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「イオンを創った女 ― 評伝 小嶋千鶴子」東海友和

2018/12/11公開 更新
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イオンを創った女 ― 評伝 小嶋千鶴子

【私の評価】★★★★☆(82点)


■売上10兆円企業のイオン(ジャスコ)は
 四日市の呉服店岡田屋から始まりました。


 その岡田屋も空襲で
 店舗が全焼してしまいます。


 さらに、祖父、父、母、姉が亡くなり、
 焼け野原から22歳の千鶴子が
 代表取締役社長となったのです。


 店舗がない、売るものがない、
 インフレと新円切り替えという
 大混乱の中からの再建でした。


・空襲によって店も商品もなくなった岡田屋の再スタートは、千鶴子と弟・卓也、そして数人の番頭クラスで行った・・この年はインフレによる新円切り替えが行われたが、その前に千鶴子は会社に残っていたお金のすべてを商品に換えた・・大戦後のドイツでスーパーインフレーションが起こりお金に値打ちがなくなったことを本により学んで知っていたからである(p21)


■岡田屋が大きく発展したのは、
 社長を継承した弟 岡田卓也が
 1959年に米国の巨大スーパを視察し、
 日本の未来を予見したからでしょう。


 卓也は日本でスーパーマーケット
 巨大チェーンを作ることを
 目標に定めたのです


 1969年には、岡田屋、フタギ、シロを
 合併させ、ジャスコを設立します。


 ジャスコで人事関係の責任者として
 辣腕をふるったのが小嶋千鶴子でした。


・人事は人間を知ることから始まる。人間を知ることは人間を愛することから始まる・・一人一人について、過去どのように生きてきたかを知り、今後どのように生きていきたいかという希望を知り、今どうしているかを知り、目標をもたせることである「あしあと」(p51)


■小嶋千鶴子さんは、
 岡田卓也氏とともに
 イオングループを創ってきた
 のだと思いました。


 人事面では、保守的な人間、
 倫理感の希薄な人、動機の不純な人、
 基準の低い人は幹部にしない。


 具体的には、ギャンブル好き、酒好き、
 業者と癒着が疑われる者、上に忖度する者、
 異性好きな人は排除してきたようです。


 東海さん
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・岡田家にはいくつか家訓があり、その一つに変化に柔軟に対応して店舗立地の選定をし移動する「大黒柱に車をつけよ」というものがあり・・(p24)


・ジャスコは連邦制経営を標榜し、地域法人をつくり全国展開を目指すかたわら、専門店と海外展開にも着手した(p45)


・人事政策を推進していく場合、まず注意してほしいのは、会社の中枢部に保守的な人間をおいてはならないということである。"保守"と"経験"は混同されやすい一面を持っているが、この二つは似て非なるもので、基本的には全く別個のものである(p139)


・「ごみ箱がない部屋は汚れる。会社も同じや。ごみはごみとして処理しないと、腐ったりんごは一つ放置するとみんな腐る。これも人事の大切な仕事や」と人事担当者会議の席でよく言ったものである。事実、合併当初は懲戒事案が多かった(p78)


・トップの周りに好みの人間をおいてはならない・・お局や茶坊主が誕生するのである・・小嶋は自分の秘書を一、二年で転勤させ、他の役員秘書もそうさせた(p156)


・小嶋も岡田も個人の希望・意思を大切にする。登用試験制度、ジャスコ大学、配転異動など本人の自発的創造性を前提として行った。特に新規事業要因などは「公募」または自己申告書で決める(p188)


・若いうちに責任ある仕事につけないと手遅れになる・・(p191)


・「問題あらへんか?」小嶋が店巡回や従業員と会ったときの一声である・・・「問題ありません」と応えようものならたいへんである。ああそうかでは済まない。「(問題が)ないことはない。この社員は問題意識が低い」となる。そして、次から次と質問攻めになり、つい本音を言ってしまう(p93)


・「目標をもつこと」、「勉強すること」は彼女の口癖である。ことあるごとに「どんな本を読んでいるんや」、「将来なんになりたいの?」、「そのためにどんな勉強をしているの?」と相手かまわず声をかけ、そのための具体的なアドバイスをする(p146)


・小嶋は戦争を含めて、危機に学んだこととして、三つ挙げている。第一に情報の大切さ。第二に知ったことは実行すること。そして、第三に危機に備えて準備しておくということである(p80)


・小嶋は・・今東光氏の次の言葉で自分の人生観が変わったと言っている。「人間の半分の人が賛成して、半分の人が反対するようなことをするのが一番いい仕事だ」と(p208)


・「小嶋さん、お金がたまる方法はありますか?」と聞いたことがある。答えは「使わんことやな。それとなんと行っても"勤勉"がなによりも勝るな」(p73)


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【私の評価】★★★★☆(82点)


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■目次

第1章 小嶋千鶴子を形成したもの―その生い立ちと試練
第2章 善く生きるということ―小嶋千鶴子の人生哲学
第3章 トップと幹部に求め続けたもの―小嶋千鶴子の経営哲学
第4章 人が組織をつくる―小嶋千鶴子の人事哲学
第5章 自立・自律して生きるための処方箋
終章 いま、なぜ「小嶋千鶴子」なのか?


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