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「パワハラ上司を科学する」津野 香奈美

2023/12/12公開 更新
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「パワハラ上司を科学する」津野 香奈美


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

パワハラしやすい人とは

パワハラといえば、宝塚歌劇団員が自殺した事件が報道されていますが、学術的にはパワハラはどう見られているのでしょうか。欧米での性格検査では、協調性・正直さ・謙虚さが低く、高い外交性を持っている人と、パワハラ行為との間に有意な関連が見られたという。つまり、目的のためには手段を選ばない、他者への共感力や良心が異常に欠如し、人の手柄を横取りしたりするなどの邪悪な性格特性を持った人がパワハラしやすいというのです。


また、専制型上司の上に放任型上司がいる職場が、最も危ないという。部下を潰してでも目的を達成する人を評価している組織は、無言でパワハラに承認を与えているようなものなのです。日本ではよい結果さえ出していれば、仕事は見て覚えろ!とか、皆の前で罵倒したりすることが、厳しい指導で部下を育成していると評価されるケースがあるので、宝塚歌劇団のような事件はなくならないのかもしれません。


他者に対する思いやりが著しく低く、他者を尊重する認識が欠落している人は、・・パワハラ行為を行いやすい(p74)

パワハラ事例を分析すると

パワハラとは、上司が部下に対してでも、部下が上司に対してでも優越的な地位にある人が攻撃しやすい人を傷つけることです。加害者に悪意があるかどうかは、関係ありません。多くの加害者のほとんどは、「遊びだった」というような証言をするように、最初は些細な「からかい」からスタートすることが多いという。ある事件では、加害者側の教員は、障害のある児童のまねをした際、被害教員が笑わなかったことに腹を立てていじめはじめたという。


よく、「部下が生意気な口をきいた」と主張する人がいますが、こうした人の中には不安定な自尊心があると著者は解説します。こうしたことを口にする人は、「部下が◯◯と主張した」という事実と生意気と感じたという感情を混同して、生意気な口をきいた部下が悪いと自分の感情的な決めつけに気づいていないのです。


逆に安定的な自尊心がある人なら、「部下が◯◯と主張した」という事実があり、自分の感情として不快になった。ただ、部下の主張はもっともなものだ、と事実と感情を分けて考えることができるはずなのです。犬に吠えられて、「犬が生意気に吠えた」と犬をいじめないように、自分と同じ立ち位置にいる部下に自尊心が脅威を感じているということなのでしょう。


目立つ人や優秀な人は、和を乱す者として嫌われます(p170)

部下に厳しい指導をする場合には

そもそも日本の職場で当たり前に行われている、他の同僚の分担の仕事をするよう求められる、指導・助言なしで働くよう言われる、締め切りを守るよう強いられることでさえ、外国ではパワハラと思われることがあるという。


特に同質性の高い日本では、団結力が強く、異質なものを排除する傾向が強くなります。中には能力が高い部下が配属されたときに、自分の地位が脅かされることを恐れて、部下の些細なミスを攻撃して、自尊心を回復しようとするかわいそうな人がいるもの事実なのでしょう。


部下に厳しい指導をする場合には、周りに人がいない状態で、できている点を先に伝え、人格否定をせずに、何をどうしてほしいのか伝えることを著者は推奨しています。これができれば、パワハラなどなくなるのでしょう。津野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・上司と部下の仲が良すぎたり、職場の雰囲気がくだけすぎたりしている職場では、パワハラが起こりやすい(p13)


・女性が受けやすいパワハラである「無視する・仲間外れにする・相手が嫌がっているのにプライベートを根堀り葉掘り聞く」(p38)


・いじめている社員に注意するにしても「まあまあ、みんなで仲良くやってください」くらいで終わってしまい、被害者が会社を辞めるまでその行為が続いてしまう(p38)


▼引用は、この本からです
「パワハラ上司を科学する」津野 香奈美
津野 香奈美、筑摩書房


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

第1章 パワハラとは何か
第2章 誰がパワハラをしているのか
第3章 パワハラを引き起こす上司の三大リーダーシップ形態
第4章 なぜパワハラは起こるのか――パワハラが発生するメカニズム
第5章 パワハラ上司にならないためにはどうすればいいのか



著者経歴

津野香奈美(つの かなみ)・・・東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。博士(医学)・博士(保健学)・公衆衛生修士。和歌山県立医科大学助教・講師、ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を経て、現在神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科准教授。これまで100本以上の原著・総説論文を発表。2014年日本行動医学会奨励賞、2017年日本産業衛生学会若手論文賞、2021年国際行動医学会Early Career Award受賞。令和4年度 厚生労働省「カスタマーハラスメント・就活ハラスメント等防止対策強化事業」検討委員


パワハラ関係書籍

「パワハラ上司を科学する」津野 香奈美
「リーダーの「やってはいけない」」吉田幸弘
「職場のクセモノと付き合う技術」横山 信治


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