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【書評】「マーケティングのための因果推論 偶然と相関の先へ進む因果思考 - マーケ戦略を再定義する分析スキルとは」漆畑 充、五百井 亮

2025/04/01公開 更新
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「マーケティングのための因果推論 偶然と相関の先へ進む因果思考 - マーケ戦略を再定義する分析スキルとは」漆畑 充、五百井 亮


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー


テレビCMの効果

フジテレビのCMが差し止められたことで、広告代理店はCMの効果についてクライアントから分析を依頼されて困っているだろうなと思いながら、手にした一冊です。


これまでのテレビCM広告は、延べ視聴率(GRP)とCM認知率の曲線で、認知率が上がるから売上が上がると説明されていました。ただ、実際には効果が測定されにくく、認知と売上にタイムラグがあることや、視聴率が高くても、実際にTVを注視していたのかわからないなど、あいまいな点が多かったのです。


さらにテレビCMやネット、雑誌など様々な媒体で同時期に告知を行えば、それぞれの効果を測定することもできないのです。最近では、CM放送前3分間と放映後3分間のサイトへのアクセス数の差を分析することで視聴者への短期的なCM効果を測定しているという。


今回のフジテレビのCMの差し止めによって、売上があまり下がらないとすれば、広告代理店はどう説明するのでしょうか。


広告により売上が必ず増加するならば、広告代理店への対価は成果報酬であっても良いはずです。そうなっていないことからも、そう簡単な話ではないということがわかります(p58)

データは因果関係は教えてくれない

この本の最初に伝えたいことは、データは相関関係を教えてくれますが、因果関係については教えてくれないということです。


例えば、広告費が大きい企業は、売上も大きいという相関があります。これは広告費を増やせば売上が上がるのではなく、単に規模の大きい企業ほど広告費も売上も大きくなるからでしょう。


また、野菜とオリーブオイルを食べる人は皮膚のしわが少ないという研究結果があります。これは野菜を食べればしわが少なくなるのではなく、高価なオリーブオイルを購入できる人は、事務職で苦労が少なくしわが少ないということでしょう。


このようにデータの相関関係に対して、その背後にある本当の因果関係や原因を見極めるのはなかなか難しいのです。


アイスクリームの売上と水難事故の件数は相関関係がある・・因果関係が存在しないにもかかわらず相関関係が見られるとき、これを疑似相関と呼びます(p23)

層別によるデータ分析

データ分析でよく行われるのは、層別分析です。切り分けることで、相関関係や因果関係が見えてくることがあるのです。


例えば、小学生は体重が増えれば足が速くなるという相関があります。これは、デブは足が早いということではなく、学年ごとの残布図を見ると、学年が上のほうが足が早い。同じ学年なら、体重が増えれば足が遅いというデータになっているのです。


さらに、変数で層別にするだけでなく、変数の閾値で分けて分析する決定木(けっていぎ)とランダムフォレストという手法もあります。いずれも切り分けることで、相関が見えてくることがあるのです。データや統計といったものから、因果関係を正しく引き出すのが難しいことがわかります。


決定木(けっていぎ)とランダムフォレスト・・説明変数の閾値に関する規則を設定する・・不純度を下げることを目的としています(p295)

調査で注意すべきこと

アンケートや調査において注意すべきは、参加者や購買ユーザーだけのデータで分析しないことです。例えば、広告が消費者に与える効果を調べるなら、、広告を見たグループと見ていないグループを比較します。薬の治験で、実際に薬を処方された人と、偽薬を処方された人を比較するのと同じです。一定の条件分けされたグループだけ調査しても、バイアスが生じて、本質は見えてこないのです。


データサイエンスとしての統計、データ分析、機械学習の分野が注目されているようです。もう少し調べてみます。漆畑さん、五百井さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・SNSのサブアカウントでメッセージなどをテストマーケティングする・・1番反応の高かったメッセージを本アカウントで発信(p81)


・シンプソンのパラドクス・・ある変数で切り出した一部のデータで集計した場合と、全体のデータで集計した結果に整合性がなくなる現象(p37)


・A/Bテスト・・サンプルサイズが小さいと信頼性に欠ける。効果量、検出力や有意水準を考慮し、現実的なサイズを決定する(p125)


▼引用は、この本からです
「マーケティングのための因果推論 偶然と相関の先へ進む因果思考 - マーケ戦略を再定義する分析スキルとは」漆畑 充、五百井 亮
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漆畑 充 (著), 五百井 亮 (著)、ソシム


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

第1章 データは重要であるが万能ではない
第2章 マーケティングにおける因果関係
第3章 手間はかかるが信頼できる「実験」によるアプローチ
第4章 目で見る因果推論
第5章 時系列で見る因果推論
第6章 比べる因果推論
第7章 その他、様々な因果推論


著者経歴

漆畑充 (うるしばた みつる)・・・1982年愛知県生まれ。株式会社Crosstab代表取締役。慶應義塾大学理工学部卒業、慶應義塾大学院理工学研究科修士課程修了。金融機関向けデータ分析業務に従事。与信及びカードローンのマーケティングに関する数理モデルを作成。その後大手ネット広告会社にてアドテクノロジーに関するデータ解析を行う。またクライアントに対してデータ分析支援及び提言/データ活用アドバイザーリー・コンサルティング業務を行う。2019年株式会社Crosstabを創業し今に至る。統計モデルの作成及び特にビジネスアウトプットを重視した分析が得意領域である。統計検定1級。


五百井亮(いおい りょう)・・・1986年兵庫県生まれ。広島県育ち。エディンバラ大学修士課程修了(情報学)。IT系コンサルティングファームを経て広告業界に移り、データ分析に従事しながら分析部門のマネージャーを務めた。 また、データ分析関連の特許取得や国内外の大学との共同研究も経験した。現在はSIerのDX推進部門のチームリーダーとして、流通、金融など様々な業界のデータ分析・活用を支援している。


統計関連書籍

統計数字を疑う~なぜ実感とズレるのか?」門倉 貴史
仕事に役立つ統計学の教え」 斎藤広達
統計学が最強の学問である」西内 啓
「マーケティングのための因果推論」漆畑 充、五百井 亮


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