「統計数字を疑う~なぜ実感とズレるのか?~」門倉 貴史

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統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか? (光文社新書)

【私の評価】★★★★☆(86点)


■テレビでお馴染みの
 エコノミスト門倉(かどくら)さんの
 統計の見方の指南書です。


 「世の中には3つの嘘がある。
 ひとつは嘘、次に大嘘。そして統計である」
 と言われるように、
 統計が必ずしも正しいとは限らない。


 その統計の数字の裏を知って、
 その現象の本質をつかむことが
 大事なのでしょう。


・労働者一人あたりの年間総労働時間は、
 1980年には2145.6時間であったが、
 2005年には1802.4時間まで縮小した・・・
 労働時間が大幅に減少したと判断するのは
 大きな間違いである。この年間総労働時間には、
 労働時間の少ない非正社員が含まれているためだ・・・
 実際、正社員のみの年間総労働時間は、
 2005年で2028時間に達しており、
 ここ数年ほとんど変化がない(p82)


■面白いのは「通説を疑う」ところ。


 例えば、ニューヨークのジュリアーニ市長が
 「割れ窓理論」を実践し、1990年代後半から
 警察官を増員し、地下鉄の落書きや無賃乗車など
 軽微な犯罪を徹底的に取り締まり、
 凶悪犯罪が激減した事例。


 著者は、警察官の増員により
 凶悪犯罪が減ったことは事実としても、
 景気がよくなったことによる影響のほうが
 大きいと指摘しています。


・米国の失業率とニューヨーク市の犯罪発生率には、
 かなり強い相関関係が見られ・・
 割れ窓理論を採用したことによって、
 犯罪は低下したといえるが、
 割れ窓理論を採用していなかったとしても、
 景気の好転によってニューヨーク市の犯罪発生率は
 かなりの程度低下していたとみられる(p64)


■2006年と10年以上前と古いのが残念ですが、
 統計というものの見方に
 警鐘を鳴らす良い本だと思いました。


 データをどう処理するかで、
 いくらでも結果は
 コントロールできるのです。


 門倉さん
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・2005年の一世帯あたりの平均貯蓄残高(全世帯)は
 1728万円で、前年比2.1%増となった・・・
 メディアン(中央値)1052万円・・・
 最も世帯数が多い階級は200万円未満・・
 全体の14.1%(p27)


・日本の平均寿命が50年間で30年も伸びた理由・・
 平均寿命が大きく伸びる一番の要因は、
 乳児死亡率が低下することである。
 乳児死亡率が高いと、出発時点で
 多くの人口を失うことになるので、
 平均寿命も短くなってしまうのだ(p45)


・2005年の平均初婚年齢は夫が29.8歳、
 妻が28.0歳である・・注意すべきことは、
 平均初婚年齢はその結婚した夫婦を
 母集団として平均年齢を算出している点だ。
 まだ結婚していない男女は、そもそも
 母集団の中に含まれていないのだ(p47)


・有効求人倍率というのは、職業安定所
 (ハローワーク)に登録された有効求人数を
 有効求職者数で割った値のこと・・・
 近年では、民間の人材派遣会社が多数設立
 されているほか、求人情報誌も次々に発刊・・
 ハローワークを利用する人は
 以前と比べて大分少なくなってきた・・・
 有効求人倍率は上振れしやすい
 性質があるといえる(p68)


・1990年の検挙率42.3%であったが、
 2001年には19.8%と二割を下回り・・・
 殺人罪に限ってみれば、検挙率は
 2005年で96.6%と100%近い水準となる・・・
 窃盗犯の検挙率が、28.6%と非常に低い値になっている・・
 分母にあたる犯罪の認知件数が大幅に増えてきた・・
 批判をかわそうと、警察がなんでもかんでも
 被害届を受理するようになったためだ(p77)


・近年では所得格差の広がりを意識する人が増えている・・・
 日本の賃金構造は、年齢が高まるにつれて同一年齢層での
 所得のバラツキが拡大する点に特徴がある・・・
 こうした賃金構造のもと、高齢化に伴って
 所得のバラツキ度合いが大きい中高年層の
 ウエイトが高まった結果、社会全体での
 所得格差が拡大してきたと考えられる(p89)


・中国製品が日本の通関輸入金額に占める割合は
 2005年時点で21.0%。GDPに輸入を加えた
 総需要に占める輸入の割は11.4%程度だから、
 総需要に占める中国製品のシェアはせいぜい
 2.4%にすぎない・・・2.4%程度のものが、
 一国全体の物価下落を先導したというのは、
 直感的にもちょっと無理がある・・
 日本におけるデフレを引き起こした主犯格は、
 需要不足であったと考えている。
 不況で誰もが財布の紐を締めたため、
 モノやサービスがさっぱり売れなくなって、
 その結果、物価が下落したのだ(p99)


・金融機関はなぜコストセンターの調査部に包括受託を出すのか。
 それは、金融機関本体がこのシンクタンクの調査部を
 「広告塔」として位置づけているからにほかならない・・・
 「わざわざ厳しい予算を割いて、調査部に包括受託を
 出しているのだから、できるだけマスコミに
 たくさん名前を出してくださいね」と考えているのだ(p141)


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■目次

第1章 「平均」に秘められた謎
第2章 通説を疑う
第3章 経済効果を疑う
第4章 もう統計にだまされない―統計のクセ、バイアスを理解する
第5章 公式統計には表れない地下経済



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