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「水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬」 山本 一生

2021/07/24公開 更新
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「水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬」 山本 一生


【私の評価】★★☆☆☆(68点)


要約と感想レビュー

水からガソリンという実証実験

太平洋戦争中、「水からガソリン」という実証実験を海軍に行わせた詐欺師、本多維富(ほんだこれとみ)という男がいたという。山本五十六中将が実証実験の実施を認め、実験を推進したのが「特攻の生みの親」大西瀧治郎大佐です。こうした詐欺師はどこにでもいるようで、アメリカでも似たような詐欺事件があったのです。


本多の手法は、水が入った瓶を並べて、そのうち一つをガソリンが入った瓶と入れ替えること。手品師がいるように、相手にわからないようにモノをすり替えることは可能です。手品のように水がガソリンに変わった!とやれば、騙される人も出てくるのです。


立会人たちが18枚のスケッチと実験成功の薬瓶を照合したところ、スケッチの中に成功した薬瓶は見当たらず、逆に昨日のスケッチの中から一本の薬瓶が失われていることがわかった(p191)

アメリカの石油禁輸と在米資産凍結

輸入する油の8割をアメリカに頼る日本は、中国の利権を拡大する中でアメリカから石油の禁輸や在米資産を凍結されて、アメリカと戦争することになってしまいました。日本は資源の供給国であるアメリカと戦争をしてしまったので、ガソリンを自給する必要があったのです。


日本では、松根油のタールに水素を添加すれば航空燃料として使えるので、戦争末期の昭和20年6月には、一日あたり50万人以上を動員して松から2300キロリットルの航空ガソリンの生産が計画されていたというのです。これでは戦争に勝てるわけがありませんね。山本さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・大正8年から二年間のアメリカ駐在は、石油と空軍力という、まさに時代の最先端を山本五十六に吹き込んだ(p31)


・1916年春・・・ドイツ人発明家ルイス・アンリッチは、水をガソリンに変える物質の製造に成功したので、ニューヨーク州ロングアイランドの自宅で公開実験を行うと発表する(p131)


・昭和19年3月、ヒトラーは、生ゴム、タングステンなど合計217トンに及ぶ戦略物資への見返りとして、Me262製ジェット機とMe263製ロケット機の日本でのライセンス生産を承認した(p223)


▼引用は、この本からです
「水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬」 山本 一生


【私の評価】★★☆☆☆(68点)


目次

序章 一通の報告書
第一章 山本五十六と石油
第二章「藁から真綿」事件
第三章 カツクマ・ヒガシと東勝熊
第四章 詐欺師から「科学の人」へ
第五章 支那事変という名の追い風
第六章 富士山麓油田の怪
第七章 昭和十三年暮れ、海軍省次官室
第八章 蒲田の「水からガソリン」工場
第九章 燃料局柳原少将の嘆き
第十章 実験成功! 次官に報告!
第十一章 宴の終わり
第十二章 立会人たちの太平洋戦争
終 章 いまも生き続ける「水からガソリン」


著者経歴

山本一生(やまもと いっしょう)・・・1948年生まれ。東京大学文学部国史学科卒。石油精製会社勤務の傍ら競馬の歴史や血統に関するエッセイを発表。1997年にフリーになると近代史に転じ、恩師である伊藤隆東大名誉教授のもとで『有馬頼寧日記』の編集に加わり、その後は「日記読み」として戦間期の日記をもとに時代を読み解く作業を行っている。


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