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「神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡」ジュリアン ジェインズ

本のソムリエ 2021/11/06メルマガ登録
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「神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡」ジュリアン ジェインズ


【私の評価】★★☆☆☆(66点)


要約と感想レビュー

 この本のテーマは、人間の「意識」とな何なのか?ということです。この世の中の生物は自律的に活動しています。科学的に「自意識」はどこから作られるのか、いつから「自意識」というものを持っているのか、ということは、動物に聞くことはできないので、興味深いテーマではあります。一般に、神経が一定の複雑性に達すると、意識が生まれるという考え方があり、脳の回路が意識を作っているという研究が進められています。


 ところが著者の考え方は、言語が生まれた後に意識が生まれたというのです。つまり、紀元前3000年頃に言語が生まれたのと同じ時期に「意識」が生まれたというのです。では言語や意識が生まれる前後は、どう違うのでしょうか。著者は神話や伝説に神が登場するように、言語や意識が生まれる前には、人は神々の言葉、今でいえば幻覚を聞いて動いていたのではないかというのが著者の仮説なのです。


 私に言わせれば、なんでそうなるの?!言葉がないから、心という空間がないという結論が、私にはよくわからないのです。この本では言葉のない時代、心のない時代を「二分心」と読んでいます。何が2つかといえば、一つは自分の「人間」という部分と、「神」の声のような部分に分かれていたとしています。人間の心には、現在の幻覚と似た「神」と呼ばれる部分があるのではないか、というのが著者の推測です。


・途方もない仮説は、遠い昔、人間の心は、命令を下す「神」と呼ばれる部分と、それに従う「人間」と呼ばれる部分に二分されていた(p109)


 現在の幻覚と、古代の神話の神とを結びつけてしまうのは、いかがなものでしょうか。ここまで幻覚や神にこだわるのは、著者自身が幻覚を覚えることがあるのではないでしょうか。何か理由がなければ、これだけ幻覚というか、神の言葉に執着するのがよくわからないのです。いくら左脳が人間の側で、右脳が神の側としても、イメージを司る右脳が神の言葉のような幻覚を発していたというのは、極端すぎる推論でしょう。


 よく一つのテーマについて、これだけ長文を書けるのに、感心してしまいました。大学の先生なのですが、何をおしえていたのでしょうか。ジェインズさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・脳全体とつながった短いニューロンの無秩序な回路網・・・が、あらゆる意識の問題に対する、長い間求められてきた答えである可能性は残っている(p29)


・何かを理解するというのは、より馴染みのあるものに言い換え、ある比喩にたどり着くことだ(p69)


・意識が比喩から生まれた世界のモデルである・・・もし、意識が元とに基づいて創造されたアナログ世界であり・・行動の世界と対応しているとしよう・・・意識が言語の後に生まれた・・・(p87)


・神々は、今日では幻覚と呼ばれるものだ・・・彼らは何をしているのか自覚のない、き高い自動人形だったのだ(p99)


・幻覚があるということは、神経組織に何か先天的なものがその根底にあるに違いない(p117)


・人間の側に必要な機能は左(優位)半球にあり、神々の側に必要な機能は右半球により顕著に現れていると考えられる(p147)


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▼引用は、この本からです
「神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡」ジュリアン ジェインズ


【私の評価】★★☆☆☆(66点)



目次

序章 意識の問題
第一部 人間の心
 第1章 意識についての意識
 第2章 意識
 第3章 『イーリアス』の心
 第4章 <二分心>
 第5章 二つの部分から成る脳
 第6章 文明の起源
第二部 歴史の証言
 第1章 神、墓、偶像
 第2章 文字を持つ「二分心」の神政政治
 第3章 意識のもと
 第4章 メソポタミアにおける心の変化
 第5章 ギリシアの知的意識
 第6章 ハビルの道徳意識
第三部 <二分心>の名残り
 第1章 失われた権威を求めて
 第2章 預言者と憑依
 第3章 詩と音楽
 第4章 催眠
 第5章 統合失調症
 第6章 科学という占い


著者紹介

 ジュリアン・ジェインズ(Julian Jaynes)・・・プリンストン大学心理学教授。1920年生まれ。ハーヴァード大学を経てマクギル大学で学士、イェール大学の心理学で修士・博士号取得。1966年から1990年までプリンストン大学心理学で教鞭をとる。研究者としては、初期は鳥の刷り込みやネコ科の婚姻行動などのエソロジーに集中していたが、やがて人間の意識にかかわる研究へとシフト。1976年に『神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡』を刊行。米国内外の多数の大学で哲学や英語学、考古学といった学部で客員講師を歴任。国際的に著名な科学雑誌「Bahavioral and Brain Sciences」の共同編集者、「Journal of Mind and Behavior」誌の編集委員も務めた。1997年11月21日脳溢血で亡くなった。


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