクセス部門の統括を経て、現職。顧客企業の「リーンオペレーション」実現に向け、コンサルティング・研修・アウトソーシング等のソリューションを展開。
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