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「元大統領顧問が導く「自立国家」日本の創り方」北野 幸伯

2023/12/11公開 更新
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「元大統領顧問が導く「自立国家」日本の創り方」北野 幸伯


【私の評価】★★★★★(95点)


要約と感想レビュー

中国問題、少子化問題、食糧問題

北野さんの本は2005年から読ませていただいていますが、北野さんはリーマンショックの前からアメリカ・ドルの没落を予測していました。イラク湾岸戦争も、イラン・ロシアとアメリカとの対立も、ドル防衛という視点で見るとわかりやすい対立構造なのです。また、尖閣問題から日中対立が激化することも予測し、2010年の漁船衝突事件、2012年の尖閣諸島国有化問題へと現実は予測どおり進んでいったのです。


本書は2008年に発行された「隷属国家 日本の岐路―今度は中国の天領になるのか?」を書き直したものですが、内容はまったく色褪せていません。日本の最重要課題は、台湾・尖閣・沖縄を狙う中国とどう向き合うのかということと、少子化問題、そして食糧問題なのです。


日本には現在、2つの道があります。「真の自立国家になるか」それとも「中国の天領になるか」(p34)

アメリカの中国包囲網

まず、中国の軍事費は2018年時点で、日本の5倍であり、日本一国で中国に対抗するのは不可能です。中国からすればアメリカの中国包囲網に対し、シーレーンと資源を確保するために第一列島線内の台湾・尖閣諸島、できれば沖縄を支配下に置きたいわけです。2013年頃の中国の戦略は、歴史・領土問題で中国、韓国、ロシア、アメリカと連携し、日本を孤立させることでした。


それに対し、安倍首相は日米、日ロ、日韓関係を良好に保ち、中国の戦略を無力化させることに成功したのです。しかし、ロシアのウクライナ侵攻により中露分断工作はストップしてしまいました。安倍元首相も暗殺されてしまいましたが、日本は中国の世界支配に反対する国との連携を強くして仲間を増やしていくことが、生き残る道なのでしょう。


中ロを分断する・・・中国の最新兵器は全てロシアからの輸入なのです。そして、アメリカが中東を抑えれば、中国は陸続きのロシアから石油・ガスを買うしか道がなくなる(p112)

少子化対策

少子化対策については、北野さんは現状の職業訓練という名のもとに3K(きつい、きたない、危険)の単純労働者を移民として受け入れることに反対しています。過去に3K移民を受け入れた国では、安い給料で働く外国人が大量に移民することで失業者が増加し、移民に対する差別意識を持つ人が増えて、反移民の民族主義が強まっているのです。一方で移民はマフィア化して地下に潜り、治安は悪化していことになります。


だから北野さんは移民を受け入れるなら、お金持ちで、頭の良い人だけを移民として受け入れることを提案しています。


また、ロシアで成功している少子化対策として子ども2人産んだら90万円がもらえるという制度を紹介しています。ロシアでは80万円くらいで小さい家が買えるので、実際に出生率が上昇したというのです。日本で小さい家が買えるくらいの支援として3人子供を産んだ家庭には住宅購入資金のローンを2000万円まで国が肩代わりすれば、分割払いの将来の負担部分だけの支援で少子化対策効果がでるはずなのです。


3K移民以外はどんどん入れてください(p61)

日本の食糧問題

最後の日本の課題として、食糧問題を提起しています。世界と日本の農業人口は今後も減少を続けることが予想されており、食糧供給は長期的に減っていくのです。日本の食糧自給率は、定義にもよりますが4割とも6割ともいわれていますので、日本の食糧が足りなくなる可能性が高いのです。


そもそも日本で食糧受給率が100%を超えているのは主食である米です。ところが米の需要が低迷していることで、米を作らないようにする政策を行っているくらいです。実は、日本政府は意図的に米の需要が増えないようにしているのです。それは、1954年に制定された学校給食法です。この中で、政府がパン食を推奨しており、わざわざ米を食べない国民を育成して「自給率を下げる」道を選んで、今もその道を歩き続けているのです。


北野さんの提案は、「完全米飯給食」です。子どもたちに米飯が当たり前の生活をしてもらい大人になっても米飯を食べてもらうのです。


「完全米飯給食」は、米の需要を永遠に増やしつづける秘策なのです(p140)

日本国政府は慈善団体

北野さんは、日本政府が、自国の安全を守る自衛隊を大切にしていないこと。自国の米を食べない国民を育てていること。自国に都合の悪い自虐的歴史を教えていること。日本企業の外国投資をサポートし、アメリカの国債買い、反日国家の中国や北朝鮮を経済支援していることを指摘し、日本の国益とは正反対のことをしていると指摘しています。


日本政府はこれまで適当にやっていても、国民が一生懸命働いてお金を稼いで、国の安全もアメリカ軍が駐留していることで、なんとかやっていくことができた。だから、日本国政府は慈善団体として、他国のために仕事をしていたとしても問題がなかったというのが北野さんの理解なのです。ただ、北野さんは日本政府がこのまま慈善団体のままだと中国の天領、植民地になってしまう可能性のあることを警告しています。北野さんの警告が現実化しないことを願うのみです。北野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・アジア共同体は50年早い・・アジア全体から貧民が殺到し、日本人労働者は失業する(p95)


・全ての国民が、自分の財政状況に責任を持つ・・お金に支配されないために、蓄財に励め(p183)


・日本は世界にいる金持ちをターゲットに商売をしていけばいい(p221)


▼引用は、この本からです
「元大統領顧問が導く「自立国家」日本の創り方」北野 幸伯
北野 幸伯 、ダイレクト出版株式会社


【私の評価】★★★★★(95点)


目次

序章
第1章 移民労働者受け入れに反対!
第2章 平和ボケ外交音痴日本の行く末
第3章 食料危機とエネルギー危機をどう乗り切る?
第4章 世界一教育熱心な国日本が失った"教育"
第5章 脱アメリカ信仰!日本は世界から愛されている



著者経歴

北野 幸伯(きたの よしのり)・・・国際関係アナリスト。モスクワ国際関係大学卒業・政治学修士。「卒業生の半分は外交官、半分はKGBに」と言われるモスクワ国際関係大学を日本人で初めて卒業。その後、カルムイキヤ共和国の大統領顧問に就任。さらに、プーチン大統領の側近と共に会社を立ち上げる。ロシア経済の復活、9.11発生前に、中東戦争の勃発、イラク戦争中にアメリカは次にイランをターゲットにすると予測、ドル体制崩壊とリーマンショックの勃発、リーマンショック前に米中対決時代の到来を予測してきた。


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