「トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして」大野耐一
2002/11/11公開 更新

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【私の評価】★★★★★(92点)
改善が改善を生む。
すぐやれ。
要約と感想レビュー
なぜ機械を一人で一台しか持てないのか?
トヨタ生産方式を大野耐一氏自らが説明してくれる一冊です。面白いのは、大野耐一氏が豊田紡績からトヨタ自工に転籍してきたということです。大野耐一氏は、豊田紡績では自働織機を若い女性が一人で40台も50台も持っていたのに、なぜトヨタ自工では機械を一人で一台しか持てないのか?と考えたという。
当時の常識は、アメリカのようにロットをできるだけ大きくして量産効果をねらう生産方式です。ところが、ロットを大きくするということは、在庫や仕係り品が増えるということです。在庫が増えれば倉庫が必要になるし、お金もかかるし、リードタイム(注文を受けてから納品するまでの時間)も長くなってしまうのです。
ロットを小さくする
そこで大野耐一氏は、ロットを小さくすることを考えたのです。必要な部品をジャストインタイムで納入するのです。ところが、ロットを小さくするということは,プレス工程では同じ金型で少ししか打てないことになります。プレスの段取り替えは,昭和20年代で2,3時間を要していたという。この時間を短くする努力をしようと言い始めたのが大野耐一氏なのです。
やっぱりというか、トヨタ自工内部でも大野耐一氏の上司のところへ,批判や告げ口が多かったらしいのです。「大野という奴はとんでもないことをやり始めた」「やめさせてほしい」という声があったのですが、上司は大野耐一氏を守り抜き,やめろとも言わなかったのです。ちなみに20年後のプレスの段取り替えは,わずか3分にまで短縮したという。
必要なだけ引き取る
また、大野耐一氏は必要な部品を必要なだけ引き取るという方式を考え、その必要な部品数がわかる紙を貼り、「かんばん方式」と言われました。この「かんばん方式」は必要な商品を必要なだけ補充するアメリカのスーパーマーケットからヒントを得たという。
多品種少量生産を可能とする小さなロットでジャストインタイムを実現する生産方式は、トヨタ生産方式となりました。トヨタ生産方式とは、徹底してムダを排除したものなのです。それまでのムダな在庫や大量の仕掛り品は、「つくり過ぎのムダ」であり、そのムダによって、その他のムダを隠してしまうという意味で,もっとも根源的なムダであるとしています。
トヨタ生産方式では継続的カイゼンにより、「かんばん」の数を減らして、あえて問題を引き起こすことまでやっています。どこに制約があるのかを明らかにし、そこを対処することによって効率は上がっていくのです。改善すると今までの慣習とぶつかり、色々問題がでてくることでしょう。それでも、どんどん改善する人が、煙たがれるのではなく、出世できるというのがトヨタの強さなのです。
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この本で私が共感した名言
・異常があれば機械をとめるということは問題を明らかにするということでもある(p15)
・現場の人間は,標準作業を自らの手で書いてみなければならない。他人にわからせるには,まず自らが十分に納得できるものでなければならないからである(p41)
・遅いというのはほとんどの場合,動作・手順がちがうことによって生じる(p43)
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【私の評価】★★★★★(92点)
目次
第一章 ニーズからの出発
第二章 トヨタ生産方式の展開
第三章 トヨタ生産方式の系譜
第四章 フォード・システムの真意
第五章 低成長時代を生き抜く
著者経歴
大野 耐一(おおの たいいち)・・・1912年生まれ - 1990年没。「かんばん方式」「ジャスト・イン・タイム・システム」などを考案し、生産管理のあり方として世界的に有名となった"トヨタ生産方式(Toyota Production System、略称TPS)"を体系化した人物である。トヨタ自動車副社長、相談役を経て、平成2年逝去。
大野耐一関連書籍
「トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして」大野耐一
「なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか」若松義人
「トヨタ現場の「オヤジ」たち」野地 秩嘉
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