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「ホテルオークラ総料理長の美食帖」根岸 規雄

2018/12/12公開 更新
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ホテルオークラ総料理長の美食帖 (新潮新書)


【私の評価】★★★★☆(86点)


■現在本館を建て直しているホテルオークラの
 総料理長が教えるホテルオークラの
 調理場の歴史です。


 ホテルオークラは
 日本で最初にフランス人シェフを招聘し、
 日本のフランス料理をリードしてきました。


 実は、フランス人シェフの招聘は、
 ホテルオークラ内の料理人の派閥争いの中で
 オークラ流の味を統一するための
 打開策という意味もあったのです。


・開業直後のホテルオークラの調理場は、多国籍軍が集い、互いが互いを牽制し合う、まるで戦場のような様相でした・・・ホテルニューグランド系列と帝国ホテル系列は、その中にあっても当時の二大勢力でした・・・その二つの潮流の「見えない対立」は、相当根深いものがありました(p60)


■小野ムッシュから総料理長を引き継いだ著者は、
 ホテルオークラの味を守りつつ、
 変えるべきことは変えています。


 例えば、顧客と料理のデータを収集し、
 どのような料理をどれだけの量を
 作ればよいのか標準化しています。


 また、レシピについても
 コンソメでは糖度計を使うなど
 可能な限り数値化する工夫をしている。


 伝統の味を守りつつ、
 職人の感覚に頼りがちな部分を
 データで残していくということですね。


・1年以上にわたって宴会料理の原材料費のデータを集めました。料理の残り具合や品切れになる料理を調べたり、季節による食材費の変化等を子細にチェックしたのです・・宴会の趣旨は何なのか、参加者の年齢層や性別、国籍等の情報を小まめにもらうようにしたのです(p198)


■一流の人には語るべきことが
 あるのだと思いました。


 そして料理への愛、
 自分を育ててくれたオークラへの
 愛を感じました。


 根岸さん
 良い本をありがとうございました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・日常的にスイスやフランスの思想が生きています。無駄なものは使わない。材料は使い切る。小まめにコスト管理をする。その代わり、使うべきものは十分に使って最高の料理を作る。それが私のポリシーになりました(p108)


・レシピの適正化=数量化・・・料理の基本であるコンソメを引く時は、容器にその日作った担当者の名前を書かせるとともに、糖度計(ブリックス計)を使って頻繁に旨み成分の数値を計るシステムを徹底させました(p195)


・小野ムッシュの言葉・・「料理人は客よりも美味いものを食え」「美味しいものには必ず、味、形、色、輝きがある」「一生勉強、基本を大切に」(p11)


・ダブルコンソメはコンソメから作ったスープ・・お値段は、2100円。・・このスープには根強いファンが多くホテルオークラの人気メニューのひとつです(p4)


・ヌーベル・キュイジーヌ(新しいフランス料理)の潮流は、日本に滞在したシェフを通して日本料理の技術や素材の魅力が本国に持ち込まれ、その影響を強く受けて開花したものと言われています(p10)


・それまでのホテルやレストランの現場では料理人と業者の癒着は当たり前。ワイロが存在することも暗黙の了解のうちでした。ホテルオークラでは、開業時からそのような類を一切排除・・(p72)


・ローザンヌ・パレスという、スイス国内でも十指に入る一流ホテルの調理場に職を得ます・・スイスという国は、国家としてその制度をしっかりと作って、世界に通用する料理人を育てているのです。よく言われることですが、日本には和食を含めて国立の料理学校はないし、現場を巻き込んだような教育システムもありません(p93)


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根岸 規雄
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【私の評価】★★★★☆(86点)


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■目次

1 西洋の模倣はいらない
2 ロビーに静けさを、エレベータに金蒔絵を
3 これが本場の味なのか
4 運命のローストビーフ
5 ご飯でキャビアを
6 サリー・ワイル氏の恩返し
7 ソースの魔法
8 初めての三つ星の味
9 スプーンはタテかヨコか
10 レストラン・ウェディング誕生
11 お客様をお名前で呼ぶために
12 迎賓館のイワツバメ・スープ
13 皇族方への接遇
14 VIPの大好物
15 世界一のフレンチトースト
16 伝統にデータを加味して
17 「絶対の一品。」の真価


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