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「日本人とユダヤ人」山本 七平

2012/10/16公開 更新
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日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

日本人の勤勉さの源

日本人の特性を、ユダヤ人と比較することで明らかにしていく一冊です。日本では、南国の島のように、寝そべっていれば食い物が落ちてくるというわけにはいきません。まじめに働かなければ、飢え死にしてしまう。集団で決まった行動を規律正しく実行していかなくてはならなかったと分析しています。


その数千年におよぶ訓練が、現在の日本人の勤勉さの源であると著者は主張するのです。つまり、日本の稲作は温暖ではない気候の点で少し無理があり、必然的に緻密な計画のもとに手ぎわよくやらねばならなかったのです。中世の日本では人口の85%が農民だったので、国民のほぼ全員が、一千数百年にわたって規則正しい農業という訓練をうけつづけてきたのです。


そして、日本人は水と安全は無料だと思っています。これが日本だけに留まっていれば、 問題はありません。しかし、国際関係となると話は別です。ユダヤ人は警告します。ユダヤ人はドイツで経済を支配していました。しかし、権力や武力は持っていなかったのです。第一次世界大戦を戦ったドイツでは、「ユダヤ人はわれわれが西部戦線で死闘していた間、あいつらは銃後にあって、われわれに守られてぬくぬくともうけやがった」と言われたのです。それがアウシュビッツ強制収容所等での虐殺につながっていったのです。


著者が警告するのは、「朝鮮戦争は、日米の資本家が金儲けのためにたくらんだものである」と主張する識者がいるということです。その考え方は、ユダヤ人をアウシュヴィッツに送った考え方と同じなのです。今の中国と韓国の反日教育が、ヨーロッパのユダヤ人迫害と同じように感じられて恐ろしく感じました。国家はそのような迫害が起こっても、見て見ぬふりをしてきた歴史があるからです。


政府は、これを機会に民衆の不満をユダヤ人や華僑に向けることによって危機を乗り切ろうとし、民衆を煽動しないまでも、少なくとも見て見ぬふりで放置しておいて、ユダヤ人や華僑の犠牲によって自然に鎮静していくのを待つ、という態度に出る(p204)

日本人という特殊性

自分のことが一番わからない、と言われるように、日本人には日本人という特殊性がわからないのかもしれないと、思わせてくれる一冊です。著者の表現を借りれば、図々しさがむしろ美徳とされる外部の世界を唖然として眺めている育ちの良い人物、しかも無能でもお人好しでもなく、キャンペーン型稲作に、千数百年にわたり徹底的に訓練された特殊技能の持主が日本人であるというのです。


日本人とは優秀だが世の荒波を知らない人物であり、、外に出ると、何ごとにもすぐ緊張して固くなる人物というのは事実でしょう。やや難しい文体ですが、非常に興味深い一冊でした。山本先生、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・日本教の基本的理念は「人間」である。従って神学は存在せず人間学が存在する。だがこれが、法外の法で規定され、言外の言で語られているため、言葉で知ることが非常にむずかしい(p146)


・日本人が絶えず口にする「人間」「人間的」「人間味あふるる」といった意味の人間という言葉を基準とした一つの律法があるはずで、日本人とはこの宗教を奉ずる一宗団なのだ(p103)


▼引用は下記の書籍からです。
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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

安全と自由と水のコスト―隠れ切支丹と隠れユダヤ人
お米が羊・神が四つ足―祭司の務めが非人の仕事
クローノスの牙と首―天の時・地の利・人の和
別荘の民・ハイウェイの民―じゃがたら文と祝砲と西暦
政治天才と政治低能―ゼカリヤの夢と恩田木工
全員一致の審決は無効―サンヘドリンの規定と「法外の法」
日本教徒・ユダヤ教徒―ユーダイオスはユーダイオス
再び「日本教徒」について―(その二)日本教の体現者の生き方
さらに「日本教徒」について―(その三)是非なき関係と水くさい関係
すばらしき誤訳「蒼ざめた馬」―黙示的世界とムード的世界
処女降誕なき民―血縁の国と召命の国
しのびよる日本人への迫害―ディプロストーンと東京と名誉白人
少々、苦情を!―傷つけたのが目なら目で、歯なら歯で、つぐなえ
プールサイダー―ソロバンの民と数式の民
終りに―三つの詩



著者経歴

山本 七平(やまもと しちへい)・・・1921年生まれ。青山学院高商学部卒。戦時中は、砲兵少尉としてフィリピン戦線を転戦。戦後、山本書店を設立し、聖書、ユダヤ系の翻訳出版に携わる。著書多数。


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「日本とユダヤその友好の歴史」ベン・アミー シロニー , 河合 一充
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