【私の評価】★★★★☆(84点)
■タイトル通りの本書ですが、
いきなりドラッグのビッグスリーが、
アルコール、タバコ、カフェイン
と言われてびっくりしました。
アルコールを含むワイン、蒸留酒、
タバコ、カフェインを含むコーヒー、
お茶、コカ・コーラなどが
ドラッグだというのです。
そういえば、アメリカ独立のきっかけは
イギリスがアメリカに高額の課税を
していたことでした。
イギリスがアメリカに対しお茶の税金を
上げることに反発、ボストン茶会事件が起き、
最後には独立戦争となるのです。
・1885年にはアルコール、タバコ、そして茶に対する税金がイギリス政府の総収入の半分に迫っていた。ドラッグへの課税は近代国家の財政基盤であり、植民地を経営するヨーロッパの帝国にとって主要な収入源だった(p9)
■この本を読んでいると、ヨーロッパの
帝国主義と植民地支配は
産業革命による技術革新だけでなく、
商品としてのドラッグの存在が
大きかったことがわかります。
中国にはアヘンを売った。
インディアンには酒を売った。
本国にはお茶を売った。
植民地で、ドラッグであるお茶、
コーヒー、タバコ、アヘンを作り、
売り捌いたのです。
そうしたドラッグ貿易に
課税することで国家は軍隊を作り、
世界を植民地として支配したのです。
・ドラッグは金を意味し、金は権力を意味した。タバコはアメリカ革命の資金を提供し、ヨーロッパ王朝間の紛争の費用の一部となった。砂糖とラムは太平洋をまたぐ奴隷制度を維持した。アヘンはアジアにおける帝国主義の金づるになった。アルコールと毛皮の取引は大資本家と工業への投資資金を作り出した。コーヒーブームは鉄道建設を促進し、非常に多数の貧乏な移民をブラジルへ渡らせた(p239)
■現代ではソフトなドラッグである
アルコール、たばこ、カフェインが
生き延びているのだと理解しました。
最後に、ドラッグはギャンブルと似ていて
禁止すると密輸、密売という地下市場が
形成され課税できません。
経験論から言えば、たばこやカジノのように
合法化して課税し、拡大をコントロール
するというのが合理的のように感じました。
コートライトさん、
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・アヘンは文明人の病気治療にたいへん適していた。不安、退屈、慢性の疲労や疼痛、不眠症、狭い部屋で泣き叫ぶ赤ん坊、そしてとりわけ下痢症状を伴う病気によく効く(p38)
・アヘンは貧者のドラッグだった・・貧しい人々が少ない食料で満足できるようになる。しかも、アヘンはアルコール飲料や他の娯楽より安上りだった。(p40)
・中国へアヘンを売った・・もっと正確に言えば、密輸した・・民間商社も繁盛する・・ジャーディン・マセソン社・・アヘン貿易を牛耳っていたのはイギリス商人だが、アメリカ人も・・デラノ財閥の創始者でフランクリン・デラノ・ローズヴェルトの祖父・・は、やはりアメリカのトップ企業だったラッセル社の社長として成功した(p42)
・アヘンをはじめとして賭け事や娼婦買いなど独身男性の非行に対する絶え間ない出費が、効果的に彼を労働のランニングマシンから降ろさず、借金のために働き続けさせた(p188)
・1909年・・売春宿・・大多数の女性はみずから酒飲みになった・・さもなくばドラッグ使用者になった。一年経つと女性は・・「ヤクで気が抜けて、ヒモがついて、もっとヤク」をやっているか、さもなくば正気になって抜け出す計画を立てるかだった(p203)
・大学生は自分たちで、アンフェタミンを使っていればコーヒーが要らないことを発見した・・スポーツ選手、トラック運転手、そして競走馬の調教師が手を出す。アメリカ軍当局も・・第二次世界大戦中に爆撃機の乗員やジャングルでの戦闘兵に支給した(p104)
・「ソフト」なドラッグ・・アメリカ大陸からのチョコレートと効き目の弱い種類のタバコ、そして東洋からのコーヒーと茶・・こういうドラッグは新たに台頭した資本主義の秩序によく適合した・・商人には利益を、君主には税金をもたらしたのである(p79)
・ヘロインが、タバコやアルコールやアスピリンと同じようにセールスマンや流通業者を持つ大量販売される商品だという根本的な事実・・多くの若者がヘロインのようなドラッグを試すことができるのは、それが標準的な価格で販売され、世界各国の大都市にある何百という販売拠点で手に入るからである(p49)
・税は高すぎる場合も、低すぎる場合もある。後者は使用をはびこらせる・・税率が高くなりすぎると密造と密売の蔓延に直面する(p227)
・マリファナ、コカイン、ヘロインなどのドラッグを合法的に課税して成人を対象に販売することは、理論的にはブラックマーケットに付随する悪事を根絶すると同時に、国家の支援する予防や治療の計画に使う収入を提供する(p234)
・1911年、ワイリーはコカコーラを訴え、カフェインは子ども向け商品に無断で入っている危険な中毒物質だと断じた。法定で延々と争った挙げ句、会社側はカフェインの含有量を半分に減らす(p29)
・ドラッグは他のドラッグの効果を打ち消すために使われることも多い・・三共は、カフェインとビタミンを合わせた強壮剤の人気商品「リゲイン」を日本酒を飲みすぎた人に売り込んでいる(p144)
・イギリス人とフランス人は、それが毛皮を手に入れるいちばん確実な方法だったために、ラムとブランデーをインディアンに提供した・・水で薄めたラムの利益は400%におよぶこともあった。さらにうまいことには、交渉の最中に酒を飲むインディアンは愚かな取り引きをして、最高の毛皮をもう少しのラムと交換する(p206)
・17世紀に起きたタバコによるヨーロッパとアジアの征服・・・ときには暴力的な反対を受けながら、タバコがそれを乗り切った・・ロシアでは喫煙者はむち打ちと追放・・中国ではさらし首である(p15)
・ピョートル大帝は1697年にロシアにおけるタバコの公開販売と消費を認めた勅令で、その理由を要約している。密輸が横行している・・そしてそれはすべて課税されていないのである(p215)
・アルコールの大量生産とドラッグ作物および砂糖用作物の栽培がなければ、ヨーロッパ人があれほど早く世界中に住み着き、あれほど完全に支配下に収めることはなかっただろう。こうしたサイコアクティブ製品によってヨーロッパ人は遠征の費用を支払い、現地の抵抗勢力を買収して汚職させたり、労働者や兵士をなだめたり、プランテーションに奴隷を供給したりしたのだ(p238)
・ドラッグの依存しやすさの評価・・・最高点はアルコールの21ポイントだった・・ヘロイン16ポイント、コカイン14ポイント、マリファナ8ポイント・・最悪のドラッグ、アルコールはもっとも手に入りやすいものの一つなのだ(p270)
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【私の評価】★★★★☆(84点)
■目次
第1部 意識に作用する物質
第2部 ドラッグと貿易
第3部 ドラッグと権力