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「トヨタ現場の「オヤジ」たち」野地 秩嘉

2018/12/06公開 更新
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トヨタ 現場の「オヤジ」たち (新潮新書)


【私の評価】★★★★☆(89点)


要約と感想レビュー

トヨタには副社長が6人いて、そのうち1人が中卒から現場で叩き上げた河合満さんです。河合さんは現場でカイゼンを繰り返し、大幅な効率化を実現し、人を育て、現場を掌握しています。


若い時に鍛造で働いていると、鈴村さんがやってきて、「何しとる、在庫を全部なくせ」と部品の在庫を持っていってしまったという。部品の在庫を持っていたら、たとえ作業が止まっても、間に合わすことができるので問題が顕在化しないのです。問題が起きなければ真の対策ができないのです。


ちなみにトヨタでは鍛造の金型の交換をたった10分以内で行うことが有名ですが、河合さんがカイゼンしたのですね。


・僕が担当していたところは1時間半くらい段替えにかかっていた。それを2年くらいかけてカイゼンして、9分にしたんです。鍛造で初めての「シングル段替え」(10分以内の金型交換)だったから、表彰してもらいました(p134)


トヨタはカイゼンにより作業の効率化が進んでいますが、カイゼンができる人を育てるために大事なのは、「めんどう見」だという。正月に故郷に帰らずに残っている作業員は自宅に連れてきて飯を食わせる。そして、故郷の両親に手紙やはがきを書いて知らせるのだという。そうしたことやるのが、組長の責任だというのです。


また、上から、「やれ」と言われると、おもしろくないのが人間です。また、ちゃんとやれと言うのなら、まず自分でやって見せるということも大事だという。それで、部下が提案してきたらやらせてみる。QCサークルでリーダーをやってもらう。自分でカイゼンする楽しさに触れると、やる気になるというのです。


言われてやるのではなく、自分でやってみて、カイゼンの楽しさを知り、自ら「やってみよう」と考える人を増やすことが大事なのです。


・部下には「経験は宝。やってみなくてはわからんよ」といろいろ試してもらうようにしました。現場では人間関係、チームワークが大事なんです。人は自分で「やってやろう」と思って仕事をしないと、危ないし、生産性も上がりません(p40)


読んでいて面白かったのはアンドンの話でしょう。アンドンは異常を見える化する表示ですが、最初に大野耐一さんが導入したアンドンは「トイレに行きたい人」が使うものだったという。生産現場では作業者がラインを止めることは難しいのです。


トヨタの現場の一流の人は、経験と知識も一流ですが、魅力も一流なのだと思いました。「オヤジ」と言われながら、役員室を使わず現場を歩く副社長はすごいなと思いました。野地さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・手作業の部分も残してある。それはロボットの性能を上げるためだ。ロボットは人間がやったことを真似る。人間の技能が上達しない限り、ロボットの性能はよくならない(p41)


・全員が班長、組長になれるわけじゃない・・QCサークル、「創意くふう」の集団活動・・4,5人の単位で集団を作り、全員がリーダーを務める経験をさせました。人に教えると、やっぱり、教えた方も伸びるんです(p64)


・現場にいて、カイゼンしたり、くふうしたりすると、喜びがある。自分がカイゼンしたことで、反対番(次の直の作業者)が「お前、すごくよくなったぞ」と言ってくれる。やりがいがあるから、また、何かカイゼンしなきゃって思うんだよ(p141)


・手作業で1人で1台のエンジンを組んでみると、原理原則がわかる。頭の中にノウハウが全部、入る。次にラインをひくときに、この仕事は前でやったほうがいい、これは後でやったほうがいいとわかるようになる。なんでもかんでも機械におんぶしてしまうとそういうことがわからない(p160)


・長いラインをひいてしまうと、100個を10人でつくっていたのを、50個になったからといって5人では回せないんです。ラインが長いから、どうしても人数がかかってしまい、6人か7人は必要になる。それで生産性は落ち、競争力も落ちる。私たちは大反省して、そして、もう一度、ラインを組み直したのです(p181)


・トヨタでは作業者も経営者も一緒です。みんな、今までとは違う仕事をやろうと考える。カイゼンする。カイゼンしたり、創意「くふう」すればちゃんと、お金もらえるしね(p138)


・作業に使う道具は集中して研ぐ・・それ以前はそれぞれの職人が「自分の道具は自分で研ぐ」と言っていたのを、副社長までやられた大野耐一さんがやめさせて、専門チームが研ぐ方式に変えた(p17)


トヨタ 現場の「オヤジ」たち (新潮新書)
トヨタ 現場の「オヤジ」たち (新潮新書)
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野地 秩嘉
新潮社
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【私の評価】★★★★☆(89点)


目次

1 トヨタが地方企業だった頃
2 15歳の新入社員
3 鍛造工場という現場
4 トヨタに入った日
5 車が買えた日
6 「トヨタウェイ」と「トヨタ生産方式」
7 「カイゼン」とトヨタ式人材育成術
8 工長の白い帽子
9 鳴り止まなかった電話
10 モノ作りを考える
11 現場で働き続ける



著者経歴

野地秩嘉(のじ つねよし)・・・1957年生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務、美術プロデューサーなどを経て、ノンフィクション作家。食や美術、海外文化評論、および人物ルポルタージュなど幅広い分野で執筆活動を続ける。


大野耐一関連書籍

「トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして」大野耐一
「なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか」若松義人
「トヨタ現場の「オヤジ」たち」野地 秩嘉


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