「会社をつぶさない社長の選択」松岡靖浩
2024/03/19公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
現預金を多めに持っておくこと
税理士として30年以上、500社以上経営にアドバイスしてきた著者の経験談を教えてもらいましょう。
ある企業で、手元の余裕資金で銀行からの融資をすべて繰上返済してしまったという事例が紹介されています。世の中には無借金経営の会社もあるのに、何が問題なのでしょうか。
松下幸之助はダム式経営と言っていますが、企業には将来への投資や、何か予期しない事態に対応するための運転資金や余裕の資金が必要です。有り余るほど資金があれば問題ありませんが、普通は借入金によって現預金を多めに持っておくことが基本なのです。
また、銀行側の視点で言えば、利子が入ってくる予定であったものが突然ゼロになってしまうのですから、銀行の担当者は困ってしまうでしょう。ただでも困ったときに銀行はお金を貸してくれないのですから、さらにお金が借りにくくなったということです。
会社を倒産させないためには、いかなる状況でも、支払い以上の現預金を確保する必要があります。そのために、銀行との付き合いは大切だし、自社ビルを持たないなど資産の流動性を高めておくことが重要なのです。
借入金の金利は、会社の安全性を担保する「保険料」と考えてください(p39)
粗利益率を高める経営
経営者が、安売り競争したことで売上がさらに落ちてしまったケースも紹介されています。大企業なら薄利多売戦略も可能ですが、中小企業では高い付加価値を狙っていくことが手堅い作戦なのです。自社製品の粗(あら)利益率と損益分岐点を把握しておくのは経営の基本です。価格を高くし、コストを下げることで粗利益率を高めるのが経営なのです。
また、一倉定先生の言葉を引用して受注側の場合には、シェア35%以上あれば取引を切られる可能性が少なくなることを指摘しているところはさすがです。発注側の視点では、一つの会社に依存しない努力をしなければならないのです。
税理士というと決算書類を作ってくれるというイメージですが、こうして読んでみると著者は「倒産はさせない」をモットーに経営コンサルとしても仕事をしていると思いました。
安定的なシェアは大体35%・・不況に陥ったとしても相手は簡単に切れない(p119)
専門家のアドバイスが必須
人事関係でもヘッドハンティングで採用された人の中で、会社にとって本当に有益になった人を一度も見たことがないという著者の言葉に驚愕しました。そういえば稲盛和夫氏も、中途採用で「どこまでも付いていきます!」と威勢のよいことを言っている人に限って、経営が傾くとすぐに転職してしまったと言っています。金で集まってきた人は、金しだいで別の会社へ行ってしまうのです。
資金繰りだけでなく、人材採用、営業、商品開発、資材調達までこれだけ社長が判断すべきことがあるのですから、間違わないために専門家のアドバイスが必須なのだとわかりました。
著者は信用金庫と、最低でも2行お付き合いすることを提案しています。なぜなら、担当者の当たりはずれが大きいからです。それ以上に、税理士の先生の当たり外れが大きいのではないかと思いました。もちろん著者は当たりのほうなのでしょう。松岡さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・共同経営は難しい。一緒に仕事をするならまずはジョイントベンチャーで・・一人社長のような形(p29)
・起業の資金調達には、政策金融公庫の創業融資を検討する(p32)
・家賃よりも税金の支払いを優先・・税金を滞納すると完全に銀行からの借入れ手段が止められてしまう(p194)
・中小企業が大手企業と契約する際に総代理店契約を結び、つぶされるというケースはよくある話です(p251)
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第1章 起業時の選択
第2章 経営戦略の選択
第3章 税務の選択
第4章 資金繰りが悪くなったときの選択
第5章 つぶさない社長の選択
著者経歴
松岡靖浩(まつおか やすひろ)・・・松岡靖浩税理士事務所代表。1967年東京生まれ。1990年中央大学商学部会計学科卒業。1995年税理士試験合格。現在、東京税理士会板橋支部所属。税理士として決算書を作成する一方、ノンバンクの役員としては証券会社や公認会計士から送られてくる決算書を確認。粉飾決算、税金・社会保険の滞納、隠れ負債がないか、決算書の裏の裏まで知り尽くしたプロ。一貫して「倒産はさせない」をモットーに、現場一筋33年、500社以上の経営サポートを行う。銀行交渉、ノンバンクを利用、弁護士を利用しない企業再生の専門家
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