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「世界は贈与でできている―資本主義の「すきま」を埋める倫理学 」近内悠太

2021/11/07公開 更新
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世界は贈与でできている―資本主義の「すきま」を埋める倫理学


【私の評価】★★☆☆☆(66点)


要約と感想レビュー

 お金で買えないものを考察した一冊です。この本では、お金で買えないものの移動を、贈与と定義しています。いわゆる相続の贈与とは違うので注意しましょう。だから話題は、無償の愛から世の中のしがらみ、礼儀まで飛んでいきます。


 つまり、お金によらない行為、市場経済のシステムから外れた取引を「贈与」と定義しているのです。日本では義理と人情、「しがらみ」というものがありますが、それも贈与。ギブ&テイクなどと表現されますが、「情けは人のためならず」と言われるように、お金がなくても私たちは貸し借りをしているのです。その点、義理人情、情けをできるだけ排除して、定量化しようとしてきたのが、資本主義経済なのでしょう。


 ちょっと面白いと思ったのは、もうやめようかと思っていた年賀状が届いたときの気持ち悪さを紹介していることです。「返信の年賀状を送ると、来年も来てしまう」と思いつつ、「今年も送らないのも失礼か」と悩むのです。こうした義理人情の気持ち悪さを哲学者らしく書くと、このような本になってしまうのですね。


 話が飛びすぎてテーマがよくわからなくなってしまうのですが、お金でない世界をイメージしているようです。引用が多いので、著者の主張が拡散しているように感じました。近内さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・なぜ自分が祝われる以上に、誰かを祝うことが自身の喜びになるのか?(p25)


・偽善・・・彼らの合言葉は「お前のことを思って言っているんだよ」という呪いの言葉です(p44)


・誰にも迷惑をかけない社会とは、定義上、自分の存在が誰からも必要とされなくない社会です(p55)


・「なんで勉強しないの!誰が塾の月謝を払ってると思ってるの?」・・・「あなたは私がいなければ生きていけない。だから私に従いなさい」というメタメッセージを発している(p91)


▼引用は、この本からです
世界は贈与でできている―資本主義の「すきま」を埋める倫理学


【私の評価】★★☆☆☆(66点)


目次

第1章 What Money Cant Buy――「お金で買えないもの」の正体
第2章 ギブ&テイクの限界点
第3章 贈与が「呪い」になるとき
第4章 サンタクロースの正体
第5章 僕らは言語ゲームを生きている
第6章 「常識を疑え」を疑え
第7章 世界と出会い直すための「逸脱的思考」
第8章 アンサング・ヒーローが支える日常
第9章 贈与のメッセンジャー



著者経歴

 近内悠太(ちかうち ゆうた)・・・1985年神奈川県生まれ。教育者。哲学研究者。慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、日本大学大学院文学研究科修士課程修了。専門はウィトゲンシュタイン哲学。リベラルアーツを主軸にした統合型学習塾「知窓学舎」講師。教養と哲学を教育の現場から立ち上げ、学問分野を越境する「知のマッシュアップ」を実践している。


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