【書評】「受注を勝ち取るための 外資系「提案」の技術-日本人の知らない世界標準メソッド」式町 久美子
2025/04/08公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
見積りや提案書作成での失敗例
企業からの大型案件の受注を目指して入札やコンペに参加しようとするときに、よくある失敗は次のとおりです。
1 担当者から仮見積りの依頼をされて社内を動かして分厚い提案書を作ったら、そのプロジェクトは課内で検討中の案件で、予算がつくことはなかった。
2 担当者から入札への参加を依頼されて、徹夜で提案書を作って出したら、仕様が当社と合わない項目が多く、単に当て馬にされただけであった。
3 受注に向けてお客様と調整していたが、あとになって上司に相談したら、そのサービスを担当できる技術者がいないと言われてしまった。
こうした失敗が起きないようにするためには、見積りや提案書作成について、社内管理の仕組みが必要です。つまり、案件毎に会社の人を動かして、情報収集ができているのかどうか、提案活動を継続するのかどうか、会社組織としてチェックするのです。
承認ゲート・・この先も提案活動に自社のリソースをかけるべきか、適切な情報収集ができているか、あらかじめチェックリストを用意し、上司や会社の上層部が段階ごとに確認します(p16)
意中のベンダーは決まっている
こうした失敗の根本原因は、お客様についての情報が足りないということでしょう。その案件が会社として重要事項で実施されるのが確実なのか、それともやるかやらないか50%の確率なのか、はたまた担当者の個人的なアイデアなのか。その程度によって、力の入れ具合を変えるべきなのです。
また、提案依頼書(RFP)が出された時点で、ベンダーを選ぶというよりも、すでに意中のベンダーは決まっていて、そのベンダーを通すためのRFPになっていることが多いのです。実際、顧客はコンペを実施する前に、どのベンダーにするか40~80%の割合ですでに決定しているという。
ですから顧客が提案依頼書(RFP)の素案を作成しようとする段階で、自社に声がかかるくらいの関係を構築しておく必要があるのです。顧客とよい関係が構築できていれば、評価基準の案をこちらから提案することもできるのです。
顧客が問題意識を持ち、ベンダーにコンタクトを取り始めるタイミングで自社に声がかかるように、事前に自社の存在を認知してもらう(p11)
顧客・競合・自社で情報を整理する
では、具体的に案件の初期評価や案件の承認のために、どのような情報をチェックしているのでしょうか。顧客、競合、自社の視点で整理するとわかりやすいでしょう。
顧客の視点では、「その案件は確かに存在するのか?」「予算がついている案件か?」「意思決定に関わる人は誰なのか?」「顧客の悩みを我々は知っているか?」「評価基準はなにか?」「我々はどう見られているか?」「顧客の中に協力者がいるか?」
競合の視点では、「競合は誰か知っているか?」「競合はどんな提案をしてくるか?」「勝てる見込みがあるのか?」
自社の視点では、「それを取りにいきたいか?」「この案件のリソースが十分にあるか?」「自社で提供できる解決策はなにか?」「時間的な余裕があるか?」「案件の収益性はあるか?」
発注者の本音の評価基準をつかむことも含めて、提案を依頼される前にいかに準備段階から発注側企業の悩みをつきとめる(p1)
第三者によるレビューを行う
自社内で案件の承認がされれば、体制を作って提案書を作成していくことになります。
ここからはプロジェクトマネジメントと同じで、提出期限からさかのぼり、必要となるタスクを列挙していくこと。提案書作成に充てる時間の10%は、予期せぬタスクや突発的な問題に対処する予備時間として確保しておくこと。提案メンバーとは別に、第三者によるレビューも行うことなど、標準的なものでした。
こうした仕組みを作ることで、誰でも80点の入札対応ができるようになるのでしょう。式町さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・欧米では提案書はワード等のワープロにより作成されるのが一般的で・・一方日本ではパワーポイントを利用してビジュアルが豊富な提案書が作成されることが多い(p6)
・エクゼクティブサマリ・・背景・・目的/将来のビジョン・・ホットボタン・・解決策とベネフィット(利益)・・エビデンス(証明)・・他社との違い(p59)
・キャプチャープラン・・顧客の悩みをつかみ、よき相談相手としての立場を確保することを目指した活動(p35)
▼引用は、この本からです
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式町 久美子(著)、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
1 欧米流の提案メソッド「プロポーザルマネジメント」とは
2 案件の評価:勝てる案件かどうかを見極める
3 提案依頼が来る前に顧客の心をつかむ
4 提案依頼が来たら:提案書作成プランをつくる
5 キックオフから提出まで:提案書づくりの流れを知る
6 執筆者が必ず知っておきたい書き方テクニック
7 見やすい!伝わる!スライドデザインのつくり方
8 勝率を高めるために:提案書提出後にすべきこと
著者経歴
式町久美子(しきまち くみこ)・・・日本ヒューレット・パッカード株式会社にて「プロポーザルセンター」の立ち上げに従事。提案書作成に関するコンテンツ ノウハウを蓄積し、営業やエンジニア、コンサルタントのデスクワーク時間を削減し、価値創造の時間を捻出する。現在は日本アルカテル・ルーセント社にて、提案期間のプロセスを管理する。アメリカ発祥の提案の国際組織APMP(Association of Proposal ManagementProfessionals)にて日本人で初めて最上位プロフェッショナルの資格を取得。
外資系コンサル関係書籍
「受注を勝ち取るための 外資系「提案」の技術-日本人の知らない世界標準メソッド」式町 久美子
「外資系コンサルの30分で提案書を書く技術ースルーされない資料がサクッとまとまる」森 秀明
「外資系コンサルから学ぶロジカルシンキングと問題解決の実践講座」吉澤準特
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