本のソムリエおすすめ本を紹介する書評サイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「なぜ日本は同じ過ちを繰り返すのか 太平洋戦争に学ぶ失敗の本質」松本 利秋

本のソムリエ 2021/12/20メルマガ登録
このエントリーをはてなブックマークに追加

「なぜ日本は同じ過ちを繰り返すのか  太平洋戦争に学ぶ失敗の本質」松本 利秋


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

 太平洋戦争は負け戦でしたので、日本軍は多くの失敗をしたことが明らかになっています。そうした失敗を個人の責任追及ではなく、なぜそのようなことになったのか、次回はどのようにすれば改善されるのか考えることは重要なことでしょう。まず、日本軍は失敗すると、反省せずに、隠してしまう傾向があったようです。


 例えば、ノモンハン事件敗戦の原因となった辻政信少佐は、東京の大本営参謀に栄転し、陸軍のガダルカナル、インパール作戦など数々の失敗の原因を作っています。また海軍では、ミッドウェーでの敗北を隠すため、海軍は生き残りの兵を隔離して、密かに前線に送り込んで抹殺しました。本来ならば、敗戦の原因を現場の経験者から聞き取り調査し、敗因の追求と対策の策定をしなかったのです。


・その後のレイテ沖海戦での、重要な根拠となる情報を隠したのは、天皇に上奏してお褒めの勅語をいただいたので、今さら間違いでしたとは言えなかった(p168)


 それ以外にも、現実を把握していない。その結果、現実と合わない戦略を策定し、戦い方より精神力重視の作戦を計画し、優秀な人を見殺しにする。そうした失敗の反省もせず、失敗した人でも昇格する。だから反省もせず、何もなかったかのように何も改善されないのです。残念なことに、次に勝つために改善するのではなく、責任追及されるのを避けるため失敗を隠して、戦い方を改善できなかったのが日本軍であったという結論なのです。


 そういえば、森友学園問題財務省の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長が近畿財務局に指示して書類を改ざんした事件がありましたが、国税庁長官に栄転しています。日本軍と似ていると感じるのは私だけでしょうか。


・軍法会議は開かれなかった・・・撤退理由をはじめ、インパール作戦失敗の要因が明らかにされることと、その責任追及が第15軍、ビルマ方面軍などの上部組織や軍中枢におよぶことを避けるためだろうとされる(p126)


 この本を読んでいて、その気持ちわかるな・・と思ってしまう自分が怖くなりました。新型コロナの患者の個別データは保健所が苦労して紙で作成・保管して、多分データとしては活用されないであろうのと似ているとも感じました。現場の人は頑張っているのですが、上にいる人が保身に走ってしまっては、何も改善することはないのです。


 松本さん、良い本をありがとうございました。


この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 


人気ブログランキングへ


この本で私が共感した名言

・モーゼを通じて神が語っている戦争とは殺戮と略奪と強姦・・・東京大空襲では、アメリカ軍は大きく円を描くように焼夷弾をばら撒き、退路を断った(p15)


・ドイツとソ連の不可侵条約・・・首相の平沼 騏一郎は、日本政府を無視したドイツのやり方に驚き呆れ、8月28日「欧洲の天地は複雑怪奇」という声明とともに内閣を総辞職した(p54)


・日本陸軍の航空部隊が第二次世界大戦で活躍できなかった最大の原因は、ノモンハンの航空戦で指導教官ともなるべき人材を、多数戦死させてしまったからだと言われている(p80)


・日本の対米宣戦布告・・・12月6日夜、メイフラワー・ホテル内の中華料理屋で、南アメリカに転勤する寺崎英成情報担当一等書記官の送別会を行っており、酒が振る舞われていた(p93)


・牟田口司令官はビルマの軽井沢と呼ばれている避暑地メイミョウで、天長節までにインパール陥落を命じ続けていたのである(p124)


・特別攻撃隊(特攻)の立案者である海軍の大西瀧治郎中将・・・壊滅状態にある海軍には航空機で敵艦に体当たりする起死回生の戦法しかないとしていた(p129)


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村へ


▼引用は、この本からです
「なぜ日本は同じ過ちを繰り返すのか  太平洋戦争に学ぶ失敗の本質」松本 利秋
松本 利秋 、SBクリエイティブ


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

はじめに――日本軍と同じ体質を抱える現代日本
序 章 戦前から露呈していた日本的組織の矛盾
第1章 世界情勢が読めない無能な国家指導者たち
第2章 開戦時の戦争指導者たちを誤らせた組織的欠陥
第3章 転換期に疎い日本的組織の不条理
第4章 現実を省みない組織の先送り・不決断体質


著者紹介

 松本利秋(あきもと としあき)・・・1947年高知県安芸郡生まれ。1971年明治大学政治経済学部政治学科卒業。国士舘大学大学院政治学研究科修士課程修了。政治学修士。国士舘大学政経学部政治学科講師。ジャーナリストとしてアメリカ、アフガニスタン、パキスタン、エジプト、カンボジア、ラオス、北方領土などの紛争地帯を取材。TV、新聞、雑誌のコメンテーター、各種企業、省庁などで講演。


メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』]
3万人が読んでいる定番書評メルマガです。
>>バックナンバー
登録無料
 

<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本 :



同じカテゴリーの書籍: