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「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」戸部 良一 寺本 義也 鎌田 伸一 杉之尾 孝生 村井 友秀 野中 郁次郎

2004/08/24公開 更新
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失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)


【私の評価】★★★★★(92点)


要約と感想レビュー

この本は2つの楽しみ方があると思います。落胆するか、苦笑するかです。軍部がお役所になっただけで、日本の本質が変っていないことに、とてつもない悲しさを感じました。それでも、この日本で生きていかなくてはならないのですから、しっかり対策を考えましょう。


日本の会社は、戦略があいまいな場合が非常に多いのです。やはり自分で会社の戦略を作るくらいの気持ちでいきたです。当時は、個々の戦闘について「戦機まさに熟せり」、「決死任務を遂行し、聖旨に添うべし」、「天佑神助」、「神明の加護」、「能否を超越し国運を賭して断行すべし」などの抽象的かつ空文虚字の作文が行われていました。それらの言葉を具体的方法にまで詰めるという方法論がまったくないのです。


これも現代の日本の長期計画などを見ても、まさに「抽象的かつ空文虚字の作文」なのです。自分で書くならどう書くか、考えたいものです。


・いかなる軍事上の作戦においても、そこには明確な戦略ないし作戦目的が存在しなければならない。目的のあいまいな作戦は、必ず失敗する。(p188)


現代社会に「オレの顔を見て分らなかったのか」と言っていた上司がいました。当時の軍部でも、インパール作戦の軍司令官が第十五軍の牟田口司令官を訪れたとき、両者とも作戦中止を不可避と考えたにもかかわらず、「中止」を口に出さなかったという。牟田口は「私の顔色で察してもらいたかった」と言っていたというのです。忖度できない人が悪いのか、言わない人が悪いのでしょうか。


当時の日本は生産性を考えず、芸術品のような戦闘機や戦艦を作っていました。一方、アメリカは同じ種類を大量生産しています。現代社会のGEと三菱重工業を比べると、まさにこの通りです。大量生産と一品改善主義。どちらがいいとはいえませんが、今のところ会社の利益率から見て前者が強さを持っているように見えます。


この本で私が共感した名言

個人責任の不明確さは、評価をあいまいにし、評価のあいまいさは、組織学習を阻害し、論理よりも声の大きな者の突出を許容した(p237)


米国は艦型の種類を絞り同型艦をできるかぎり長期間設計変更しないで大量生産方式でつくることに力を注いだ。・・・他方、日本海軍では・・・・まさに一品生産的なつくり方である。(p214)


失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
戸部 良一 寺本 義也 鎌田 伸一 杉之尾 孝生 村井 友秀 野中 郁次郎
中央公論社
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【私の評価】★★★★★(92点)


目次

序章 日本軍の失敗から何を学ぶか
第1章 失敗の事例研究
 1 ノモンハン事件-失敗の序曲
 2 ミッドウェー作戦-海戦のターニング・ポイント
 3 ガダルカナル作戦-陸戦のターニング・ポイント
 4 インパール作戦-賭の失敗
 5 レイテ海戦-自己認識の失敗
 6 沖縄戦-終局段階での失敗
第2章 失敗の本質-戦略・組織における日本軍の失敗の分析
第3章 失敗の教訓-日本軍の失敗の本質と今日的課題



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