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「トヨタ生産方式の原点―かんばん方式の生みの親が「現場力」を語る」大野耐一

2025/01/31公開 更新
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「トヨタ生産方式の原点―かんばん方式の生みの親が「現場力」を語る」大野耐一


【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー


ジャストインタイムとは

トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一さんの一冊です。この本でわかるのは、トヨタ自動車もムダの多い普通の会社であったということです。組立工場に配属された大野氏が見たのは、倉庫に部品は一杯あるけれども、ハンドルがない、エンジンがないという惨状でした。


月の17、18日頃にならないと部品がそろわず、後半の10日間で一カ月分の組み立てを行っていたというのです。前の工程が勝手に部品を作るので、車を組み立てる部品がなかなか揃わなかったのです。


ジャストインタイムで部品があれば、それだけで3倍の生産性を上げることができるくらい無管理状態だったのです。


従来のやり方は、つくったところが後工程へ運ぶというのが原則なんだね・・・それを逆にして、欲しいところが前工程に取りに行けば、これはジャストインタイム(p107)

とにかくやってみる

そして、大野氏がいくら改善を提案しても、現場の人は簡単にはやってくれません。普通の会社と同じだったのです。


例えば、部品の検査工程で、たくさん並べて検査をしている人に、一本ずつ検査(一個流し)して箱の中へ納めたほうが、楽で能率がいいんだということをいくら言っても「いや、このほうが早いんです」と、聞かなかったという。それでも試しに一個流しをさせてみると、残業してやっていた検査作業が、定時に終わるようになったというのです。


これが現場の監督者になると、さらにやらせるのが難しかったのです。だから大野氏は、監督者が納得できんというときは、とにかくやってみて、やっぱりこっちのほうがいいんじゃないかと納得するまで実験したという。だから大野氏は自分の部下に、朝に改善を指示して、昼頃に行ってその結果を確認し、結果が悪ければまたすぐに改善するということを繰り返していたというのです。


その時代、そんな突拍子もないことを言ってみたって作業者はついてこん・・本当なら怖くて許可せんはずなんだけれども、これは豊田英二会長、亡くなった齋藤尚一前相談役の二人が、とにかく思いきりやらせてくれた(p106)

原価低減は錯覚が多い

大野氏はみかけの改善ではなく、本当に会社が儲かる改善を目指していました。


例えば、大量に量産すると安く作れるというのは錯覚だと指摘しています。大量生産する場合、仮に残業を増やすと工賃の割増し分だけ高くなります。また、機械を一段購入すると、機械の稼働率を高く維持できないと投資を回収できなくなるのです。


また、工数低減ということで例えば、50人でやっていた作業を40人でやれることにしたとしましょう。しかし日本では不要になった10人をレイオフすることはできません。最終的に10人採用を減らすときにやっと会社が儲かるのです。


百人おらんとできないなんて言って泣いてきたら10人くらいやって知らん顔しておれ。すると人事も90人分の原価低減になる(p165)

トヨタ生産方式とは

トヨタ生産方式とは、売れるものを、売れるだけ、売れるときに、安くつくるという考え方です。そのために、つくり過ぎないことを追求して、ロットを小さくし、後工程が必要なぶんだけを加工していくのです。


現場の抵抗の中で、孤軍奮闘する大野氏のような人物は、普通の会社では潰されるケースが多いのですが、経営層が全面的に支援したことがトヨタ生産方式を生んだのだと感じました。大野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・前任者が50人でやっておったところを、おれがあそこの課長になったら40人でやったろうという気持ちでおるかどうか(p49)


・先に新鋭機入れちゃうと、改善能力のない連中だと、結局、機械に使われちゃうだけなんだ(p145)


・標準がないと良し悪しが判断できないので、だから標準というのをつくらにゃいかん。まずその標準を持っていって、やりにくかったらどんどん意見出して改善をやればいいだけだ(p169)


・ある会社で「在庫を減らしました」と私に言うので、中をよく見ると、いわゆる材料が減っただけだった。こんなに材料が減ったら、あとで生産に困るんじゃないか・・みんなそれが仕掛り品になって増えておる・・素材、原材料、こういうものは在庫の対象にしてはいかん(p60)


▼引用は、この本からです
「トヨタ生産方式の原点―かんばん方式の生みの親が「現場力」を語る」大野耐一
大野 耐一、日本能率協会マネジメントセンター


【私の評価】★★★★★(93点)


目次

第1章 トヨタの現場力
第2章 限量経営の本質
第3章 自働化とジャスト・イン・タイム
第4章 減量生産と合理化


著者紹介

大野 耐一(おおの たいいち)・・・1912年中国大連生まれ。昭和7年名古屋高等工業学校卒業後豊田紡績入社。その後、トヨタ自動車工業に転籍。同社副社長、相談役、豊田合成相談役、豊田紡績会長などを歴任。1990年逝去。


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