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「暴力団」溝口 敦

2017/08/25公開 更新
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暴力団 (新潮新書)


【私の評価】★★★☆☆(73点)


要約と感想レビュー

暴力団や右翼はどうやって暮らしているんだろう?と手にした一冊です。警察によると、暴力団の伝統的資金獲得犯罪として、覚醒剤、恐喝、賭博、ノミ行為の四つを挙げています。


具体的には、山口組本家には六人の舎弟、約80人の若衆がおり、さらに直系組長たちは自分の組(二次団体)でも同じように若衆や舎弟から月20万~30万円ぐらいの月会費を集め、本部に納めているという。


シノギについては、ヤミ金なら貸付額が最高でも10万円という小口の金額で、しかも利息は貸し付け時点で前払いさせます。その利息は、「トイチ」(10日で一割)、「トサン」(10日で三割)や「トゴ」(10日で五割)という超高い利率で貸しているという。


また、暴力団の共生者として総会屋、暴力団関係企業、事件屋、仕手筋、社会運動等標榜ゴロがあるらしい。稲川会や酒梅組は博徒系、極東会はテキ屋系だという。また、右翼は社会運動等標榜ゴロに分類されるのでしょう。


・社会運動標榜ゴロはエセ同和、後に出てくる政治活動標榜ゴロは街宣右翼をイメージしてもらえば分かりやすいかもしれません(p37)


一方、半グレ集団は暴力団ではありません。半グレ集団とは、振り込め詐欺やヤミ金、貧困ビジネスを手掛け、また解体工事や産廃の運搬業などだけでなく、クラブの雇われ社長をやったり、芸能プロダクションや出会い系サイトを営んだりもしているという。


暴力団は「暴力団対策法」で厳しく規制されていますが、半グレ集団は取り締まれません。そのため堂々と振り込め詐欺、ヤミ金、貧困ビジネスに打ち込むことができるわけです。半グレ集団は、現代的な暴力団、マフィアといえるのでしょう。


・東京圏には暴走族グループの「ブラックエンペラー」や「宮前愚連隊」、「鬼面党」などがあったのですが、それらが1975年ごろに「関東連合」を結成しました・・関東連合は解散式を行っていますから、今、六本木にいるのは関東連合のOBであって、現役は一人もいないといわれています(p29)


暴力団と芸能人の交際については、双方にメリットもあり続いているという。たとえば、ディナーショーのチケットが売れ残ったとしても、暴力団にお願いすれば短時間で捌けるという。暴力団はつき合いのある会社社長や商店主にチケットを押し込んで儲けるわけです。そういう意味で暴力団とは、法律スレスレでお金を稼いでいる人達だとわかりました。


なお、1990年に著者が山口組五代目組長・渡辺義則氏についての本を出そうとしたとき、直系組長の一人である後藤忠政氏から電話で、「出してくれるな、初版分の印税は出すから」と警告されたのに、著者は断り、その三ヶ月後、背中を組員に刺されています。溝口さんには、また刺されない程度に書いていただきたいと思います。溝口さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・暴力団は額に汗する労働を嫌い、軽蔑している人たちです。彼らの悪口に「市場のマークが入った帽子でもかぶり、大根でも売りやがれ」という言葉があります(p180)


・暴力団の処分で一番重いのが「絶縁」です。「絶縁」になると、「永久に組に復帰でいない」というのが原則です。一方、「破門」は一定の年月が過ぎると、組に戻れる可能性があります(p42)


・北朝鮮は外貨稼ぎのために国家として覚醒剤やヘロインの製造と密輸出を行い、薬物製造工場が三つも北朝鮮内に確認されています(p43)


・日本の末端価格は、「一パケ」(ビニールの小袋、覚醒剤が約0.3グラム入っている)が一万~二万と言われています(p44)


・組員になると、女性は敬遠しそうなものですが、逆に「格好よい」「貢いでくれる」などと、女性にもてます(p67)


・香港の三合会のメンバーは、日本に限らず外国に出かけて仕事をすることが多い・・言葉でマイナスになる仕事は絶対にしない・・盗みや偽造カードの使用なら、どこの国でも言葉を使わなくてすむ・・必ず地下の知り合いで日本に詳しい人間と組みます(p110)


・昔から弘道会には「十仁会」という秘密部隊があると言われていました・・ヒットマンになる、特定の繁華街などでイラン人や中国人など外国人不良グループの動向を徹底マークする、外の広域団体の動向を探る・・など、ある程度、専門化した役割分担があるようです(p146)


▼引用は、この本からです
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【私の評価】★★★☆☆(73点)


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目次

第一章 暴力団とは何か?
第二章 どのように稼いでいるか?
第三章 人間関係がどうなっているか?
第四章 海外マフィアとどちらが怖いか?
第五章 警察とのつながりは?
第六章 代替勢力「半グレ集団」とは?
第七章 出会ったらどうしたらよいか?



著者経歴

溝口敦(みぞぐち あつし)・・・1942(昭和17)年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。ノンフィクション作家。ジャーナリスト。『食肉の帝王』で、2003年に第二十五回講談社ノンフィクション賞を受賞


暴力団関連書籍

「暴力団」溝口 敦
「憚(はばか)りながら」後藤 忠政
「修羅の自叙伝―「ヤクザ」を生きる」井の上 孝彦
「アンダー・プロトコル: 政財暴一体で600億円稼いだ男の錬金哲学」 猫組長(菅原潮)


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