「中世への旅 騎士と城」ハインリヒ・プレティヒャ
2023/12/13公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
騎士道がもっとも栄えたのは12世紀
ヨーロッパの中世とは5世紀から15世紀、西ローマ帝国滅亡(476年)から東ローマ帝国滅亡(1453年)のことです。中世には、著者のドイツ語圏だけでも、一万の城があったという。城を守る騎士は武装したうえで、主君の城や領地を管理していました。二十歳までは騎士見習いとして主君に仕え、二十歳になると正式の騎士に叙任されたという。
騎士のイメージといえば、鉄板の鎧と兜をつけ、槍や刀を持って馬で突進している姿を思い浮かべますが、これは中世最後の頃のもので、騎士道が外形だけを残して内容を伴わなくなった時代のものです。実際に騎士道がもっとも栄えたのは、12世紀、神聖ローマ帝国のシュタウフェン朝の頃で、当時の騎士は鎖帷子で鉄帽、三角盾、剣、槍で武装していたのです。
刀礼を同時に受けた者たちは「盾仲間」といって、一生変わらぬ友情を結ぶのであった(p19)
中世の城は騎士が守る
ヨーロッパの中世の城は日本の城のように、敵の攻撃から守るため、壁を周囲にめぐらし、井戸を掘り、食糧と武器を蓄えていました。ドイツのハールブルク城の井戸は深さが128メートルもあり、ホーホオーステルヴィツ城では、道は城の周りを三周もしているという。城の中にはベルクフリートと呼ばれる円塔があり、その入口は地上5メートルくらいのところに設置され、敵が攻めてきたら、梯子をはずして塔の中で抵抗できるようになっているのです。
当時の城の窓には雨戸しかありませんでした。ガラスが普通に使われるようになったのは、十二世紀も末のことで、普通の城では、窓からのすきま風を防ぐには雨戸を閉ざすほかなかったのです。また、城の中で明かりはろうそくや松明を使っていました。時計もなく、砂時計が使われるようになったのは十三世紀になってからなのです。
シャンデリア・・ろうそくをその一本一本に刺して並べるのである(p58)
騎士は十字軍遠征に参加
中世の騎士道が最も栄えた頃、十字軍のエルサレムへの遠征が行われています。教皇が国内で戦争をするのではなく、異教徒の手から聖地を解放する戦争へ騎士たちをけしかけたのです。十字軍によってエルサレムは二度キリスト教徒のものとなりましたが、いずれもイスラム教徒によって奪回されています。
こうして見ると、中世というのは暗黒時代と呼ばれるように暴力と権力の闘争時代であったように感じます。ヨーロッパの歴史とは戦争の歴史なのです。プレティヒャさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・肉のなかでは牛肉があまり好まれず、豚肉が、しかも脂肪の多いところが愛好されていた。マトンが喜ばれたことは言うまでもない・・雉も白鳥も、鷺(さぎ)、野鴨、千鳥、こうのとり、鴉(からす)、さんかのごい、かんむりひばり等も御馳走のなかに入っていた(p66)
・ロールパン(ゼンメル)、8の字型の固いパン(プレーツェル)、丸くて平たい渦巻きパン(フラーデン)、揚げパン(クラップフェン)等があった(p70)
・騎士たちが脂したたる口でぶどう酒を飲む・・食事のときに水を飲む風習はほとんどなく・・ぶどう酒が生であることはまれで、薬味や蜜を混ぜることが多かった(p70)
・婦人には常日ごろから森で薬草を集め、軟膏、膏薬、飲み薬を作るという重い任務が課せられていた。当時一般に行われていた放血でさえ、婦人の仕事であった(p104)
【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
歴史を恐れるな
騎馬兵、騎士、盗賊―騎士道と騎士
一万の城砦―城とその構造
快適なのは夏だけ―住居と設備
ぶどう酒にも胡椒を入れて―食物と飲物
地獄窓と嘴靴―中世のファッション狂い
時計の針に追いたてられることもなく―労働と娯楽
厳格な作法教師―遊びと教育
勇士とミンネ―騎士文学について
五十キロ近くも引きずって―装備と武器
危険な娯楽―トゥルネイと決闘
「雄羊」と「猫」―攻城戦
牛に引かせた旗車―戦争の有様
おおいなる目的のために―十字軍遠征
騎士にして修道士―三大騎士団について
著者経歴
ハインリヒ・プレティヒャ(Heinrich Pleticha)・・・1924年生。歴史学専攻。高校教育の現場にあって、マティアス・グリューネヴァルト高等学校(ドイツ・ヴュルツブルク)校長等を歴任
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