「日本経済 復活の書 2040年、世界一になる未来を予言する」鈴木 貴博

【私の評価】★★☆☆☆（67点）

要約と感想レビュー

　経営コンサルタントが日本の復活にむけた提案10項目を説明した一冊です。いきなり移民比率を23％まで増加させれば、日本の総人口は1億4000万人に増えます！という主張からスタート。多数の移民を受け入れてきた欧米の課題を羅列しつつも、そうした問題を乗り越えていきましょうとまとめるところに不安を感じました。

　そのまま読み進めると、外国人技能実習制度を悪用して能力の低い外国人労働者にろくに教育もせず軽作業をさせている企業を排除するべきと主張しながら、リニア新幹線は中国からの大量の移民労働者に作ってもらう！と提案しています。同じ書籍の中で、ロジックが破綻しているように見える点が心配になりました。

・ドイツのメルケル前首相は・・「キリスト教を受け入れない人々はここにいるべきではない」と発言しています（ｐ43）

　メタバースという仮想空間経済の可能性に言及しつつ、自動運転自動車の可能性に話は飛んでいきます。エネルギー危機の現在は仮想空間のメタバースが有利ですが、エネルギー問題を解決できれば人が移動する経済（モビリティ経済）が有利となると主張しています。

　そしてエネルギー問題を解決する提案が、原子力発電所再稼働と新設計画です。確かにフランスのようにほとんど原子力発電の国もありますし、地球温暖化問題に対しても受けがよいのです。原子力で作った電気で、自動運転の自動車に乗って通勤し、旅行はリニア新幹線で四国に日帰り旅行をするというイメージが浮かびました。

・四国新幹線をリニアで開通させ博多までつなげる・・東京とも2時間圏内でつながります（ｐ71）

　アイデアの質はともかくとして、新しいアイデアを出せ！と言われたら、こうしたアイデアでも出すべきなのでしょう。アイデア出しのブレインストーミングの結果をまとめた一冊と理解しました。地球温暖化の議論のところを読むと、地球温暖化について文献調査している気配がない点が不安になりました。もう少しこの著者は観察してみたいと思います。

　コロナ後、ウクライナ戦争後がどうなるのか、もう少し調べつつ考えてみたいと思います。鈴木さん、良い本をありがとうございました。

この本で私が共感した名言

・任天堂の「あつまれどうぶつの森」は日本で一番有名なメタバースです（ｐ86）

・19世紀のイギリスで施行された「赤旗法」・・自動車は事故を起こして危険・・ロンドン市内では時速3キロを上限速度・・自動車の前には危険を知らせる先導人に赤い旗を持たせて歩かせて（ｐ140）

・自動ブレーキがない車は今買っても2028年以降には法律で公道を走れなくします・・安いからという理由で危険な自動ブレーキ無装備の車を買う人は減るでしょう（ｐ155）

・中国では国内に2000万台以上のAIカメラが設置され、人々を監視・・中国天網・・映画「ターミネーター」シリーズに登場する人類監視システムのスカイネットと同じ名称（ｐ218）

・組織のトップに立つ人の研究・・体の大きい人、声が大きい人、簡潔にわかりやすくものを言う人、ボスザル的な人物（ｐ278）

・学ぶべきはリクルートの役員育成・幹部編成ノウハウ（ｐ288）

▼引用は、この本からです

鈴木 貴博、PHP研究所

【私の評価】★★☆☆☆（67点）

目次

第１章　日本が人口１億4000万人を目指す未来
第２章　リニア中央新幹線を博多まで延伸する
第３章　メタバース大国か、それともモビリティ大国か
第４章　人工知能の育児環境を整える
第５章　自動運転車の事故をどう裁く？
第６章　400兆円永久債発行計画
第７章　脱化石燃料国家を完成するには？
第８章　IＴ監視社会を幸せな未来に
第９章　ベーシックインカム全面導入
第10章　頭のイカれたリーダーを選ぶ

著者経歴

　鈴木 貴博（すずき たかひろ）・・・営戦略コンサルタント。東京大学工学部卒。ボストンコンサルティンググループ等を経て2003年に独立。数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。近年は、未来予測とイノベーション戦略の専門家として、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンライン、東洋経済オンライン、現代ビジネスなどに連載を持ち、月間100万PVを超える注目を集めている。「未来は予測でき、同時に変えることができる」が信条。

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