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「二度消えた甲子園 仙台育英野球部は未曽有の苦境をどう乗り越えたのか」須江 航

2023/09/08公開 更新
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「二度消えた甲子園 仙台育英野球部は未曽有の苦境をどう乗り越えたのか」須江 航


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー

2020年の春と夏の甲子園は中止

昨年夏の甲子園で優勝した仙台育英学園の須江監督について、もう一冊読んでみました。


2020年の春と夏の甲子園は、新型コロナの感染拡大で中止となりました。甲子園で優勝を目指してきた須江監督と、仙台育英学園の3年生にとっては、痛恨の状況だったと思います。実は仙台育英学園は2017年の部員の飲酒喫煙問題で2018年6月まで対外試合禁止となり、須江監督が招聘されたのです。その時と同じくらい厳しい時期であったことがわかります。


当時、対外試合禁止の中で、監督、部員が考えたのは、「何のために高校野球をやっているのか」「何のために日々貴重な時間を野球に注ぐのか」ということです。話し合いの中で生まれたのが「地域の皆さまと感動を分かち合う」という仙台育英学園の理念だという。


同じように新型コロナの影響で休校期間中も、須江監督は「すべては理念に舞い戻る」と考えていました。つまり、やり切ったと言える取り組みを行い、それを披露し、次の世代に継承していくということです。2020年は甲子園大会がすべて中止となったので3年生一人ひとりのプロモーションビデオを作り、大学の関係者に見てもらい、ほぼ全員の進路が決まったという。


・仙台育英の野球部で学び育むもの・・人生を本質からデザインする・・社会に出る疑似体験・・非認知能力を高める・・生き方をじっくり考える(p45)


客観的にレギュラー選手を選ぶ

須江監督で印象的なのは、情報発信と基準の明確化です。部員の保護者向けには月1回「硬式野球部通信」を発行しています。そして一般向けには、本書のような書籍も発行しているのです。また、部員にはレギュラーになるための評価基準を公表しています。ピッチャーも紅白戦の中でいつ、何イニングまで投げるか指定し、その結果で順位付けされるのです。


こうした透明化された競争によって、「もうメンバーに入れない」と」悟ってしまう部員が出てくることもあるし、練習試合ばかり行っているので、「技術向上にじっくりと取り組む時間が少ない」というデメリットもあるという。それでも、主観を排して、より客観的に部員を評価することを重視しているのです。逆に言えば、ほどんどの野球部は監督の主観で選手が選ばれているということなのでしょう。


・大阪桐蔭・西谷監督からの学び・・全部員が十分な練習時間の確保とシーズン終了までに実戦経験・出場機会の確保を約束する(p93)


引き寄せの法則

仙台育英学園野球部は、「地域の皆さまと感動を分かち合う」という理念を掲げ、「日本一からの招待」をスローガンにして、実際に日本一となりました。須江監督がこの本で書いてるように上辺だけの結果に一喜一憂するのではなく、なぜそういう結果になったのか、どこに原因があったのか、とことん追及し、考えを深めていった結果の日本一だということです。


これこそ本当の引き寄せの法則というものだと思いました。結果というのは、引き寄せられるものであり、では日本一になれなかったら失敗なのかといえば、そうではなく、またそこから考えるということなのです。こんなすごい監督が近くにいたんだ、と驚きました。これは野球ではなく人生の本です。須江 さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・仙台育英は部員の4割ほどが県外の出身者・・宮城に住むということは、ここが"第二のふるさと"になるわけです(p25)


・仙台育英では、「駆け抜けたほうが速い」という共通理解のもと、(一塁への)ヘッドスライディングを禁止しています(p226)


・3年生を5グループに分けて、それぞれにキャプテン、副キャプテンを配置・・一人ひとりに係を与える。少ないグループで行動したほうが、発言や行動に責任が生まれる(p44)


・「道に迷くことは、道を知ることである」(タンザニアの格言)(p9)


・「どんなに良い人間でも、きちんとがんばっていれば、だれかの物語では悪役になる」(「漫画『猫のお寺の知恩さん』より」)(p9)


▼引用は、この本からです
「二度消えた甲子園 仙台育英野球部は未曽有の苦境をどう乗り越えたのか」須江 航
須江 航、ベースボール・マガジン社


【私の評価】★★★★☆(83点)


目次

第1章 幻のセンバツ
第2章 理念作りから始まった2018年
第3章 『日本一からの招待』を追い求めて
第4章 今どき世代の強みを生かした育成法
第5章 高校野球の完結に向けて



著者経歴

須江 航(すえ わたる)・・・1983(昭58)年4月9日、さいたま市生まれ。小2で野球を始め、鳩山中を経て仙台育英に進学。2年秋から学生コーチを任され3年春夏の甲子園に出場。センバツでは準優勝。八戸大(現八戸学院大)でも学生コーチ。06年から秀光中教校の情報科教諭となり、14年は全国中学校軟式野球大会で初優勝。以後全国大会上位進出常連校として定着。2018年1月より仙台育英高校の監督に就任。18、19年夏の甲子園に出場し19年はベスト8。19年秋の東北大会を制しセンバツ出場権を得たが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でセンバツの中止が決定。夏の甲子園中止も決定した。


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