「中国に勝つ 日本の大戦略 プーチン流現実主義が日本を救う」北野 幸伯
2017/12/08公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(97点)
要約と感想レビュー
予言的中
リーマンショック前からアメリカの没落を予言。そして尖閣問題前から中国の増長を予言。さらにはロシア・アメリカの闘いを予言し、的中させた北野さんの一冊です。なぜ北野さんが複雑な国際情勢を的確に的中できるのかといえば、歴史に学び、現実を直視しているからでしょう。この本では、中国の自滅を予言しています。ただし、この本に書いてある日本の大戦略を実行すればの話です。
すでに日中戦争は始まっている、と北野さんは断言します。これまで中国・韓国は、「日本は軍国主義化している!」「日本は歴史を歪曲しようとしてる!」と日本を非難してきました。私は、中国と韓国はなんでそんな非難するの?と疑問に思っていました。そのなぞは、解けました。中国は、日本と領土問題を持つロシア・韓国と共同で日本を叩く戦略を実行中なのです。中国の著名な専門家は、中国と同様に日本と領土問題を抱えるロシアと韓国に対し、反日統一共同戦線を組むことを呼びかけているのです。
それも大量の資金とスタッフを使い、アメリカさえも仲間に取り込んで中国は尖閣・沖縄を取りにきているのです。著者がこの本で伝えたいことは、この逆をやれば日本はなんとか耐えることができるだろうということです。つまり、「反中統一共同戦線」を作るのです。
中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくり、尖閣のみならず沖縄を奪う。日米を分裂させ、アメリカを「反日統一共同戦線」に入れる(p15)
中国の脅威
日本は世界から孤立して、太平洋戦争で敗戦しました。今度もまた孤立するのか、それとも戦略的にロシア・韓国と和解し、中国の戦略を無力化するのか。これまで安倍首相は、北野さんの大戦略に沿った形で外交を行ってきました。しかし、まだ安心はできません。中国は膨大な資金を使って、マスコミ、政治家、事業家を使って工作を継続中だからです。
例えば、「集団的自衛権」について、反対する知識人や記者や活動家がたくさんいます。その理由は、「戦争に巻き込まれて日本人が死ぬから」。戦前、日英同盟を破棄したことが太平洋戦争敗戦の一つの原因といわれているように、日米同盟を破棄させることで日本を弱体させようという勢力がいるのです。
同じように中国寄りとして有名なヘンリー・キッシンジャーは、その著書『キッシンジャー回想録 中国』の中で「太平洋共同体」を提唱しています。「太平洋共同体」とは、要するに、アメリカと中国で仲良く世界を支配しましょうということです。「ハワイから東をアメリカが、西を中国が管理しましょう」と中国高官がアメリカに提案したこととリンクしているのです。
「チャイナ・ロビー」のパワーは、「イスラエル・ロビー」を超え、世界一強力になっていると見て間違いないでしょう。1993年の「クリントン・クーデター」につづき、「トランプ・クーデター」を起こすことに成功したのです(p200)
なぜ韓国を許すのか
北野さんは、日本は「善悪」で政策を判断しがちであると、指摘しています。しかし、国際政治では「勝負(かちまけ)」で判断したほうがいいのです。例えば、戦前の日本は「アメリカに満洲の利権を譲れるか!」と「善悪論」で考えて日本は敗戦することになりました。もし「勝敗論」で考えていたとしたら、南下するロシアを抑えるため満洲をアメリカと協同統治するという選択肢もあったのです。
同じように「韓国の竹島侵略や慰安婦問題は許せない」というのは「善悪」論です。確かに韓国は許せないが、最大の脅威である中国に勝つために、韓国を許し仲間にしようというのが「勝負」論なのです。
まさに歴史に学ぶ一冊といえるでしょう。★5つとします。なお、私も読んでいる北野さんのメルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」にぜひ登録ください!北野さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・日本は、中国に「動く口実」を与える徴発を謹むべきです・・トランプ・アメリカが、「中国と覇権を争う」と決意したとしても、「日本を駒に使って中国と戦わせよう!」となるかもしれない(p269)
・「歴史は80年ごとに繰り返す」という説があります・・2008年9月にはじまった世界的経済危機は、約80年前(正確には79年前)に起こった「世界恐慌」を思い出させました・・・2017年は、日中戦争がはじまってからちょうど80年目にあたります(p315)
▼引用は下記の書籍からです。
扶桑社 (2017-12-02)
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【私の評価】★★★★★(97点)
目次
第1章 「反日統一共同戦線戦略」が生まれた背景
第2章 「反日統一共同戦線戦略」を無力化させた安倍総理
第3章 日本人の知らない米中関係の真実
第4章 中国に勝つ方法
第5章 中国の近未来
著者経歴
北野 幸伯(きたの よしのり)・・・1970年生まれ。国際アナリスト。ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学卒業後、プーチン大統領の元ブレーンとともに日露ビジネスコンサルティング会社IMT設立。1999年からメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」を発行。イラク戦争、北朝鮮情勢、次はイランなど次々と予測を的中させる。モスクワに28年滞在。2018年、日本に帰国
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