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「伝わる言葉。 失敗から学んだ言葉たち」須江 航

2023/10/12公開 更新
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「伝わる言葉。 失敗から学んだ言葉たち」須江 航


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

信頼関係がなくては伝わらない

仙台育英が国体(高校野球)で優勝というニュースを見て、この本が手元にあったのでご紹介します。


2022年夏の甲子園に優勝した仙台育英の須江監督は、「青春って、すごく蜜なので」という名言で有名になりました。須江監督はどのようにして、選手に思いを伝えているのでしょうか。まず、須江監督が強調するのは、信頼関係がなくては伝わらないということです。だから信頼関係を作るためには、相手の話を聴いてあげる傾聴が基本で、そのうえで求められていることを求められているタイミングで話す丁寧さが大切であるとしています。


こうした伝え方や信頼関係に気を使っているのは、使命感を持って一生懸命だった学生コーチ時代の失敗にあるようです。学生コーチ時代にはチームを機能させるために、少しでもだらけているような雰囲気があったら烈火のごとく怒っていたというのです。その結果、部員から嫌わられ、結果も出なかったという。


・「青春って、すごく蜜なので」・・「全国の子どもたち、よく頑張ったでしょう。どうか拍手してあげてください」という思いが込められています(p21)


大事なのは負けたときになにを学ぶか

興味深いのは、須江監督はよく考え、工夫する人だということです。「人生は敗者復活戦です」と須江監督が言うように、人生は勝つか負けるかの繰り返しです。大事なのは、負けたときになにを学ぶかということで、そこから須江監督は成長してきたのです。俺が俺がで失敗した学生コーチ時代を反省して、今はコーチングのように部員に「どう思っているの?」「困っていることはない?」「なにかしてほしいことはある?」と問いかけているという。


須江監督の考える指導者の役割というのは、練習をやらせる、打ち方を教えることではなく、部員のモチベーションを上げることと、部員の考えを整理してあげることだという。教えすぎて選手の自主性を殺してしまった経験を反省して、新入部員には、「本当にここで野球をやりたいの?」と問いかけるという。野球に青春の時間を費やしてもプロ野球や社会人リーグで活躍できるのはごく一部の人だけ。高校三年で頑張れば海外留学もできるし、遊ぶこともできるし、勉強して進学してもいい。多くの選択肢がある中で、本当にそれを理解して野球を選択していいのか、と問いかけるのです。


その上で、野球部の監督として、部活動というのは、社会に出るための疑似体験だと定義し、野球部の活動によって野球だけでなく、生きかたも学んでもらうよう配慮しているというのです。ここまで部活動について考えている人がいるのか!とびっくりしました。


・「高校三年でなにができるだろうか」という話をする・・・・「選択肢はたくさんあるんだよ」・・ということをちゃんとわかってほしい(p105)


一日でも早く新しい目標を見つけよう

日本一になるために、やれることはやり尽くしたのに日本一になれなかったとき、招かれるほどのレベルに達しないと日本一にはなれないと考え、「日本一からの招待」という言葉が生まれたという。「走姿顕心」(走る姿にそのひとの心が顕れる)というスローガンは、部員に「キミたちの一挙手一投足がメッセージになる」という思いをそこに込めています。


そして甲子園で優勝した後には、最初に控えの選手たちがほんとうによくやってくれたことに感謝したうえで、今日という日が、人生最高の日であってはならない。「一日でも早く新しい目標を見つけよう」ということを伝えたというのです。すべてに意味があり、すべての行動にその人の心が顕れ、結果を引き寄せるのだと思いました。国体優勝も必然的に引き寄せたのでしょう。須江さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・自分の長所と向き合うと同時に短所には丁寧に対処する。その感覚を持ったうえで、チャレンジしたほうがいいし、・・失敗したとしても前向きな失敗というのはあるものです(p70)


・客観的な数値で選手を評価するこのやりかたを採用したのは、ひと言で言うと、全員にチャンスがある状況を作りたいと思ったからです(p86)


・成功したときに心地よさを感じる目標設定をする・・休むこともとても大切ですから。(p76)


▼引用は、この本からです
「伝わる言葉。 失敗から学んだ言葉たち」須江 航
須江 航、集英社


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

1 勝利―神さまにお祈りする前にやるべきことを。
2 失敗―人間は挑戦がすべて。そして、失敗からしか学べない。
3 伝える―話が伝わらないときは聞く側に方向転換します。
4 組織―目的を達成するために、各々がフラットで、各々の判断で行動する。
5 習慣―ストレスは感じない。ノーストレスな毎日を送る。
6 本質―それ自体に本当に意味があるのか、そのことは絶えず自問自答しなくてはいけない。



著者経歴

須江 航(すえ わたる)・・・仙台育英学園高等学校 教諭。硬式野球部監督。1983年4月9日生まれ、埼玉県鳩山町出身。仙台育英では2年秋からグラウンドマネージャーを務めた。3年時には春夏連続で記録員として甲子園に出場しセンバツは準優勝。八戸大では1、2年時はマネージャー、3、4年時は学生コーチを経験。卒業後、2006年に仙台育英秀光中等教育学校の野球部監督に就任。公式戦未勝利のチームから5年後の2010年に東北大会優勝を果たし全国大会に初出場した。2014年には全国中学校体育大会で優勝、日本一に。中学野球の指導者として実績を残し、2018年より現職。19年夏、21年春にベスト8。就任から5年後の22年夏。108年の高校野球の歴史で東北勢初の優勝を飾った。


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