「トヨタ式人づくりモノづくり」若松義人、近藤哲夫
2013/12/14公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
トヨタ式とは、仕事におけるプロの考え方をまとめたものだと思います。
例えば、売れないときは、無駄な在庫、ムダな設備は罪悪と考える人もいるでしょう。しかし、売れる時代になれば、ムダと思われた設備が活躍することもあるのです。そうした状況によって考え方を変えることができる知恵が、トヨタにはあるのです。
生産量はボトルネックで決まっており、他の生産設備に余裕があるから急な増産にもボトルネックに対応するだけで増産できるわけです。設備投資は短期間に簡単にできるものではありません。生産量を予測できないとすれば、ちょっと多めの設備にしておくというのは増産リスク対策といえるのでしょう。
・ケンタッキー工場へ、私がマネジャーとして行くとき、大野耐一さんは・・・・「設備は多めに持て」というアドバイスでした。ふだんの大野耐一さんは「これはなんだ」と言って、在庫や設備のムダに厳しい人でしたが、・・・「設備があれば、人はなんとかなるが、設備に余力がないと、大きなチャンスを逃す。三カ月から半年は対応が遅れてしまうから、設備は少し多めにもっておいたほうがよい」(p1)
また、トヨタ式の考え方は、コストダウンの種は現場に落ちている。もちろん自分も工夫をする。それだけでなく、現場の作業員の可能性を信じて、知恵を一緒に出してもらう。
著者も生産技術部長になったときも、「すべてをお膳立てするのではなく、現場の知恵を活かして一緒にやるように」と大野さんからアドバイスされていたという。衆知を集めた小さな工夫の積み重ねが、人材を育てることになるから、強い会社になるのでしょう。
・「人間性尊重」は、人間の持っている「考える能力」を最大限尊重するのを言います・・・標準作業は働いている人が自分自身で直すのを基本としています(p3)
トヨタ生産方式を導入した会社では、うまくいっていない会社が多いようです。それはトヨタ生産方式とは方法ではなく、仕事の考え方、文化だからでしょう。社員全員が、「それは無理」、「今、忙しくてそんな時間はない」という会社では、うまくいくはずがないのです。
仕入れから製造工程と人件費までの全体最適を考え、実際に現場を変えてコストダウンできなければ、意味がないのです。いままでどおりの仕事をして、問題なく終わらせるだけでは、会社は変わらないのです。
・「易者にでもなったつもりか」・・・思わず「それはできるわけがありませんよ」という言葉が口をついて出たとき、すかさずこんな言葉が返ってきた・・・目標は「なんでも半分」や「数値のゼロを一つとれ」(p7)
トヨタ式の奥深さを、大野耐一さんのエピソードをふまえ、わかりやすく教えてくれる一冊だと思いました。恐るべしトヨタ式!
若松さん、近藤さん、 良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・ある現象が起きたときは、何かがひらめくまで決して現場を動かない。謙虚に、白紙で素直に、無になって現場を見る。頭のなかでたえず『なぜ』を繰り返す(p146)
・「改善が数字に表れる」ということは、きわめて重要だ。・・・原価の違いを知れば、「トヨタは何が問題なのか。なぜGMに負けているのか」が、それこそ部品一点一点についてまで明確にできる(p4)
・商品の本当の価値がわからない購買担当者が、一律に値引きを要求するケースが増えている・・・より多くの企業から見積もりをとればいいと考えている担当者もいる。・・・ポイントは、必要としている商品が、世界標準で見て、いったいいくらで取引されているのか、本当はいくらでつくれる商品なのかを正確につかんでいるかどうかである(p29)
・大切なのは5000個をつくるのに、通常八人で三時間かかる場合、2000個を同じ人数で一時間でつくるという方式はとらないことだ。これではコスト低減にはならないからである。同じく三時間かかったとしても、二人でつくってはじめてコスト低減になる(p62)
・トヨタ生産方式の導入に成功した中小企業を見ると、いくつかの共通項がある。一つはお客さんに近いところ、つまり「後工程」から始めて、少しずつ改革を進めていったこと。次に自社の現在の社員の能力を100%引き出そうとしていること、そして最後に絶えざる改善を続けているという三点だ(p74)
・スタッフがよく使う言葉に、・・利益は「B%が水準です」という表現がある。こうした数字は所詮は同業他社の平均値か、教科書に載っている数字にすぎない。自社のあるべき姿を考えずに、こうした数字ばかりを追っていると、不思議なもので、いつまでもこの水準以上にいくケースはない・・思い切って「0.1%」とは「不良率ゼロ」を目標に掲げれば、まったく違った発想になってくる(p192)
ダイヤモンド社
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【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
序 章 大野耐一氏から学ぶ
第1章 生活現場の悩み 12の質問
第2章 トヨタ生産方式の本質 モノづくりは人づくり
第3章 トヨタ生産方式の導入はなぜ難しいのか
第4章 「改善」への挑戦 中堅メーカーの改善推進プロジェクトから
第5章 在庫圧縮??専門工場から多能工場へ
第6章 施工期間短縮 ハウスメーカーのチーム化・多能工化・能力別賃金
第7章 物流クレーム解消 食品メーカーの「ライン長も経営者」
第8章 納期短縮 中堅メーカーの優しい現場構築
第9章 強力現場の誕生
著者経歴
若松義人(わかまつ よしひと)・・・1937年宮城県生まれ。トヨタ自動車工業に入社後、生産、原価、購買の各部門で、大野耐一氏のもと「トヨタ生産方式」の実践、改善、普及に努める。1984年以降は農業機械メーカーや住宅メーカーなどでもトヨタ方式の導入と実践にあたった。1991年韓国大宇自動車顧問。1992年カルマン株式会社設立。現在同社代表取締役社長。西安交通大学客員教授
近藤哲夫(こんどう てつお)・・・1932年生まれ。宮崎県出身。アメリカジョージア工科大学大学院修了。(有)ケーズエンジニアリング代表取締役。カルマン(株)特別顧問。関東自動車工業(株)生産技術部長、(株)紀文食品専務取締役を歴任。1971年より大野耐一氏、鈴村喜久雄氏の指導を受ける
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