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「仙台育英日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり」須江航

2023/08/11公開 更新
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「仙台育英日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり」須江航


【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー

人生は敗者復活戦

本のソムリエの家から直線距離200メートルに仙台育英学園の野球部のグラウンドがあります。昨年夏、仙台育英は東北初の甲子園優勝を果たしました。仙台育英の須江監督の本は読まなければ!と仙台駅の本屋さんで購入しました。


須江監督は、仙台育英で野球をするために入学しましたが、チームメートの実力に驚愕し、2年生からチームを裏で支えるGM(グラウンド・マネージャー)に就任しています。その後、八戸大(現・八戸学院大)の野球部のマネージャー、学生コーチを務め、仙台育英の教員として秀光中学校の軟式野球部の監督に就任したのです。一貫として、野球の指導者としての道を歩んできたことがわかります。


仙台育英学園秀光中学校の軟式野球部では、「全国大会に行こう」「日本一になろう」と目標を設定し、8年後の2014年に全国中学校軟式野球大会で優勝しています。その実力を買われて、2018年仙台育英学園高等学校の硬式野球部監督に抜擢されたのです。須江監督の座右の銘が「人生は敗者復活戦」というように、須江監督は選手としては大成しませんでしたが、監督として正に日本一となったのです。


・仙台育英秀光中時代・・新チームになってから、ボール100球、選手全員分のバットを、自腹で購入しました(p177)


日本一へ招かれる

仙台育英学園野球部の理念は、「地域の皆さまと感動を分かち合う」、そしてチームスローガンは、「心技体すべての条件を満たせたとき、100年以上閉ざされていた扉を開けて、東北地方初の日本一へ招かれる」とあります。「心技体すべての条件を満たせたとき日本一へ招かれる」とあるように、技術や能力だけでは日本一になれない。考え方や行動も一流でなくてはならないということです。ですから、2011年の東日本大震災の後には、生徒たちに「誰かのために頑張ろう」と伝え続けてきたという。


試合に負けたときは、「敗戦で終わらせてはいけない」と考え、敗戦から何を学んだのかその後の行動を変えていく。そして、甲子園で日本一を成し遂げたあとには、今日が人生のピークになるほど、つまらないことはない。早く、次の目標を見つけましょう。」と選手に伝えています。日本一は単なる手段であり、本当の目標は、成果を出すまでの道筋を学ぶことだというのです。


・君たちは100年開かなかった扉を開けることができたのだから、どんなことでも、やれないことはないはずです(p20)


文書で「現在地」と「方向性」を伝える

須江監督は日本一を目標にして、他の強豪校の良いところを取り入れていることがわかります。大阪桐蔭を真似して、練習試合を増やしています。その実戦でのデータと「基礎体力測定」データによって、選手の実力と成長を見える化し、レギュラー選手を選んでいるのです。


そして、大会の前後にレポートを作成して、選手と1対1の面談を行い、「現在地」と「方向性」を伝えるようにしているという。レポートと言葉で選手の現在地を伝え、選手がどんな練習に力を入れるべきか方向性を明確にしてあげるのです。だから練習も全員に共通する基礎的なメニューを行った後は、選手自分がやりたい練習をしているという。選手自身に練習の選択肢があるのです。


練習では須江監督は選手に対して、「今は何をやっているの?」「そのメニューの目的は何?」「何を手に入れたいの?」「今の自分の課題は?」とコーチングのように、問いかけるという。これはプロよりも選手の自主性を大切にしているように感じました。


・打者は年間300打席以上を全員に与える・・「打率+出塁率」を最優先に評価(p112)


日本一は手段で、目標は成果を出す道筋を学ぶこと

日本一は手段であり、本当の目標は、成果を出すまでの道筋を学ぶことだと宣言する偉大な先生が自自分の近くにいることにうれしく感じました。指導者の圧によって選手を追い込むのではなく、データを開示し、選手自らが練習メニューを考えて自らの意思で練習していく。自分を律して、目標を達成するプロセスを生徒に学ばせているのです。


自己を律して自己を確立し、問題と向き合う能力を身に付けることが、高校野球に取り組む目的だしていますが、そもそも自己を確立した社会人がどれほどいるというのでしょうか。「願いや想いは口にしなければ叶わない」と言われるように、日本一になるとは日本一になる理由があるのだと思いました。須江さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・メンバー外を含めれば、計14人の選手が最速140キロ以上の力を持っています(p14)


・細かいことを言いすぎないように気を付けています。なぜなら、選手が意識しすぎてしまい、もともと持っている長所までもが消えてしまう可能性があるからです(p80)


・日本一激しいチーム内競争の先に日本一がある(p88)


・「良き文化」を作る「時を守り」「場を清め」「礼を正す」の3つの規律(p137)


・本物のエリートとは、組織(チーム)全体の利益を考えて行動できる人。自分だけよければいいのではなく、組織全体のことをどれだけ考えられるか(猿橋)(p165)


▼引用は、この本からです
「仙台育英日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり」須江航
須江航、カンゼン


【私の評価】★★★★★(93点)


目次

序章 『日本一からの招待』を果たすために
第1章 人生は敗者復活戦―思考論
第2章 選手の声に耳を傾け、個性を伸ばす―育成論
第3章 日本一激しいチーム内競争―評価論
第4章 チーム作りは文化作り―組織論
第5章 教育者はクリエイターである―指導論
第6章 野球の競技性を理解する―技術論・戦略論
終章 幸福度の高い運営で目指す"2回目の初優勝"



著者経歴

須江 航(すえ わたる)・・・仙台育英学園高等学校 教諭。硬式野球部監督。1983年4月9日生まれ、埼玉県鳩山町出身。仙台育英では2年秋からグラウンドマネージャーを務めた。3年時には春夏連続で記録員として甲子園に出場しセンバツは準優勝。八戸大では1、2年時はマネージャー、3、4年時は学生コーチを経験。卒業後、2006年に仙台育英秀光中等教育学校の野球部監督に就任。公式戦未勝利のチームから5年後の2010年に東北大会優勝を果たし全国大会に初出場した。2014年には全国中学校体育大会で優勝、日本一に。中学野球の指導者として実績を残し、2018年より現職。19年夏、21年春にベスト8。就任から5年後の22年夏。108年の高校野球の歴史で東北勢初の優勝を飾った。


野球関連書籍

「仙台育英日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり」須江航
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「勝てる野球の統計学―セイバーメトリクス」鳥越 規央


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