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「復刻・日本とナチスドイツ」末次信正

2023/07/22公開 更新
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【私の評価】★★☆☆☆(69点)


要約と感想レビュー

三国同盟の意味

なぜ日本は日独伊三国同盟を締結し、米国に宣戦布告を行ったのか考えるために、海軍大将、内相を歴任した著者の考え方を見ていきましょう。


まず、日本が英米と戦うのは、中国を植民地としている英・仏・米・ソビエトが東洋の資源・土地・人民を白人が搾取していることを是正するためであるとしています。


つまり軍事力を背景に植民地を搾取してきた旧体制国家すなわち民主主義国家群に対して、革新国家すなわち全体主義国家群の日独伊が対立し、戦争することになるということなのです。


・支那を今日のごとき白人の植民地体制に持っていっているこの支那の背後にある政治的、経済的な第三国の勢力と日本との闘いである・・・第三国とはすなわち英・仏・米であり、ソビエトである(p33)


イギリスはドイツに負ける

しかし、残念なのは多くの状況判断が定量的ではなく希望的観測に立っており、未来の私たちから見れば、完全に間違っていたということでしょう。


例えば、ソビエト・ロシアはドイツと日本に挟まれて、結局、三国同盟側に付くより他に仕方のないと断言しています。さらに根本的な間違いとしては、ドイツにイギリスが負けることは間違いないこと考えていることです。ドイツのイギリスに勝てないのではないか、という情報がもたらせているはずなのに、この間違いは致命的です。


また、アメリカがいくらその大きな海軍力で太平洋に進出したとしても、「自ら好んで墓穴に投ずるもの」としています。どこまで調べて、アメリカに勝てると考えていたのでしょうか。さらには、アメリカからの輸入に頼っていた石油、屑鉄などの不足を指摘しつつ、いずれも遠からず解決するし、日本国内の在庫でなんとかなるとしています。


海軍大将、大臣クラスがこのような状況判断では、戦争に勝てるはずがないと思いました。まことに情けない思いです。末次さん、残念な本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・日本が欧州に出兵して直接に独伊を援助することができぬと同じく、独伊もまた東亜に兵を動かして日本を援助するなどということは、現在できない状態にある(p22)


・アメリカがいくら頑張ってみたところで、その海軍力を提げて東亜に乗り込んで来て、それで東亜の事態を解決しようと考えたならば、それは自ら好んで墓穴に投ずるもの(p25)


・ソビエトという奴は、火事場泥棒みたいなものであって、まことに品の悪い国である・・ドイツと戦うとか、日本と戦うという、すいう大それた陰謀は、今日の実力をもってしてはできない国柄にある(p55)


▼引用は、この本からです


【私の評価】★★☆☆☆(69点)


目次

日独伊三国同盟
日本とナチスドイツ
東亜安定と日本の決意



著者経歴

末次信正 (すえつぐ のぶまさ)・・・1880(明治13)年~1944(昭和19)年。山口県出身。海軍軍人、政治家。広島一中を経て、海軍兵学校、海軍大学校を卒業。第一潜水戦隊司令官、海軍大学教官、教育局長などを歴任。1928年(昭和3)海軍軍令部次長となり、1930年のロンドン海軍軍縮条約に反対し、艦隊派を形成。その後第二艦隊司令長官、連合艦隊司令長官を務め1934年大将に昇進。その後も横須賀鎮守府(よこすかちんじゅふ)司令長官、軍事参議官を歴任し、退役後の1937年内閣参議、第一次近衛文麿(このえふみまろ)内閣の内相となり、1940年には大政翼賛会中央協力会議議長に就任した。1944年、坊の岬沖海戦で戦死。


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