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「日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条」山本七平

2006/01/26公開 更新
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日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

著者は、太平洋戦争で日本が敗れた原因は、日本人に固有の特性によるものであり、その特性は、現在でも変わっていないとしています。そして「日本軍の強さ」とは、中小企業・零細企業的な強みだとしています。つまり、わが社には技術力がある!と社長が言っていたとしても、その技術力とは、関係会社の現場の担当者が独力で仕事を覚えて、職人として頑張っているだけだったりするわけです。


そして根本には、日本の「タテ社会」が存在しており、陸海軍は「タテ組織」であったがゆえに、陸海は不協力で、わずかな協力すら行わないほど対立していたのです。「タテ社会」であるがゆえに、上が無能でも、現場がなんとかこなしてしまうという状況では、無能な人が出世できるのが日本なのです。


実際に日本軍人は軍事知識さえあやしげで、アメリカ軍の装備や編成についてすら、何も知らなかったというのです。また、こうした状況が原因なのかもしれませんが、達成不可能な目標を掲げたりするのも日本人の特徴であるとしています。温室効果ガスの排出制限の目標設定など、その最たるものでしょう。


・「軍の計画はその意気を示すだけである」といった人があった(p293)


さらに、合議制のため、ひとつの戦略を推し進めたり、極端な方針転換ができないなど、外部から見るとまったく意図を持たずに行動しているように見えるのです。例えば、日華事変の戦略的な意図は、どこにあったのか。どこにも存在していなかったと著者は言うのです。ただ、中国側に挑発されて相手の意図どおりに反応するという単細胞なのです。


私も日本人であるかぎり、そうした傾向はあるはずです。自戒するためにも繰り返し読みたい一冊として★4つとしました。


この本で私が共感した名言

・奇妙なことに、精兵主義があれば精兵がいることになってしまい、強烈な表現の軍国主義があれば、強大な軍事力があることになってしまう。これはまことに奇妙だが、形を変えれば現在も存在する興味深い現象である。(p75)


・日本人は命を粗末にする(小松真一)(p227)


▼引用は下記の書籍からです。
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【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

目撃者の記録
バシー海峡
実数と員数
暴力と秩序
自己の絶対化と反日感情
厭戦と対立
「芸」の絶対化と量
反省
生物としての人間
思想的不徹底



著者経歴

山本 七平・・・1921年生まれ。青山学院高商学部卒。戦時中は、砲兵少尉としてフィリピン戦線を転戦。戦後、山本書店を設立し、聖書、ユダヤ系の翻訳出版に携わる。著書多数。1991年12月死去。


太平洋戦争関係書籍

「グリーンファーザーの青春譜―ファントムと呼ばれた士(サムライ)たち」杉山龍丸
「なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議」半藤一利
「日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが語った敗戦」NHKスペシャル取材班
「なぜ日本は同じ過ちを繰り返すのか 太平洋戦争に学ぶ失敗の本質」松本 利秋
「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」戸部 良一 寺本 義也 鎌田 伸一 杉之尾 孝生 村井 友秀 野中 郁次郎
「大本営参謀の情報戦記」堀 栄三
「日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条」山本七平


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