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「文明の衝突と21世紀の日本」サミュエル・P. ハンチントン

2018/03/09公開 更新
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文明の衝突と21世紀の日本 (集英社新書)


【私の評価】★★★☆☆(77点)


要約と感想レビュー

中国とイスラムがアメリカに挑戦する

中国とイスラムがアメリカに挑戦するだろう、と書いてある一冊です。当たり前じゃないかと感じますが、驚くべきことは、この本が1998年、20年間に書かれたということでしょう。当時は湾岸戦争が終わり、第二次湾岸戦争に進んでいく前の時期になります。中国は脅威とはなっておらず、多くの企業が改革開放の中国に進出していた時期です。


特に中国は、150年間にわたって屈辱を味わってきたが、経済成長をとげたことで、覇権国としての歴史的な役割を再びになおうとしていると断言し、中国の発展は、アメリカにとって厳しい挑戦となる可能性があるとしています。経済問題、人権、チベット、台湾、南シナ海、兵器拡散などの問題を指摘しているところが、恐ろしいほどの先見の明なのです。


イスラム勢力については、中核国家が存在しないこと、出生率の高さによってイスラム教徒が暴力的になりがちとなると予想しています。歴史的に見て、15歳から24歳の若者が人口の20%以上を占めると社会は不安定になり、暴力や紛争がエスカレートする傾向があるというのです。


・中華文明やイスラム社会は自分たちの経済力と軍事力を強化し、西欧に抵抗して、西欧との「バランス」をはかろうとする(p102)


価値観を押し付ける西欧

著者は自分の価値観を押し付ける西欧と、力をつけてきた中国とイスラム世界が西欧とぶつかることとなると予想しています。それは、没落する覇権国家が勢力を伸ばそうとする新興国家と覇権戦争を行ってきたという歴史があるからです。


日本を含めた周辺の諸国は、そのバランスの中でどちらと同盟を結ぶのか考えることになるのです。そこで重要な位置にいるのが、揺れる国家としての日本、ロシア、インドであると断言しています。特に中国の勢力が強くなるにつれて、他の文明圏のアメリカ、インド、ロシアなどがバランシングの勢力を強めると予想しています。


・中核国家間の戦争は、文明間で世界的な勢力バランスが崩れたときに起こる可能性がある・・西欧文明の歴史は、新興勢力と没落する勢力のあいだの「覇権戦争」の歴史であった(p141)


湾岸戦争は、地下資源をめぐる戦い

湾岸戦争は、地下資源をめぐる戦いだったと断言しているところもすごいです。世界最大のイラクの原油の支配権を争ったのです。イスラム社会ではサウジアラビアなど西欧に近い政権と反西欧政権の争いだったのです。


また、日本については、一貫としてバントワゴニングの戦略をとってきたとしています。バントワゴニング戦略とは、勢力のある大国と同盟を結ぶことです。第一次世界大戦の前には大英帝国と、1920年代と1930年代にはドイツ、イタリアと、そして第二次世界大戦後にはアメリカと同盟を結んでいます。今後、日本は、アメリカと中国を比較検討しようとするだろうと予想し、現在の日本に中国派とアメリカ派ができることを予測しています。


現実を冷徹に観察している人だと感じました。ハンチントンさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・現在、国家をグループ分けする場合・・七つ(中国、日本、インド、イスラム、西欧、東方正教会、ラテンアメリカ)あるいは八つ(上記にアフリカ文明を加える)を数える世界の主要文明である(p96)


・アフガン戦争は文明間の戦争になった。世界中のイスラム教徒がそう考え、団結してソ連に立ち向かった(p164)


・一つの文明における中核国は、その文明圏の国々の秩序を、文明圏外の国がするよりもうまく維持できる(p89)


▼引用は下記の書籍からです。
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【私の評価】★★★☆☆(77点)


目次

二十一世紀における日本の選択―世界政治の再編成
孤独な超大国―パワーの新たな展開
文明の衝突―多極・多文明的な世界
文明の衝突―多極・多文化的な世界



著者経歴

サミュエル・P・ハンチントン(Samuel Phillips Huntington、1927年 - 2008年)・・・1927年アメリカ・ニューヨーク生まれ。アメリカを代表する国際政治学者。ハーヴァード大学教授や国家安全保障会議の安全保障政策担当のコーディネーターなどを務めた。2008年に逝去


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