「アンダー・プロトコル: 政財暴一体で600億円稼いだ男の錬金哲学」 猫組長(菅原潮)
2019/09/30公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
猫組長は、元山口組系組長で株式、原油取引、金融取引をシノギとする経済ヤクザであったという。20代にバブル崩壊で数億円の借金を負い、借金のあった山口組に拾われる形で暴力団の世界に入ったらしい。山口組系組員としてインサイダー取引や新株引受けに携わり、確実に儲かる見通しがないのは投機でしかない、とうそぶいています。
山口組系五菱会では現金が貯まると、「割引金融債権」に交換し、それを外資系銀行で換金。その後、クレディ・スイス香港などに送金されるのです。その資金を受けたクレディ・スイス香港の日本人行員が、今度はスイスの銀行などに直接あるいは、別のタックスヘブンを経由して送金していたという。
日本でのインサイダー取引や仕手が難しくなると、ヤクザは海外でのシノギに向かいます。猫組長は原油取引に注目し、原油を安く手に入れるために中東のイエメンまで足を運びます。
サウジアラビアが支援しているイエメンの部族長から原油を入手し、市場で原油を売却したという。著者はこうした原油取引で600億円を稼いでいたのに、知らないうちにテロ資金を扱ったということでアメリカに銀行ごと口座を凍結されてしまったのです。
・なぜサウジアラビアにある油田の採掘と販売権を、イエメンの部族長が持っているのか・・反サウジ・反イエメン政府勢力に抵抗している部族がイエメン国内にもあって、その構造は当時も今も変わらない。「敵の敵は味方」の言葉通り、サウジアラビアはこうした部族を援助していたのだ(p141)
猫組長は、北朝鮮が日本に核兵器を撃ち込むはずがない、と断言しています。なぜなら北朝鮮は金が欲しいのだから、暴力団のように核兵器をちらつかせて日本を乗っ取るか、日本の富を奪うことを考えるだろうということです。そもそも2004年に北朝鮮から日本人拉致被害者が帰国したときに、日本政府に対し北朝鮮が求めていたのは「金」だったという。
元インテリヤクザだけあって、その話題に合理性と説得力があります。猫組長さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・北朝鮮が、日本にミサイルを撃ち込むはずがない。資源もないこの日本の財産は、高等教育を受けた大量の労働力と、超高度に整備された電気、ガス、交通インフラなどがある国富に満ち溢れた国土だ・・・無傷でこの黄金の国土の入手を考える方が合理的である(p179)
・中国人が投機と海外への資産逃避の抜け道として利用し始めたのが「仮想通貨」だった。人民元で仮想通貨を買い、それを日本の市場で売って円を入手するという一種の地下銀行の構図。大量の中国人の資金が流れ込んだことでビットコインの相場が高騰し、投機対象としてブームになったのだ(p20)
・世界における日本のナショナルバリューは圧倒的なのだ・・対外純資産残高は349兆1120億円となる・・メディアの言う「沈没直前列島」は、驚くべきことに実は26年連続で世界一の債権国である(p25)
・現在、世界に王室は27しかない。その中で一番古い君主こそが日本の天皇である・・・アメリカ大統領が、自分より格上の儀礼としてホタイトタイ(白い蝶ネクタイ)で空港まで迎える人物は、ローマ法王とイギリス女王、そして日本の天皇であることを知らない日本人は多い(p27)
・「人」を「脈」にするために最も重要なことは誰が相手でもへりくだらないということだと私は考えている・・人間は間違える生き物だ。その時にへりくだって間違いを指摘しないよりは、素直に間違いを指摘することが重要なのだ(p106)
▼引用は下記の書籍からです。
徳間書店
売り上げランキング: 11,023
【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
1 バブル崩壊の連鎖―1991~ビットコイン
2 「K」の世界へ
3 闇の世界と黒い水
4 アンダー・プロトコル
著者経歴
猫組長(菅原潮)・・・元山口組系組長。評論家。1964年生まれ。兵庫県神戸市出身。大学中退後、不動産会社に入社し、その後、投資顧問会社へ移籍。バブルの波に乗って順調に稼ぐも、バブル崩壊で大きな借金を抱える。この時、債権者の1人であった山口組系組長を頼ったことでヤクザ人生が始まり、インサイダー取引などを経験。その後、石油取引を通じて国際金融の知識とスキルを得るが、アメリカに資金を凍結され引退。現在は評論、執筆活動などを行う。
暴力団関連書籍
「暴力団」溝口 敦
「憚(はばか)りながら」後藤 忠政
「修羅の自叙伝―「ヤクザ」を生きる」井の上 孝彦
「アンダー・プロトコル: 政財暴一体で600億円稼いだ男の錬金哲学」 猫組長(菅原潮)
この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
コメントする