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「人材は「不良社員」からさがせ -奇跡を生む「燃える集団」の秘密」天外 伺朗

2024/06/18公開 更新
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「人材は「不良社員」からさがせ -奇跡を生む「燃える集団」の秘密」天外 伺朗


【私の評価】★★★★★(92点)


要約と感想レビュー

不良社員の中から人材を探すべき

ソニーでCD、犬型ロボットAIBOなどの開発を主導した著者が教えてくれるのは、画期的な商品を開発するためには、不良社員の中から人材を探すべきだということです。なぜならば、画期的な商品を開発するためには、本質を押さえながら既存の常識にとらわれない人材が必要だからです。


ところが、そうした人材は自尊心が強く、性格的にも妥協がなく、直言するタイプなので、組織の中で対立を引き起こすのだという。組織の大部分は三流の良い子たちで構成されているので、そうした人材の上司は三流であることが多いのです。三流がそうした人材の仕事に口を出せば、不器用な人材が反発し、上司を批判することになります。


日本の組織ではそうした人材は「チームワークを乱す」とみなされ、組織人として不適格者として干され、不良社員とされるのです。


「できる人」・・自尊心が強く、性格も鋭角的だが、仕事には抜群の手腕を発揮する切れ者タイプ(p30)

できる人はスケープゴートにされる

実際、ソニーの社内においても、CDを開発したデジタル・オーディオ部門の研究室は会社の規則をいっさい無視していたため、社内のひんしゅくを買い、評判はすこぶる悪かったという。ソニーとフィリップスで開発した発売前のCDをビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズに見せると、CDによって新しい電子販売事業が生まれるぞ、と興奮していたという。見る人が見れば、わかるのです。


ところがソニー社内ではCDに対して、「そんな大容量の記録デバイスなど、いったい誰が使うんだ」と嘲笑する人ばかりで、著者はそういう勢力の人たちと戦っていたのです。2003年のソニーの株価暴落時も、多くの不良社員がスケープゴートにされ、退社していったという。プレイステーションの生みの親、久多良木健も退社し、あとに残ったのは良い子のサラリーマンだけだったわけです。


CD-ROMに対して、"そんな大容量の記録デバイスなど、いったい誰が使うんだ"という嘲笑の声が圧倒的であり、それと闘わなければならなかった(p75)

細かいことにこだわらない上司が必要

では、こうした尖った人材をどうすれば活躍させることができるのでしょうか。まず、そのためには細かいことにこだわらず人間的魅力にあふれた「できた人」が上司として必要なのだという。「できた人」は人材が活躍できるよう、いっさいをまかせて口出しをしないのです。


また、半年先の目標を明確にしそれに向かって燃える集団を作らなくてはならないという。2年後にこうしよう、5年後にああしようといっても、誰も燃えないのです。よくあるのは、優秀な人を集めて、毎日、会議を重ねて、調査しているうちに半年くらいたってしまうパターンです。これではグダグダ仕事をすればいいやとなって、プロジェクトはうまくいかないのです。
 

そうしてグダグダしているうちにチーム内の感情的な抗争が起こることもあり、そうした感情的抗争を避けるためには原因となる人をチームからはずすことも必要だという。


アホが入ると、チームがシラケるのですよ・・ひとりでも頭の固いのがいると、いちいち引っかかるという(p129)

尖った人材を育成する方法

そうした尖った人材を育成する方法として、モッテッソリー教育を紹介しています。Facebookのマーク・ザッカーバーグ、Amazonのジェフ・ベゾス、Googleのセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、マイクロソフトのビル・ゲイツが有名です。


自分の興味のあることを突き詰めるという意味で、協調性というよりは自立的に行動できる人を育てる教育なのでしょう。


そして尖った人材を活用する方法として、花王株式会社の研究所の仕組みを紹介しています。花王では、新しい研究を起こそうとする人は、参加してほしい人をあらかじめ指名してプレゼンするのです。そのプレゼンを聞いて、指名された人が、やってみようと決心したら、研究が実施されるのだという。そして研究は、担当者が全責任と全権限を握って進行させるという。


これも研究としては、モンテッソーリ教育のように自主性を最大限活かすやり方だと感じました。天外さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・上からいろいろな指示がくると、チームリーダーは自分ひとりではデシジョン(決定)ができなくなります・・それぞれにエンジンのついた車をロープで結んだようなものです。相手がどこに行こうとするのか慎重に観察しながら、ソロソロと進まないといけない(p106)


・派閥争いと親分子分の関係と、ドロドロした不明瞭さの中で・・人材というのは、物事の本質をズバリと切り込むのが身上だから、こういう不明瞭が雰囲気にえらく敏感です。燃えようにも燃えられなくなってしまう(p110)


・組織の目的が戦争をすることだったら、本当に必要なのは戦上手の武士のはずです。ところがサロン化している組織では、そのかけがえのない武士を不良社員というレッテルを貼って追い出してしまうのですよ(p46)


▼引用は、この本からです
「人材は「不良社員」からさがせ -奇跡を生む「燃える集団」の秘密」天外 伺朗
天外 伺朗、講談社


【私の評価】★★★★★(92点)


目次

第1章 D博士再登場
第2章 人材は不良社員から捜せ
第3章 良い子シンドローム
第4章 人材は修羅場で育つ
第5章 プロのセンス
第6章 技術開発を支えた人材たち
第7章 燃える集団
第8章 チームづくり
第9章 マネージャーは邪魔するな!
第10章 一流マネージャーの苦悩
第11章 20年前のソニーでは皆こうやっていた!
第12章 上を向いて仕事をするな!
第13章 戦略は行動のスピードから生まれる
第14章 背後から鉄砲で撃たれるぞ!



著者経歴

天外 伺朗(てんげ しろう)・・・本名、土井利忠。1942年、兵庫県生まれ。元ソニー上席常務。工学博士。1964年、東京工業大学電子工学科卒。ソニーに42年間勤務。その間、CD、ワークステーションNEWS、犬型ロボットAIBOなどの開発を主導した。現在は病院に代わる「ホロトロピック・センター」の設立推進などの医療改革や、企業経営者のための「天外塾」なども開いて経営改革に取り組むほか、教育改革へも手を拡げている。


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