「異文化理解力―相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養」エリン・メイヤー
2017/08/24公開 更新

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【私の評価】★★★★★(94点)
要約と感想レビュー
地域による違い
海外での仕事が増えている今、その国の文化に合わせた仕事のやり方が求められています。著者は、異文化マネジメントの専門家であり、多くの外資系企業に異文化理解教育を行っています。東芝に買収されたウェスチングハウスでの異文化理解力教育を担当していた時の経験が、主な内容となっています。
まず、大きな基本として、西欧人のほどんどはメッセージをぼかしません、西欧人は短く、簡潔で、率直なメッセージを好むのです。一方、アジアではメッセージをぼかすことのほうが効果的なことが多いのです。
例えば、日本人の参加者たちに、なぜ日本人対立を避けようとするのか聞いたときには、日本人から聖徳太子の十七条の憲法の「和を以て貴しと為す」から説明を受けたという。中国、韓国、日本などの儒教的な社会では、チーム一人ひとりの面子を保ちながら調和を維持することが重要になるのです。だから、全員の前でその人の間違いを指摘することは、その人の面子を失わせることになり、敵を作ることになりかねないのです。
・日本人は中国人がよくも考えもせず、性急な決断をし、混乱を増長させると不満を言います。このアジアの二カ国は一緒に働くのが難しいだけでなく、日本人はあらゆる点で中国人というよりドイツ人的です(p298)
欧米人の違い
驚くのは、日本と同じくらい欧米諸国の間でも差が大きいということです。イギリス人はほのめかし、オランダ人はそれを理解できないという。例えば、イギリス人が「失礼ながら・・」と発言する意味は、「あなたは間違っている」ですが、オランダ人は「彼は私に賛成している」と受け取るという。
アメリカ人は褒めてから叱るが、フランス人は激しく批判し、控えめに褒めるらしい。つまりアメリカ人はネガティブなメッセージを ポジティブなメッセージで包み込む一方で、フランス人は情熱的に批判し控えめに褒めるように訓練されているのです。フランスとアメリカは正反対なのです。
・オランダ人のマネジャーはいかなるときも正直で率直なメッセージを伝える方法を身につけている。
時間の感覚の違い
ドイツ人は、ナイジェリアでは物事がつねに変わっていくことを理解できないという。つまり、ナイジェリアでは三か月先のスケジュールを作ろうとしないのです。なぜなら、この先何が変わるかわからないからです。私もカザフスタンでロシア人と発電所を作る仕事をしていて、1年間のスケジュールを作ろうと提案しましたが、すぐに変わるのに1年間のスケジュールを作るのは意味がないと拒否されたのを思い出しました。
多くの具体例をジョークのように楽しめる一冊でした。日本人の間でも差があるのですから、国が違えばここまで違うのか!とびっくりします。メイヤーさん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・イギリス人の多くは、まったくの無表情で辛辣だったり皮肉の聞いたジョークを言うことを好んでいる・・アメリカ人がジョークを言うとき、特にプロの場合、はっきりと言動や動作で「これはジョークです」と示すことが多い(p65)
・デンマークでは、社長は社員と同格で、清掃員よりちょっと上という認識です(p147)
・アメリカやスイスといった国々では「仕事は仕事」であり、中国やブラジルのような国々では「仕事は人」なのである(p211)
英治出版 (2015-08-22)
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【私の評価】★★★★★(94点)
目次
1 空気に耳を澄ます ―― 異文化間のコミュニケーション
2 様々な礼節のかたち ―― 勤務評価とネガティブ・フィードバック
3 「なぜ」VS「どうやって」 ―― 多文化世界における説得の技術
4 敬意はどれくらい必要? ―― リーダーシップ、階層、パワー
5 大文字の決断か小文字の決断か ―― 誰が、どうやって決断する?
6 頭か心か ―― 二種類の信頼とその構築法
7 ナイフではなく針を ―― 生産的に見解の相違を伝える
8 遅いってどれくらい? ―― スケジューリングと各文化の時間に対する認識
著者経歴
エリン・メイヤー(Erin Meyer)・・・フランスとシンガポールに拠点を置くビジネススクール、INSEAD客員教授。異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学を専門とする。世界銀行、国連、エクソンモービル、ミシュランなどで講演やセミナーを行っている。
異文化関係書籍
「異文化理解力 ビジネスパーソン必須の教養」エリン・メイヤー
「異文化理解の問題地図」千葉 祐大
「「世界で戦える人材」の条件」渥美育子
「武器になるグローバル力 外国人と働くときに知っておくべき51の指針」岡田 兵吾
「フランスの悪魔に学んだ3秒仕事術」本谷 浩一郎
「日本人が海外で最高の仕事をする方法―スキルよりも大切なもの」糸木 公廣
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