「経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ」三枝 匡
2007/01/02公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(93点)
要約と感想レビュー
経営者を育てる
サラリーマン生活をしていると、よほど自覚しないと経営というものを考える機会は少ないものです。また、宮仕えの特性として危機感も少なく、前からの仕事を継続していくことを考える人が多いのではないでしょうか。
それを個人の資質の問題とするのは簡単ですが、この本では、企業を引っ張っていくリーダーを育成するためには、若いうちからリーダーの候補を子会社の社長など経営の経験をさせることを提唱しています。
会社の危機と社員の危機感は必ずしも相関しない。むしろ業績の悪い会社ほどたるんだ雰囲気であることが多い・・優秀な経営者は危機感を人為的に創り出す。(p16)
経営を体験する
組織の小さい中小企業のトップは高い成長を求められ、大企業の社長に劣らない難しい経営判断を次々と迫られることになります。つまり、短期間に凝集した経営経験を積むことができるのです。
そして、選抜された経営者候補が、子会社の再建などに投入されたとき、どのような経験をするのか、この本では仮想体験することができるのです。著者も同じように若くして経営を任された経験を持つことから、ストーリーの設定と解説は、秀逸です。
カルロス・ゴーンも若くして経営者として育成されましたが、日本ではそうした育成をする会社はほとんどないでしょう。ないからこそ、この本を読んで仮想体験していただきたいと感じました。ストーリー仕立てで読みやすく、リーダーにふさわしい仮想体験ができる一冊ということで、★5つとしました。
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この本で私が共感した名言
・高リスク投資で少ない案件から投資先を選ぶのは素人のやり方で失敗率が高まる。リスク投資ばかりを行う米国のベンチャーキャピタルは・・・広い情報網から案件を集め、100件に一件くらいの割で厳選する。(p35)
・[皆でやる=誰もしていない]一人の社員に複数の仕事を兼務させることがやたらに好きな企業は辻褄あわせをしているだけのことが多い。トップが「皆でやれ」というのも危険信号だ。(p206)
・花王がトップからボトムまでデータにこだわり、「成功しても反省を繰り返す」と言われているのは、会社全体で失敗の疑似体験を蓄積するカルチャーを作ったからである。(p247)
【私の評価】★★★★★(93点)
目次
第1章 袋小路
第2章 白旗あがる
第3章 混沌の世界
第4章 零への回帰
第5章 成功への絞り
第6章 試練の谷
第7章 飛翔の時
第8章 最後の関門
著者経歴
三枝 匡(さえぐさ ただし)・・・1944年生まれ。株式会社ミスミグループ本社取締役会議長。1967年一橋大学経済学部卒業。三井石油化学を経て、ボストン・コンサルティング・グループの国内採用第1号コンサルタントになる。1975年、スタンフォード大学でMBAを取得後、プロ経営者を目指し、30代で赤字会社バクスター社、大塚電子の再建とベンチャーキャピタル会社の経営をそれぞれ社長として経験。1986年三枝匡事務所を開設し16年間、不振企業の再建支援を行う「事業再生専門家」として活動。2002年ミスミ(現ミスミグループ本社)社長CEOに、2008年会長CEOに就任し、2014年より現職。同社を社員340人の商社からグローバル1万人の国際企業に変身させた。一橋大学大学院客員教授も務める。
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