大野耐一氏に学んだこと「なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか」


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【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
■トヨタ生産方式の父である
大野耐一氏のもとで学んだ
若松さんの一冊です。
トヨタ生産方式といえば、
改善活動、ジャストンタイム、
かんばん方式などが思い浮かびます。
しかし、この本を読んでわかるのは、
トヨタでさえ、現場に新しい方法を
導入するのは難しいということです。
大野さんでさえ、
信頼関係を構築してから、
現場に提案していたというのです。
・大野氏でさえ、おかしな点をすぐに指摘したりはしない。指摘するのは、まず現場を熟知し、信頼関係を築いたあとなのだ。権限を手にし、指示、命令して従わせるだけでは、いい仕事はできないのである(p23)
■部下を困らせて良い知恵を出させる
というのがトヨタ流です。
あまりに高いハードルに
「できません」「勘弁してください」
と拒否する部下もいるでしょう。
そうした部下に、カツを入れ、
それに部下が耐えるだけの
信頼関係を作っていなければ
トヨタ生産方式もここまでには
なっていなかったのでしょう。
・「現場を見ておったら、なにかやってやれ」は、大野氏の言葉だ。そうすると、「あの人は、いいことを考えてくれる」となり・・現場のほうから声がかかるようになる(p156)
■初めはどこの現場も
同じなのだと思いました。
新しい方法に反発する人がいるのは
当然のことでしょう。
どうすれば、
自分を信頼してもらえるのか。
どうすれば、現場が
受け入れやすい方法になるのか。
信頼関係構築の知恵こそが
トヨタ式のポイント
なのかもしれません。
若松さん
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・どうすれば現場の人たちの理解と納得が得られるかに知恵をめぐらす・・ある人は、新しいやり方を導入するときには、夜勤の交代時間にジーパンを履いて工場を訪ねる。リラックスした雰囲気で、工長さんたちとあれこれ話をする。自分の考えを伝え、工長さんたちの意見も十分に聞く。これを繰り返しながら、新しいやり方の導入方法を磨く。理解と納得が得られ、人間関係も築くことができる(p25)
・問題点を指摘して「改善しろ」「なんとかしろ」と指示する人はたくさんいる。だが、口で言っただけで簡単に問題が解決するわけはない。指示した人は「相手に直す気がないからだ」とグチをこぼす。筆者に言わせれば「言ってダメなら、自分で直せ」だ(p16)
・部下を率いていくとき、仕事の面では厳しくやっていいかにゃいかんが、基本的には、指示とか指導とかじゃなく、部下との知恵比べだと、私は思っておる。(大野耐一)大野氏は部下に指示や命令を出した以上、「一緒に苦しむ」「一緒に考える」ことが大切だと考えるのだ(p117)
・ある課長が『できない』と言ったとき、大野さんは烈火のごとく怒った。その理由は『お前には多くの部下がいる。人間は真剣になれば、どれくらい知恵が出るかわからん。なのにお前は部下たちの知恵をまったく無視して、できませんとはなにごとだ』というものだった(p135)
・トヨタ流の基本は「人の知恵を信じる」こと、「人の知恵を活かす」こと(p5)
・トヨタ流に「カタログエンジニアになるな」という言い方がある。・・機械に職場のさまざまな知恵をつけ、カタログ以上の使い方をし、カタログ以上のモノをつくって、初めて仕事をしたことになる(p121)
・なんでもまずやってみることだ。失敗は目で確かめればいい。やってみて改悪になったら、もう一度直すことで改善になることもよくある(p52)
・生産現場に「自律神経」を通わせるのが、「かんばん」だ・・上がいちいち指示を出さなくとも現場の自主判断機能が働くようにする。こうした微調整機能がしっかりしていれば、変化への対応も簡単にできる(p49)
・安定を停滞ととらえる(p98)
・非常時のみバックアップ拠点を動かすところもあるが・・それでは不安」なのだ。日頃から稼働させているからこそ、緊急時に顧客に迷惑をかけずにすむ(p104)
・トヨタ生産方式を実践している企業でも、よく「業者に頼むと価格もスペースも10倍になる」という。(p129)
・大野耐一氏がある企業の工場を見にいったときの話だ。倉庫にたくさんの在庫があり、生産ラインの脇にも多くの仕掛品が置いてあった。大野氏は、工場長にこう質問した。「あれはみんなが一生懸命働いておったらできちゃったのか、それともあんたが作らせたのか。どっちなんですか」(p142)
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【私の評価】★★★★☆(83点)
目次
第1章 平伏させず心服させる―人づくりは信頼改善である
第2章 人と環境を同時に育てる―人づくりはシステム改善である
第3章 小さなミスに大きく学ばせる―人づくりは問題改善である
第4章 ケタの違う発想を引き出す―人づくりは発想改善である
第5章 呼びつける前に現場に出向く―人づくりは現場改善である
第6章 自分の部下を会社の財産に育てる―人づくりは自分改善である
著者紹介
若松義人(わかまつ よしひと)・・・1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。1984年以降は農業機械メーカーや住宅メーカーなどでもトヨタ方式の導入と実践にあたった。1991年韓国大宇自動車顧問。1992年カルマン株式会社設立。現在同社代表取締役社長。西安交通大学客員教授