「一下級将校の見た帝国陸軍」山本 七平

|

一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)

【私の評価】★★★★☆(83点)


●帝国陸軍の実態を、内部から観察し、
 その実態を分析した一冊です。


 著者によれば、帝国陸軍では、
 現実を直視しない、
 作精神論だけの虚構の世界が作られていました。


 ・結局、大本営や方面軍司令部の参謀たちが
  勝手に書いたシナリオではそうなっている
  というだけのこと、そしてそのシナリオに応じて
  師団の参謀たちは空虚な"大熱演"を演じ、
  その熱演に自ら酔って発した放言が、
  命令となり指示となって四散し、
  それによって人びとが次から次へと
  死屍になっていっただけであった(p191)


●こうした精神絶対主義は、
 帝国陸軍だけではなく、
 日本人の本質から産まれてくるものである、


 という著者の主張が、
 私の経験でもまったくその通りと思わざるを
 得ないのが恐ろしいところです。


 ・不思議なことに、精神力を否定するかに
  受け取られそうな言葉は、絶対だれも口にはしない。
  そして、軍隊外の人間には、徹底して口にしなかった。
  ここには奇妙なタブーがあった。
  そしてこれは、戦後社会にも存在する
  ある種のタブーと同根のもの・・・(p41)


●「できません」などとは言えない。
 言えば、「どうすればできるか考えろ」
 というのが、日本の日常風景ではないでしょうか。


●また、日本の組織の中には、
 学歴至上のキャリア組のようなものを作り出し、
 現場のノウハウはたたき上げの人に任せるといった
 お役所のような組織も多いと思います。


 そのような組織は、現状維持には最適ですが、
 根本的な変化が求められるときには、
 最悪の組織となるようです。


 ・「従って、調子のいいときはいいし、
  その組織の運営の仕方だけで対処できる間は
  これが一番いいんですよ。だが、組織そのものの
  中身を変えて対処しなければならない場合は、
  だめですな。結局、壊滅するまで同じ行き方を
  繰り返しながら、それ以外に方法がない
  という状況になっちまうんです・・・。」(p54)


●良い例として、「技術の日産」があります。


 カルロス・ゴーン以前の日産は、
 危機的状況にありながら、
 今までどおりの車作りしかできませんでした。


 「技術」が立派なら
 それでよかったのです。


 しかし、カルロス・ゴーンという指揮官を得て、
 変化することができたということなのでしょう。


 ・この砲は世界の最高峰、火砲が達しうる極致だというのが
  軍の常々の自慢・・・確かにその通り。
  ところが、それだけの砲弾を砲側に運ぼうとすれば、
  強大な補給能力が要請される。
  だがそれをだれも考えない。
  砲が立派ならそれでよいのである。(p171)


●だんだん暗い気持ちになってくるのですが、
 そうした日本人の気質を理解しつつ、
 自分はいかにしていくべきか、
 ということを考えさせてくれる一冊として
 ★3つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・それはいずれの時代でも同じかもしれぬ。
  渦中にいる者は不思議なほど、
  大局そのものはわからない。(p60)


 ・参謀本部は、昭和初期から南方方面占領の
  作戦計画だけは立てており、
  その際、占領軍が「現地自活」することは、
  規定の方針だったという。このこと自体が、
  いかに現地に対して無知であり、
  何一つ真剣に調査していなかったかの
  証拠といえよう。(p83)


 ・われわれは、前述のように、
 「戦争体験」も「占領統治体験」もなく、
  異民族併存社会・混血社会というものも
  知らなかったし、今も知らない。
  知らないなら「無能」なのが
  あたりまえであろう。(p96)


 ・今の今まで「絶対にやってはいけない」と
  判断を下していたそのようなことを、
  なぜ急に一転して「やれ」と命ずるのか・・・
  「戦闘機の援護なく戦艦を出撃させてはならない」
  と言いつつ、なぜ戦艦大和を出撃させたのか(p112)


一下級将校の見た帝国陸軍
山本 七平
文藝春秋 (1987/08)
売り上げランキング: 23,471
おすすめ度の平均: 4.62
5 究極的に事実を語る
5 「虚構」のメカニズム
5 現代にも通じる日本の組織の問題点

【私の評価】★★★★☆(83点)



■著者紹介・・・山本 七平

 1921年生まれ。従軍後、山本書店創立。
 「『空気』の研究」「日本人とユダヤ人」など著書多数。
 1991年12月死去。


楽天ポイントを集めている方はこちら



読んでいただきありがとうございました!

この記事が参考になった方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
人気ブログランキングに投票する
人気ブログランキングへblogrankings.png


メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」
25,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。
もちろん登録は無料!!
        配信には『まぐまぐ』を使用しております。



お気に入りに追加
本のソムリエ公式サイト発行者の日記



この続きは無料メールマガジン 「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』:1ヶ月30冊を超える情報をe-Mailで」でお読みいただけます。

無料メルマガ購読

>月別(2002年7月~)