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「日本のものづくりはもう勝てないのか!?: "技術大国"としての歴史と将来への展望」浅川基男

2022/01/23公開 更新
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「日本のものづくりはもう勝てないのか!?:


【私の評価】★★☆☆☆(65点)


要約と感想レビュー

 住友金属工業から早稲田大学工学部教授となった著者が、日本の鉄の歴史を振り返る一冊となっています。日本の鉄鋼業のはじまりは、ペリー来航で西欧の鉄鋼業の発展を知ってからです。当時の日本は大砲を作ったことがなく、オランダの書籍を見ながら反射炉を作り、大砲を鋳造したのです。


 面白いエピソードは、幕末の日米条約の批准書の交換のための遣米使節団に小栗忠順(おぐり ただまさ)が、アメリカのワシントン海軍造船所から持ち帰った一本のネジでしょう。当時の日本は、薩長と幕府が対立し、攘夷を主張する浪士が日本刀を振り回していましたが、小さなネジ一本作れない日本に攘夷で勝てるはずがなかったのです。米国は南北戦争直前で、映画『風と共に去りぬ』が描いた時代の話です。


 小栗忠順は幕府の中で欧米に追いつくために多くの改善を提案します。しかし、言い方が悪かったのか、幕府の役を何度も罷免され、また再登用されています。普通の幕府の役人には、危機感を持った小栗の直言は、大勢の人の前で恥をかかされているとしか思えなかったのでしょう。


 明治時代後は、旧幕府の遺産を引き継ぎ、海外から多くの外国人教師を招聘し、技術の習得に努めたのは、日本人らしいところでしょう。戦後は公職追放で年寄りが引退し、若い世代が日本の産業を牽引しました。アメリカの技術協力もあり、日本のものづくりが発展したということなのでしょう。


 現在の日本の鉄鋼業界は、中国、韓国に親切に技術を教えた結果、技術を盗まれ、衰退しようとしています。また、アメリカの鉄鋼業が衰退したように日本の鉄鋼業も衰退しているのは、優秀な人材がものづくりから金融や商社などのソフト・情報産業にシフトし、鉄鋼業が設備投資しなくなったことが背景にあるという。考えさせられることです。


 浅川さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・我々理系出身者は「黙っていても良いモノは社会に理解される」との認識がある。これは甘い。自分の仕事を真っ当に評価されるように積極的に社会に、マスコミに発信する努力が必要である(p12)


・筆者の大学では、4年間で600万円近くの授業料が学生諸君から納付されている・・・一人の学生から一コマ(90分)につき7000円を頂いて講義していることになる(p63)


・上海の宝山製鉄所建設の技術協力を新日鐵が担うことになった・・・資金協力要請、世界最先端の設備、技術の要求と特許や知財権の無視、度重なる契約破棄・工期の遅延、国内問題を糊塗するための責任転嫁など、数えきれない苦難を重ねた(p143)


▼引用は、この本からです
「日本のものづくりはもう勝てないのか!?:


【私の評価】★★☆☆☆(65点)


目次

第I部 技術産業育成に馳せた先人たち 
 1.佐賀藩主・鍋島直正の思い 
 2.幕閣小栗上野介忠順の思い 
 3.大隈重信の思い 
 4.幕末から明治にかけての教育への思い
第II部 戦後の復興期を牽引した産業界の思い
第III部 日本のものづくりはもう勝てないのか 
 1.日本およびものづくり産業はどうなる? 
 2.これからどうなる日本 
 3.ものづくり再興戦略


著者経歴

 浅川基男(あさかわ もとお)・・・1943年生まれ。1968年早稲田大学理工学研究科機械工学卒。住友金属工業入社。1996年、早稲田大学理工学部機械工学科教授。2014年早稲田大学退職、名誉教授


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