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「給料の上げ方: 日本人みんなで豊かになる」デービッド・アトキンソン

2023/12/06公開 更新
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「給料の上げ方: 日本人みんなで豊かになる」デービッド・アトキンソン


【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

1990年から高齢者の数が2141万人増加

ゴールドマン・サックスを退社し、日本の国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社の社長となったアトキンソンさんは、日本の労働市場をどう見ているのでしょうか。


まず、日本人の平均賃金は30年間変わっていませんが、海外では年1~2%上昇しているので、日本はスペイン並みにまで落ちています。為替レートの影響もありますが、日本の給与が変わっていないのは、だれもが実感するところなのでしょう。また、国民負担率は2003年の34.1%から2022年には46.5%まで上がっています。これは、社会保障負担が10.6%から18.7%まで大きく増えているのが原因です。手取り収入は1990年と比べて、8.1%も減ったのです。


日本では1990年から高齢者の数が2141万人増加しているので、30年間で2000万人以上の失業者が増えたのと同じことであり、社会保障負担が増えるのは当然のことなのです。ただ日本の平均賃金が変わらないのは、低賃金の65歳以上と女性の労働者が増えたことで、全体の平均賃金が押し下げられたという要因もあります。高齢化によって低所得・低消費者が増えているのです。


・女性の労働参加率は上がりました・・女性の給料が異常とも言えるほど低い水準(p32)


給料を上げてくれと交渉する

では、日本の平均賃金を上げるためにはどうすればいいのでしょうか。まず、非正規雇用の導入で低所得の人が増えてしまったことについては、最低賃金を引き上げることを提案しています。


さらにアトキンソンさんは、日本人が転職しないこと、「自分の給料を上げてくれ」と交渉するのが苦手で、慣れていないことを指摘しています。アメリカでは解雇が多い印象ですが、自主的に会社を辞める人の数は解雇される人の2倍以上だという。給料交渉して、だめなら適切な給料を支払ってくれる企業に転職するのです。


経営者は「転職する可能性がある」と思わないと、真剣に賃上げを検討しません。日本人はどの経営者のもとで働くか、自分自身の責任で判断しなくてはいけないというのです。転職推奨は正論ですが、実際に転職する人が増えるには時間がかかるのではないかと思いましいた。


・海外では労働者がすぐに会社を見限って転職する(p6)


付加価値の高い商品・サービスを増やす

経営者視点で見れば、日本には富裕層向けのプレミアム市場向けの商品、サービスが少ないことを指摘しています。ホテルで言えば、ビジネスホテルが多く、付加価値の高い高級ホテルが少ないのです。労働者目線で言えば、低付加価値の仕事を、安い給料でやらされているというわけです。


それ以外に、海外に移住すること、社会人教育に投資することを提案しています。これも正論ですが、できるところからやってみたいものです。アトキンソンさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・海外に移住する・・海外在留邦人の数は、1989年の59万人から、2019年には141万人にまで激増・・女性の占める割合は70%(p102)


・アメリカは社会人教育にGDPの2%以上に相当する金額を使っていますし、欧州でも1%以上です。しかし日本では0.1%にすぎません(p180)


・日本では、生産年齢の人が支払った税金の大半が、主に高齢者が利益を享受するように振り分けられています(p288)


▼引用は、この本からです
「給料の上げ方: 日本人みんなで豊かになる」デービッド・アトキンソン
デービッド・アトキンソン、東洋経済新報社


【私の評価】★★★☆☆(75点)


目次

第1章 背景:なぜ日本人の給料は低迷しているのか
第2章 未来:日本人は世界の貧困層になる
第3章 目的:毎年4.2%の賃上げを実現する
第4章 手段:見限るべき社長、ついていくべき社長
第5章 心得:「よいものをより安く」では給料は上がらない
第6章 戦略:イノベーションが起きる会社を選ぶ
第7章 戦術:「4つの基準」で働く会社を評価する
第8章 補論:俗流評論家に騙されるな



著者経歴

デービッド・アトキンソン(David Atkinson)・・・小西美術工藝社社長。1965年イギリス生まれ。日本在住33年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の「成長戦略会議」委員などを歴任。


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